昨年は函館記念からの連勝で、函館競馬場で行われた札幌記念を圧勝したトウケイヘイロー。それ以降の勝ち星こそないものの、国内の一線級と天皇賞(秋)で対戦し、3度に及ぶ海外遠征で武者修行とばかりの経験を積んできた。札幌記念もゴールドシップ、ハープスターというビッグネームと相見えるが、同馬とて重賞4勝馬。逆転に向けての手応えを清水久詞調教師に聞かせてもらった。

3度の海外遠征を振り返って

-:札幌記念に向かうトウケイヘイロー(牡5、栗東・清水久厩舎)ですが、函館で行われた昨年の札幌記念を圧勝してから1年です。

清水久詞調教師:早いですね(笑)。

-:その間にトウケイヘイローは去年の冬と今年の春に海外遠征で香港、ドバイ、シンガポールと厳しい経験をしてきました。香港とドバイは、日本のファンの方もある程度イメージできると思いますが、シンガポールはあまり馴染みがないと思います。競馬場の形態や、天候、馬場などが、その時期の日本とどう違うか、教えて頂けますか?

清:馬場はほぼ平坦の左回りで、日本の京都・阪神の内回りのような大きさです。綺麗な競馬場でした。年間を通して1つの競馬場の芝コースを使っている割には、芝生の状態は凄く良かったです。

-:管理が難しそうな割には、良いコンディションだったのですね。

清:気候的なものもあって、発育も良いんでしょうね。

-:行かれた時期は日本で言うと、どんな時季にあたりましたか?

清:真夏です。赤道直下くらいの国ですし。

トウケイヘイロー

-:僕も2月くらいにシンガポールに行ったことがあるのですが、凄く暑かったです。住んでいる方も多国籍ですよね。

清:マレーシア、中国、インド系などですよね。

-:そういう環境でのやり難さはありましたか?

清:特になかったです。調教もオールウェザーという感じでした。

-:香港と似た感じでしたか?

清:そうですね。ただ、日本から行く場合、シンガポールは暑さに対応できるかが、一番大きなポイントになると思います。

-:厩舎をミストで冷やしたりは可能だと思いますが、環境自体は変えられません。その時期にいきなり真夏を体験するというのはしんどいですよね。

清:そうですね。5月のまだ暑くなってない時期に、いきなり行くので、輸送と温度差に対応できるかが、一番のポイントじゃないですかね。

トウケイヘイロー

-:トウケイヘイローのコンディション自体はどうでしたか?

清:日本にいる時と変わらなかったです。

-:イメージ的には連戦続きで疲れている時期、休む一歩前です。それでも、馬の体が萎んだりとかはなかったですか?

清:なかったです。そういう意味でも偉い馬ですね。

-:シンガポール航空国際Cはトウケイヘイローの目線でみれば、どんなレースだったか教えて頂けますか?

清:よく頑張ったと思います。欲を言えば勝ちたかったですが、無事に終わって良かったですし、馬を褒めるしかないです。日本代表として選ばれたからには、勝ちを狙いに行くことは勿論です。あそこを勝っている日本代表馬が何頭もいますから、それに続くつもりで行きました。結果は残念でしたが、無事に帰ってこられて、今があります。

-:先着を許した上位に3頭いて、世界的な馬の名前もみられました。流れ自体が先頭馬には厳しいレースだったでしょうか?

清:ヘイローにとってはそれほど厳しい展開というわけではなかったのですが、自分のスタイルに持ち込むまでに時間が掛かりましたね。

-:それは乗り替わりも影響していますか?

清:乗り替わりは関係ないです。なぜならば、四位ジョッキーと合っていたと思います。周りには香港馬もいましたし、簡単には自分の競馬をさせてもらえないですよね。

トウケイヘイロー

-:海外にもだんだんとトウケイヘイローの評価が知られてきて、楽な競馬はさせてもらえないですか?

清:香港での2着は大きかったですね。

-:ドバイデューティーフリーを見ていても、香港での2着が評価されていると思いました。評価されるかどうかで、海外での日本馬の立場や、レースの組み立てるやりやすさが変わってくるのかなと。

清:厳しい展開でしたね。ただ、ヘイローの香港2着が評価されたというよりも、それ以前に日本馬が世界に通用してきているじゃないですか。今まで日本の調教師さんが挑戦されて、良い結果を残してきた積み重ねで、日本馬は昔と違い今は強い、というイメージが海外にはあると思います。

-:日本馬の中には華奢な馬もいますし、ヨーロッパの関係者からしたら、日本馬は自国馬と比べて馬っぷりが良いと思っていると思います。日本馬の血統的背景も世界水準になっています。その中でもトウケイヘイローはよりマッチョな感じで、香港に行っても格負けしない体を持っています。そういうところもあるのではないですか?

清:そういうところもあるかもしれません。そこで差のない2着という結果を出したので、その後のシンガポール、ドバイではマークされましたね。普通の逃げ馬ではないですから。


「レースはジョッキーに任せるだけですし、僕らが作戦を考えてもしょうがないですから。レース前に行く馬がいたら行かせてもいいとか、心にもないこと言ってもしょうがないですし、行くしかないですからね」


-:去年の札幌記念以来、勝ち星からは遠ざかっています。ファンとしては、是非ともこの馬らしい鮮やかな逃げ切りを期待したいです。今年は新装の札幌競馬場ですが、ご覧になりましたか?

清:それがまだ行ったことないです。ただし、馬場は変わってないですからね。

-:時計の出方など、その年の傾向があります。僕の見た感じでは、函館よりもディープインパクト産駒が向くような、軽くてピュッとこられるような結果が出ていると思います。それはトウケイヘイローには良くないのかな、という気がしました。

清:テレビでしか札幌の競馬を見ていませんが、ヘイローの芝2000を意識しては見ていないです。なぜならば、レースはジョッキーに任せるだけですし、僕らが作戦を考えてもしょうがないですから。あの馬の場合は特に決まっているので、レース前に行く馬がいたら行かせてもいいとか、心にもないこと言ってもしょうがないですし、行くしかないですからね。

-:どれだけ有利にヘイローの形を作れるかですね。

清:僕が違う陣営だとして、ヘイローがいたら、少しでも脚を使わせる乗り方をしろ、と言うと思います。それをこの前のシンガポールでは、はっきりやられました。枠順を見ても、そうなるなというのは分かっていましたし、想定通りの競馬でしたから、あとは力負けでしたね。

想定馬体重は490キロ前後

-:やられた中でも、シンガポールでは4着に粘っています。札幌記念では強敵のゴールドシップやハープスターが後ろから追いかけてきます。まず、今のトウケイヘイロー自身のコンディションはいかがですか?

清:心配ないです。思惑通りにきました。

-:今はまだ栗東にいて、まず函館に輸送して、函館のウッドコースで本追い切りをしてから、直前に札幌に入るというプランですよね。そのやり方も、もう慣れていますよね。

清:輸送に関してはなんら心配してないです。

-:今の体重はどうですか?

清:大体、同じです。500台です。競馬では500を切るか、490くらいのいつもと同じ体重で出られると思います。

トウケイヘイロー

-:ここから1回、本追い切りをしたら、昨日見せて頂いた体というのは、もっとグッと盛り上がるというか、絞まりが出てきますか?

清:輸送でちょっと絞れると思います。着いてから4日くらいあるので、それでまた今くらいまで戻って、シュッとやる感じです。もうやってきたので来週は流す感じです。

-:輸送して絞れる分で、ベストに近いコンディションに戻るのでしょうか?

清:だいぶやってきたので、もういいと思います。

-:この馬は重めだと最後に息切れするイメージがあります。

清:いや、太いからとか、そういうイメージはないです。

-:体重以外で馬券ファンがチェックできるポイントはありますか?

清:落ち着きや返し馬など、当日の馬の状態を見る人は見るでしょうし、体重のプラスマイナスを気にする方もいると思います。僕は数字をそれほど気にしないです。大きく増減があれば別ですが、その時、その時の見た印象を重視しますね。

昨年王者も気持ちはチャレンジャー

-:オークスでのハープスターの末脚も凄かったですし、宝塚記念のゴールドシップも強かったです。この2頭がどのあたりの位置で競馬をしてくるか、気になるところですね。

清:実績では格が違うゴールドシップや、これだけの馬と競馬できるのは光栄です。なかなか一緒に走れる馬じゃないですからね。楽しみな部分もあります。

-:この馬にバッチリ嵌まる形にさえなれば、そんなに易々と差されないですよね。

清:相手はG1馬で、僕らは挑戦者ですから、そんな簡単にはいかないです。

-:それでも、雨が降った去年は強い勝ち方でした。

清:あれは馬場ですよね。僕としてはパンパンの良馬場でやりたいです。パワーを兼ね揃えてきたとはいえ、スピードのある馬は良馬場の方が良いと思います。

トウケイヘイロー

-:ドバイやシンガポールへ行ったことは、この夏の疲れには繋がってないですか?

清:シンガポールから完全にオーバーホールしましたからね。帰ってきてからも、ガタッとなったところもありませんでした。

-:凄い馬ですね。体調の維持というか、へこたれなさが凄いですよね。

清:普段から無駄なことをしないので、体力の消耗がないです。そういうところが良いのだと思います。イレ込んだり、イライラして汗をかいたり、調教で引っ掛かって無駄に疲労するということがなく、力の出しどころを分かっている馬です。

-:昔はありましたよね。

清:攻め馬ではなかったです。追い切りになると我慢できずに行きたがりますが、普通のところは馬も分かっているので。

-:精神的なメリハリがついた馬なのですね。そういう馬は得てして成績が良くないイメージがあるのですが、人の言う事を聞きつつ、ここまで成績が良いというのは、恐れ入りますね。

清:大した馬ですね。

-:楽しみにしています。小回りの2000ということで、先行有利なレースになればいいですね。

清:大きな馬場の外回り2000の直線が長いコースよりも、コーナー4つの小回りの方がヘイローには良いでしょうね。

-:ビッグネームの中で、トウケイヘイローがどう主張して、どの様な競馬をするか、楽しみにしています。ありがとうございました。

清:ありがとうございます。

トウケイヘイロー