現役生活最後の秋に臨むジェンティルドンナ。堅実無比だった昨年までとは違って、この春は二度の掲示板外もあったが、井上泰平調教助手の同馬に対する信頼は揺るがない。今回は鞍上に初めて戸崎圭太騎手を迎えての一戦となり、当人が跨った前2週、そして本日の最終追い切りと態勢は順調そのもの。崩れ知らずの府中の杜でいかなるレースを見せてくれるのか、いよいよ決戦の火蓋が切られる。

至極順調に最終調整が完了

-:ジェンティルドンナ(牝5、栗東・石坂厩舎)の直前追い切りが今朝(10/29)終わったわけなのですが、2週間ほど戸崎騎手が来てくれて、最初に乗ったときよりも、2回目に乗った先週の1週前追い切りのほうが、やっぱり感触が良かったみたいですね。今週は井上さんが乗られて、動きはいかがでしたか?

井上泰平調教助手:良かったと思います。若干セーブしながら前半は行って、最後だけ伸ばす感じで。タイムを出そうと思ったら、いくらでも出てしまうので、ある程度計算して、指示通りいいところを乗れたと思います。

-:調教での手応えというのは、レースのときほど凄まじくはないと思うのですが、この追い切りがどのくらい今回の休み明けに繋がるかというところが、ファンは気になっていると思います。

井:ある程度、先週までにジョッキーに乗ってもらって仕上がっていると思うので、今週は調整の意味も込めた調教でした。

-:つまり、いい意味で天皇賞に送り出せる態勢が整っていると考えていいですか?

井:そうですね。

ジェンティルドンナ

10/29(水)、井上助手が騎乗しての最終追い切り


ジェンティルドンナ

10/16(木)、戸崎騎手が騎乗して併せ馬


-:去年の天皇賞(秋)は2着でしたが、若干かかっていたというレース内容だったと思います。今回のジェンティルにもその可能性はありますか?

井:ここ数戦は折り合いがつく練習もしているので、1年前ほどかかっていくということはないと思います。

-:去年の雪辱に向けて順調ということですね。あとは、休み明けの調教量に関する質問なのですが、例えば京都記念前と比べて、今回は追い切りの本数自体は多いのですか?

井:さほど変わりはないのですが、馬の雰囲気は今回のほうが良くて、元気も一杯です。

-:普段の様子が、若干いい意味でカリカリしてきていると。まだ熟女と呼ぶにはかわいそうですね。

井:そう呼ぶにはかわいそうなくらい元気はいいですね。

去年2着の雪辱を果たす舞台に

-:ジェンティルドンナはクラブの所有馬なので、来年の3月までという規定があるようですが、話によると年内で引退だそうですね。

井:報道でそうありますし、先生(石坂正調教師)もおっしゃっています。

-:僕らがジェンティルドンナを見られるのも、あと数戦だと思います。この休み明けの天皇賞(秋)から、厩舎サイドとしては目一杯ですね。

井:いつも頑張っているんですけど、負けちゃってすみません(苦笑)。

-:宝塚記念の時も状態に関しては悪くなかったのですが、馬場状態に関しては良馬場に越したことがないですよね。

井:そう思いますね。

ジェンティルドンナ

-:そして、天皇賞は魔の大外枠というのがありますが。

井:ゲート速いので、そこはあまり……。

-:大外枠だけは欲しくないと思いますが、真ん中辺の枠なら休み明けでもジェンティルのパフォーマンスは十分出せる状態にありますか?

井:あると思います。去年の雪辱を果たしたいですね。

-:ここ最近、体などで変化はありますか?

井:毎日乗っているとあまり気づかないのですが、宝塚のときの写真を見たら、若干首が太くなっているのかなとちょっと思いました。乗っていたらあまり感じないですけどね。

-:年齢を重ねているので、その年によってジェンティルの体というのがあるでしょうしね。あとはこの馬の勝負根性に火がつけば……。

井:(火が)つけば激しい競馬をしてくれるので。

-:この馬のスタートセンスという話が出ましたが、やっぱりこれまで乗ってきた馬の中でもいいですか?

井:速いですね。反応がいいんでしょうね、きっと。

ジェンティルドンナ

-:それが逆にひっかかるということに繋がるということはないですか?

井:ゲートを速く出るからひっかかるとは思わないです。実際トレセンで練習するときは出してもすぐ止まりますし、ムキになって走っていくようなことはないです。周りの馬とのポジションの取り合いで若干ハミを取ることはどの馬でもあると思いますが。

-:あれだけの舞台で戦っている馬の中では、コントロールは利くほうですか?

井:利きやすいと思いますよ。

-:ドバイで見せたクイックな進路変更などもあるし、内枠に入ってちょっとごちゃごちゃしてもジェンティルなら抜けて来られそうですね。

井:正直あまり、あのクイックは止めてほしいのですが(笑)。見ていてヒヤヒヤするので。

あとはジェンティルドンナ自身の戦い

-:宝塚を負けた直後などは、あの反動というか、疲れが残っていたのかな、という気もしたのですが、馬場が良ければあんなことにはならなかったですか?

井:そう思いますし、たまに凡走するんですよね。そこがどうしてかというのは、わからない部分なのですが……。

-:ただ、冷静に考えてジェンティルは牝馬じゃないですか。それも、牝馬限定のレースを選んで使っているわけでもないですし、始終牡馬と戦って、しかもJC連覇、ドバイのシーマクラシックも勝っているということを考えると、もうちょっと冷静に負けることがあってもいいんじゃないかとも思いますね。

井:しょうがないですよね、競走馬なので。いつも走れるよう思って乗っていますが、そうじゃない結果が出ることもあります。人間でもアスリートの方が自分でわかりながら調整して走って負けることもあると思うのです。馬は口が利けないので、その時その時の状態を考えながらやっているつもりですが、なかなかうまくいかないですね。

-:去年の天皇賞は台風の影響で若干早く出なければいけないとか、ちょっとトラブルがあったと思います。今年は運良く天候も良さそうですし、何の不安もなく送り出せそうですね。

井:週末は雨じゃないですか?確か週間予報は雨だったような。


「馬は口が利けないので、その時その時の状態を考えながらやっているつもりですが、なかなかうまくいかないですね」


-:それだとちょっと我々は割り引いたほうがいいですか?

井:みんな同じ条件ですしね。僕は馬券を買う立場ではないので、割り引くとか、そう考えたことはないのですけど。

-:こればっかりはジェンティルに託すしかないですね。

井:ここまで来たら天気のことは言ってもしょうがないので。いい仕上がりで臨めるというところまで来たので、あとはジェンティルに頑張ってもらうしかないです。

-:競馬の神様がジェンティルに微笑むなら天気も晴れるでしょう。

井:そうですね。

-:では、応援しているファンに最後メッセージをお願いします。

井:ニンジンが大好きで、人間のことも基本的に好きなので、すごく人懐っこくてかわいい馬です。レースではいつもちょっと怒った感じで走っていますけど、普段は違いますので、みなさん応援してあげてください。

-:ありがとうございます。

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