春のデキとは一変 昨秋の再現狙うデニムアンドルビー
2014/10/26(日)
ジョッキー騎乗で追った1週前
-:雨上がりのウッドコースで1週前追い切りが行われたデニムアンドルビー(牝4、栗東・角居厩舎)ですが、3頭併せの一番内側という、写真を撮る側からしたらとりにくいところでした。外から撮っているので、一番内といったら突き抜けないと撮りづらいんです。追い比べみたいな形になったら、かなり撮るのが難しいものですが、凄く弾けた感じがしました。
小滝崇調教助手:週末と先週も時計を出しているんですけど、僕が乗っての追い切りだとビシッとはできないので、浜中騎手が乗った時くらいはビシッとやってもらおうと思いました。「もうしっかりやれるチャンスがそんなにないのでやっといて」と言ったら、あんな内容でした。
-:宝塚記念以来なのですが、あれだけ調教で弾けるというのは、久しぶりな感じがありました。撮る前は、あまり突き抜けはしないのかな、と思っていたのですが。
小:久しぶりかもしれないですね。どちらかといったら、今まではゴール板までピチっと併せて、という調教をしていたので。しっかり(追い切りを)やるチャンスが欲しかったので、やってもらったらやっぱり弾けました。
-:あの反応を見たら、状態の良さはある程度わかるところなのですが、今日の重い状態であれだけできたというのは、若干「絞る」という意味合いもあるのですか?
小:ちょっとフックラしていますし、余裕もあるので、やれるときにやっておこう、という感じでした。
-:あとは、東京競馬場との相性で言うと、去年のJCでアワヤ(優勝)というところがありました。今年は古馬になって、斤量面での恩恵はありませんが。
小:全然大丈夫だと思います。そんなに気にしていないです。
-:斤量にこだわるよりも、やっぱりデニムアンドルビーらしさが出ればいいと。そのらしさというのは具体的に言うと、差し脚の鋭さでしょうか。
小:やっぱりそうですね。スパッと突き抜けてほしいです。できたら普通に、イメージ通りのデニムらしい競馬をしてほしいです。
-:ドバイの時は、あのデニムが逃げるなんて、テレビを見ていてスタートでびっくりしたものです。
小:ただ単に周りが遅かったんだと思います。日本と外国の競馬の感覚の違いなんだと思いますよ。
-:日本のある程度スタートで出ていく流れなら、そんなに心配ないですか。
小:宝塚もヴィクトリアマイルも、以前よりかはゲートを出るようになっていますけど、ハナを切るということはないと思いますよ。
秋緒戦で理想とする馬体重
-:ちょっとまだ馬体がフックラしている、とのことですが、目安ではどれくらい増えているのですか?
小:先週の計測で460キロですね。ですから、20キロくらいです。
-:でも、東京まで輸送があるということと、まだ1週前ということを考えたら、そうフックラし過ぎているわけでもないですね。
小:それでもまだ前走、前々走よりはフックラした体重で出るんじゃないかな、とは思っています。
-:それは狙ってフックラさせようと思ったのですか?
小:いや、夏の休養を挟んで帰ってきたらそうなりました。いい休養をしてきたんだな、という印象でしたね。春はやっぱりドバイの遠征の疲れも若干あったんですかね。馬の季節感がなくなってしまったようでした。毛もくすんでいましたし、体も張りが出てこなかったので、上げていく中での調整でした。今回はもういい状態で来ているので。
-:デニムの良さといったら、体重云々よりも、プリプリしたはちきれそうな感じですよね。
小:そういう感じが今はまだあります。春はちょっとそういう感じではなかったですね。
-:春はギリギリの状態を維持して使ってたんですね。
小:ドバイで一回バーンと膨らんで、休みに入ってシュッとなったところを、なんとか盛り立てている感じだったので。
-:以前の日本馬はドバイに行った疲れとか反動で「ドバイ帰りは買えない」なんて言われている時期がありましたが、最近はケアが進んだのか、海外帰りもそんなにダメージなく使えているパターンが多いですね。
小:そうですよね。
-:デニムもそんなに大きく尾を引くことはなかったですか?
小:ヴィクトリアマイルの時はさすがにうーんと思いましたが、宝塚の時はちょっとずつ上がってきているのかな、という感触はありました。
-:あの時って、今年の夏の中でも一番暑かった時期だと思うんです。8月の暑さよりも、6月初夏の一気に暑くなりだした時が強烈だったイメージがあります。デニムは宝塚が終わってすぐに北海道へ行ったのですか?
小:いや、天栄でワンクッションおいて3~4週間いて、その後、秋にどうするかをオーナーと調教師、牧場で決めている最中に、胃潰瘍などのニュースが出たと思います。だったら(登録していた凱旋門賞は)止めようか、ということで、北海道に行って、秋は国内ということが決まりました。
-:“トレセンの馬の8割は胃潰瘍”なんて話もありますし、そんなにニュースにするほどでもないことですか?
小:ハイ。「そういう状態です」と言ったら、ニュースになってしまったので、それが理由で止めたわけではないと思います。僕は細かい事情はわからないところですけど。
-:胃がちょっと荒れたということですね。
小:「胃潰瘍が結構ありますね」とは牧場で言われていたので、そんなに気にしていないです。
「440台であれば問題ないのかなと。446とかで使ったことあるのでね。それくらいで出られたらなと思います。450くらいまでだったらね」
-:ちなみに、胃潰瘍があるかどうかというのは、内視鏡で見るのですか?
小:内視鏡ですね。こっち(トレセン)では覗かないです。
-:胃潰瘍があるかないかに関わらず、馬が食欲があるかないか、それが凄く重要になってくると思います。今の食欲はどうですか?
小:よく食べていますね。いつも通りの胃潰瘍予防だとか、食欲を維持するようなケアはしていますが、それで困っているようなことはないです。
-:そういう食餌療法だと、餌は軽めにするのですか?
小:食べたいものだけを、という感じです。食べたいものを食べさせています。
-:では、このまま使っていくと、プラス体重は間違いないと思うのですが、どのくらいだったら走れる休み明けの数字になってくるのでしょう。
小:440台であれば問題ないのかなと。446とかで使ったことあるのでね。それくらいで出られたらなと思います。450くらいまでだったらね。
理想はスローペースの瞬発力勝負
-:今日の1週前追い切りをあれだけビシッとやって、しかも馬場コンディションを考えると、数字以上の負荷がかかっていると重います。あれでデニムは馬体をグッと絞ってくるモードに入りますか?
小:普段だったらこの週から大体ピリッとしてきます。今回は入厩の時期が1週早いので、1週間は馬も余裕があったみたいですが。ただやっぱり、先週の水曜日と日曜日の追い切りが終わったくらいから、体もシュッとしてきました。
-:やっぱりそれだけ繊細なのですね。
小:ずっと同じパターンでやっているからだと思います。賢いですね。
-:久しぶりにスパッと切れるデニムアンドルビーを見たいところです。府中の馬場状態も、京都に比べたら内外関係なく伸びるイメージがあって、いわゆる開幕週のグリーンベルト、内有利、という感じはないので、差し馬にとっては良い舞台なのかなと思います。
小:そうですね。
「追っかけて追っかけて追い通しで、という競馬はしんどいかなと。無理なく、普通のペースでじっとしていられるところで」
-:あとは何か望むことはありますか?
小:あまり追いかけるようなペースになってほしくないなとは思います。グッと弾けるところまで我慢できるポジションで走れるペースが良いです。なんというか、あまり速いペースになってほしくないですね。追っかけて追っかけて追い通しで、という競馬はしんどいかなと。無理なく、普通のペースでじっとしていられるところで。
-:エイシンフラッシュのダービーみたいなイメージですか?ジッといいところで我慢できて、上がりの瞬発力でスパッと行くと。
小:そうですね。
-:ということは、差し馬って色々ななタイプがいると思うのですが、この馬はハイペースよりはスロー差しのほうが良いタイプですか?
小:勝っているレースを見ると、もちろん追いかけて追いかけて、100mくらい追い通しで来たこともありますが、そういうよりは、やっぱりスパッと切れる時はしっかりためられているイメージはありますね。
-:まさに去年のジャパンカップがそのパターンですね。
小:はい。ああいう感じのイメージできたらいいです。あとはポジションがどこになるかだけです。届くポジションなのか届かないポジションなのか。
-:前のポジションだったらドバイのパターンもありますし、アジャストが若干難しいから、その辺は絶好調の浜中ジョッキーに託すしかないですね。
小:ハイ。その辺はもういいイメージがあります。大丈夫だと思います。
-:最近はエアソミュールにしてもディアデラマドレにしても、角居厩舎は府中色が強く感じられますね。
小:今は相性がいいですね。厩舎が調子いいので、デニムもそれに乗っかりたいですね。
-:では、休み明けを待っているファンにメッセージをお願いします。
小:ぶっつけG1なので、強気には何とも言えないですが……。そういえば、ドバイなどもそうでしたね。そろそろスパッと切れるデニムが見せらたらいいなと思うので、応援してほしいです。
-:是非タイトルを。
小:そうなんです。タイトルなしで終わるのはね。他にもたくさん育成馬が出ているので、忘れられないように頑張ってもらいます。
-:女王のジェンティルドンナにあそこまで迫ったデニムの末脚を、また府中で再現してください。
小:頑張ってもらえるようなコンディションに持っていきます。
-:ありがとうございました。
●JC前・デニムアンドルビーについてのインタビューはコチラ⇒
プロフィール
【小滝 崇】Takashi Kotaki
小学生の時にエアダブリンやナリタブライアンのレースを観て、競馬の仕事に就くことを目指す。とりわけエアダブリンは高校の夏休みに牧場まで見に行ったほど。卒業後はノーザンホースパーク、現ノーザンファーム空港牧場、山元トレセンでそれぞれ働き、23歳でトレセンに配属になり野元昭厩舎に配属される。思い出に残っている馬はエーシンコンファーとエーシンジャッカル。解散後は現在所属している角居勝彦厩舎に異動して現在に至る。持ち乗り助手として、デニムアンドルビーを担当している。
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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