関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

大橋勇樹調教師

一昨年のJCダートを制し、時代が到来したかに思わせたニホンピロアワーズだが、ライバルの台頭と一頓挫が相まって昨年は平安Sの1勝のみ。暮れのG1の結果で不安を感じたファンも多かろうが、今年緒戦の東海Sでは全てを払拭する走りを見せ、このフェブラリーSも有力馬として堂々名を連ねる。競馬ラボ初登場となる大橋勇樹調教師に、王座返り咲きの可能性を迫った。

東海Sは全盛時を思わせる走り

-:東海ステークスが鮮やかな勝ちっぷりだったニホンピロアワーズ(牡7、栗東・大橋厩舎)ですが、戦前は左回りが気になっていましたか?

大橋勇樹調教師:ジョッキーは左回りが気になるとは言ってましたけれど、私自身はそんなに気にしていませんでしたね。普段の調教でもスムーズに走れていたので、問題は無いと思っていました。

-:その言葉どおりの勝ちっぷりでしたね。

大:やっと、ニホンピロアワーズの本来の強い走りを見ることができたかなと。

-:「やっと」というのは、12年のJCダートで勝った時のイメージを持っていて、東海Sでの走りがそのイメージに近くなってきたということですか。

大:そうですね。JCダートを勝った時の強い勝ち方、あの頃に近い走りができたかなと。



-:JCダートを勝った後に「この馬、こんなに強かったのかな」と驚いたファンも多かったように思うのですが、先生自身はあのコンディションをもう一回戻すのに結構、苦労することがあったのではないでしょうか。

大:去年、夏に放牧先で外傷を負い、それが尾を引いて中間に順調さを欠いたので、本来の走りを取り戻すまでに時間がかかりましたね。

-:一般のファンからすれば13年のJCダート5着、中間の夏場の調整がうまくいかなかった部分で、どこまで影響があったのか、わからないところがあったかと思います。あの走りで5着、底力を感じました。

大:僕ら厩舎関係者もよく頑張ってくれたな、と思っていますね。


「(東京大賞典は) 今思うと、僕たちが思っている以上に、馬の調子自体が完調になっていなかったのかなと」


-:去年JCダート終わったあと、直前の動きも一度叩いたので一歩前進を期待していたのですが、東京大賞典で結果3着でした。やはり、一気に良くはならないということでしょうか?

大:今思うと、僕たちが思っている以上に、馬の調子自体が完調になっていなかったのかなと。

-:東海S前を思い出すと、どんな状態でしたか?

大:東京大賞典を使った後、体がだいぶ締まった感じを受けました。東海S当日はプラス体重でしたが、馬体は締まって見えたので、心配していませんでした。ホッコータルマエ、ワンダーアキュート、ベルシャザールの3頭が出走していなかったので、ここでは負けられない、という気持ちで臨んでいたんです。

-:ジョッキーが懸念していた、左回りを全然気にすることなく、圧勝できたということは、フェブラリーSにとっては明るい材料ですね。

大:フェブラリーS使うにあたってもそうですし、暮れの新設G1のチャンピオンズカップ(12月1週に中京競馬場1800mで行われる)を見据えてやりたかったので、いい機会だったと思います。



本当に強い馬が直線抜け出すG1

-:今回JCダートから復帰して4戦目になり、着実に上昇しているのですが、今度はコーナーが2つのレースになります。

大:初めての条件ではないでしょうか。東京コースは力勝負になりますね。騙しが効かないですからね。本当に強い馬が勝つと思いますよ。“芝スタート、左回り”云々言ってはいられないですね、ここまできたらガチンコ勝負です。本当に強い馬が直線抜け出してくると思っています。

-:タルマエ、ベルシャザールなど強い馬の他に、ゴールスキーやベストウォーリアなどの上昇馬がいますが、ライバルを気にするよりもアワーズのコンディションを整えることに集中していくということでしょうか。

大:レース当日に力を発揮できるように、うまく調整していけばニホンピロアワーズの力を出してくれると思っています。

-:体力的には、前回9キロ増えているわけですけれども、それでも太くなかったと考えたら、今度は東京まで輸送もありますし、同じ馬体重を想定してよろしいでしょうか。

大:540キロ前後になるのではないでしょうか。今度は長距離輸送を挟みますしね。そんなに(大きく)減るタイプでもありませんし、だいたい輸送で10キロぐらい減ってしまうのですが、そのあたりは調整しますからね。

-:(追い切りで沈むような感じのあった)首とか心配はしなくていいですか。

大:大丈夫です。許容範囲です。


「相変わらず良い動きをしていました。スムーズに走っていましたし、最後まで頭上がらずに気分よく走っていました」


-:1週前追い切りでは、いつもと違ってCWでしたね。

大:最近ポリトラックの馬場はちょっと硬いところがあるので、コースの状態が良いということでCWで追い切りました。

-:(追い切り)時間帯もいつもだったら最後の方ですよね?今回は1番手でした。

大:「馬場のいい時を見計らってやろう!」と号令かけました。

-:動きはいかがでしたか?

大:相変わらず良い動きをしていました。スムーズに走っていましたし、最後まで頭上がらずに気分よく走っていました。



とにかくベストの体調で臨む

-:12年のJCダート勝利直前の追い切りを見た時に、うなるような感じを受けました。今回もそのようないい意味での荒々しさというのは感じますか?

大:12年JCダート勝った時は、これで負けたら仕方ないぐらいのメイチで仕上げて、ああいう結果がでました。今回は馬が力をつけていますので、メイチどうこうではなく、とにかく体調さえベストに持っていければ、力を出してくれると思って調整しています。

-:ホッコ-タルマエもベルシャザールもこの後ドバイを控えているので、全力で挑むニホンピロアワーズに分があると思います。

大:ハハハ(笑)。常に一戦一戦全力で出走させていますよ。ここを使ってどうのこうのではなく、常に一戦一戦勝負ですからね。

-:月イチぐらいで4回使われていますが、疲れというよりも、上昇度に期待してもいいですか?

大:それは期待していただいていいかなと思います。

-:1600mになるので、いつもよりもポジショニングを気にするファンもいると思うのですが、そのあたりは、どのようにお考えですか?

大:いや、特に気にしていないですけどね。いつも通り、好位につけて流れに乗っていく競馬になると思います。

-:最近の雪による影響で、アワーズ自体、パサパサの方が良いのか、ちょっと湿っても大丈夫なのか、という馬場状態についてはどうでしょう。

大:あんまり関係ないでしょう。馬場がどうのこうのではなく、どんな馬場でも勝っていますからね。馬場状態を苦にする方ではありません。

-:最後に、もう一度JCダートのようにソラを使う癖を見せずに、アワーズに駆け抜けて欲しいというファンに向けてメッセージをお願いします。

大:いつもニホンピロアワーズを応援していただきありがとうございます。前走でようやくこの馬らしいレースができたと思っております。フェブラリーSもあのようなレースができたらと思っていますので、応援よろしくお願いします。

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【大橋 勇樹】 Yuki Ohashi

1961年生 三重県出身。
02年に調教師免許を取得。
04年に厩舎を開業。
初出走
04年3月6日 1回阪神3日目12R ジョープシケ
初勝利
04年8月8日 2回小倉8日目2R リュウヨウ


■最近の主な重賞勝利
・14年 東海S/13年 平安S/12年 JCダート
(共にニホンピロアワーズ号)


三重県の実家が草競馬の馬を飼っており、幼少の頃から馬が好きだったという理由で競馬の世界を自然に志す。「今はもうやっていないけど、当時はサラブレッドもアラブも関係なく、毎年4月・10月の田舎のお祭りで、みんな弁当作って持ってきて、一周400mか500mの小さい馬場で、結構人が集まっていた」。小学校3年生頃には乗馬を始めており、その後も馬に携わりながら大学卒業後に荻野光男厩舎でトレセン生活をスタート。松田博資厩舎での持ち乗り時代には担当馬コスモドリームでオークスを制し、厩舎開業までは目野哲也厩舎で攻め専(調教を専門にやる調教助手)を務める。地味な血統馬を人気の有無に関わらず走らせ、13年目を迎えて順風満帆な厩舎運営を行っている。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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