関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

須貝尚介調教師

年頭はゴールドシップの年度代表馬を目標に掲げていた厩舎サイドだが、蓋を開ければ苦楽の繰り返し。近2走は連敗を喫し、とりわけ前走ジャパンカップは15着に惨敗。連覇が懸かる有馬記念を前に、窮地に立たされたといっても過言ではない。この大一番は鞍上にライアン・ムーア騎手を迎え、馬装にも工夫を施して臨む様子。出走前のお約束事、須貝尚介調教師が最終追い切り後に貴重なコメントを残してくれた。

レースもブリンカー装着

-:ゴールドシップ(牡4、栗東・須貝尚厩舎)を管理されている須貝尚介調教師に伺います。今朝(12/18)は雨の中、3頭併せでゴールドシップの追い切りが行われました。初めての深いブリンカーという変更点がありましたが、その動きというのはどうでしたか?

須貝尚介調教師:ブリンカーを着けてダメな馬もいるし、ブリンカーの効果が出る馬もいるから、それはやってみないと分からない部分が多かったんだけど、今回ムーアと相談しながら、着けてみようということになりました。レースを想定したシミュレーション的な攻め馬をしたわけなんだけど、その効果が良いように表れたのか、集中力も増して、1頭になった時にその集中力が途切れること無く、ゴールドシップのいい時の走りを披露できたかなと思っているので、継続して競馬でもこれで行こうという決定になりました。

-:ブリンカーに関しては、先週は浅いものを使っていましたね。

尚:浅いのを着けたんだけど、ちょっと気が悪いところが出たのか、ムーアも相当不安な部分が見えたようで「この馬は相当ずる賢い」と。そういう意味で、相談して深いブリンカーを着けようという話になりました。

-:先週今週と、二段構えでブリンカーの効果を確認されたということで。先々週、先週もラトルスネークと併せ馬で、その時は動き自体はそんなに良くは見えなかったんですけど、今週CWコースで走ったら全然違う動きでした。

尚:みんなも確認できたように、本来のゴールドシップの走りを披露できたので、これが競馬に活きてくれれば、去年の覇者として、また宝塚記念の王者としての走りを皆さんにお見せすることができるんじゃないかなと思っています。


「ジャパンカップは能力云々とかじゃなくて、ずっと外を回された分だし、嫌気が差したんだろう」


-:しかも最後の直線、ゴール前では抑える余裕もありましたね。まだまだ余力があるのかなっていう感じでした。

尚:それでも、時計的には6F81秒台のラストは12.2秒というように、今日の雨の馬場を考えると、十分、調教としては想定していた以上かもしれないくらいの動きを見せてくれました。

-:ジャパンカップの15着惨敗は、我々にとってもかなりショッキングな結果でした。

尚:あれは能力云々とかじゃなくて、ずっと外を回された分だし、嫌気が差したんだろうと。

-:馬の能力ではなく、他の部分での敗因ということですね。

尚:そう見てくれていいと思います。


(上)1週前追い切りの模様
(下)今週撮影のゴールドシップ
ブリンカーの違いが窺える


馬場状態も連覇の追い風に

-:先週も中山ではG1が行われましたが、馬場が若干荒れてきているので、ゴールドシップを応援するファンや須貝先生には追い風が吹いているのかな、と見ています。

尚:週末は晴れるみたいだけども、今、(栗東で)降っているこの雨が関東に流れれば、若干緩んだ馬場になってくれるんじゃないかと。他の馬が脚を取られる分だけ、ゴールドシップはそういう馬場が上手だから。

-:苦にせず、中山の坂を駆け上がってきてくれそうですか?

尚:そうであったら嬉しい限りですね。

-:G1を4勝している馬ですから、パンパン馬場でもゴールドシップが引けをとるとは思ってないんです。

尚:強い馬というのはどういう条件であれ、勝っていかなきゃいけない。材料、味方とかいうよりも、やはり本来の強さを表してくれる。宝塚記念はそんな悪くなかったでしょ。

-:宝塚記念も発表は良だったんですけど、現実には結構良くなかったんですよね。

尚:どういう条件でも勝っていかなきゃいけないということです。



-:明るい未来を持ってゴールドシップを応援していきたいですね。馬体重が気になっているファンもいると思うのですが、写真を先週見せていただいて、JCの時より若干ちょっと大きいのかな、という気はしました。

尚:今日の動きを見る限りは、トモに良い筋肉が付いてきている。その分と考えてくれたら構いません。決して太くはないです。

-:中山に輸送もありますから、ここにいる時で丁度だと、やっぱり輸送するので減る分も考慮して?

尚:それも考えているというよりも、良い筋肉がついたのは確かですよ。

-:ファンには心強い要素ですね。

尚:実際もっと太い状態で、新馬戦とか勝っているわけだから。

表には出せない作戦が“アル”

-:連覇のかかる有馬記念です。宝塚とグランプリ連覇もかかっていますし、先生もプレッシャーで大変だと思うのですが、いかがですか?

尚:ゴールドシップはファン投票で上位に選ばれているわけだから、そのファンの皆さんに応える競馬をしてほしいと思っています。

-:オルフェーヴルという先輩も出走します。

尚:オルフェと最初で最後になるかもしれないけども、オルフェは世界レベルで戦ってきている馬なので、敬意を払って、胸を借りるつもりで頑張って欲しい。


「その辺(位置取り)のことは作戦もあるので、ここで喋れることではない。簡単に言えるような話ではないです。僕からアドバイスした点はかなりありますよ。かなりあるけど、その内容的なものは、やはりね……。作戦をわざわざこういう場で、あからさまにすることはないですよ」


-:ゴールドシップもここを終われば、来年からは世界の舞台に、もしかしたら出て行くかもしれないと?

尚:それは終わってみなきゃ分からないけども、そういう可能性も出てくるだろうと。

-:先々のことも考えながらの重要な有馬記念になるわけですね。最後に、やはり気になっているのが、この馬の位置取りについてです。

尚:いや、それはムーアなので。その辺のことは作戦もあるので、ここで喋れることではない。簡単に言えるような話ではないです。

-:先生から、ムーア騎手にアドバイスされた点はありますか?

尚:かなりありますよ。かなりあるけど、その内容的なものは、やはりね……。作戦をわざわざこういう場で、あからさまにすることはないですよ。



-:分かりました。ムーア騎手が抱いたゴールドシップの感触を、ファンに向けて少しだけ教えて頂いても良いですか?

尚:今回、ニコニコして追い切りから上がってきた。それだけ背中を感じてくれて、いいイメージでレースを迎えられると思っています。

-:それが今朝の機嫌の良さというか、先週よりも先生の声のトーンが上がったな、と感じていたんです。

尚:本来のゴールドシップのいいイメージの動きを確認できた。それはやはり、ここに向けての喜ぶべき状態だろうと。

-:最後に、前回負けて悔しい思いをしているであろう、ゴールドシップを応援するファンに、有馬記念に向けてのメッセージをお願いします。

尚:去年の覇者であり、宝塚記念を獲っているぐらいで、ファンも多いわけだから、そのファンの皆さんの期待を裏切ることがないような競馬をしてほしい。すごく応援して下さっている皆さんには感謝しています。ジョッキーもムーアに乗り替わったことで、違ったゴールドシップを引き出してくれるかもしれない、という期待を込めて応援してもらえたら、ありがたいと思います。

-:期待だけじゃなくて、今朝の動きを見たら手応えはあると?

尚:“やれる!”というイメージ、手応えはありますよ。去年も言ったように、ゴールドシップが素敵なサンタさんになれるように。勝負服といい、毛色といい、サンタクロースのカラーですから。彼が皆さんの素敵なサンタクロースになることができれば幸いだと思っています。

-:レースまで残り4日間くらいありますが、最後までゴールドシップの調整、頑張ってください。

尚:ありがとうございます。

ジャパンカップ前・ゴールドシップについて
須貝尚介調教師インタビューはコチラ→





有馬記念 前年度勝ち馬の成績(過去10年)
馬名 人気・着
11年 ヴィクトワールピサ 4人気8着
10年 ドリームジャーニー 4人気13着
08年 マツリダゴッホ 2人気12着
05年 ゼンノロブロイ 2人気8着
03年 シンボリクリスエス 1人気1着
2年続けて出走している前年度の勝ち馬が少ないこともあるが、過去10年での連覇はシンボリクリスエスのみ。人気を集めながらも、着外に沈むケースが見られるだけに、厳しい傾向が続いている(通算でも僅か4頭だけ)。ただし、「2年連続連対or2年連続3着以内に入った馬」は、ゼンノロブロイ、ディープインパクト、ダイワメジャー、ダイワスカーレット、エアシェイディ、ブエナビスタ、トゥザグローリーと多数。果たしてゴールドシップは!?


【須貝 尚介】 Naosuke Sugai

1966年滋賀県出身。
08年に調教師免許を取得。
09年に厩舎開業。
初出走
09年3月8日 1回阪神4日目7R ワーキングウーマン
初勝利
09年3月14日 1回阪神5日目7R ホッコーワンマン


■最近の主な重賞勝利
・13年 阪神JF/13年 札幌2歳S
(共にレッドリヴェール号)
・13年 宝塚記念/13年 阪神大賞典
(共にゴールドシップ号)
・13年 天皇賞(秋)(ジャスタウェイ号)


父は定年により引退を迎えた須貝彦三・元調教師。自身は騎手として4163戦302勝。うち重賞は01年のファンタジーS(キタサンヒボタン)など4勝。 09年から厩舎を開業し、初年度は年間10勝だったが、年々勝ち星を伸ばし、昨年はゴールドシップ、ローブティサージュ、ジャスタウェイを筆頭に勝ち星を量産。先日はあの矢作芳人厩舎の記録を塗り替え、史上最速でJRA通算100勝を達成。一躍、関西のトップステーブルにのし上がった。 「トレセンLIVE!」でコラムを掲載している榎本優也調教助手が在籍していることでも、競馬ラボではお馴染み。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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