菊花賞はまさかの9着に敗れたダービー馬ワンアンドオンリー。しかし、甲斐純也調教助手は言い訳を一切せず、粛々と次なるターゲットであるJCに向けて、従来どおりの調整を続けている。陣営の一致した見解は「完成はまだ先」というものだが、それでも今回は天皇賞(秋)3着のイスラボニータを完封した舞台。初の古馬との対戦を想像するだけで、胸が躍らずにはいられない。

菊花賞9着の敗因を辿る

-:ワンアンドオンリー(牡3、栗東・橋口厩舎)についてお伺いしていきます。菊花賞は外枠ということもありましたが、僕らとしてはそれでもこの馬なら何とかしてくれるのではないか、という思いがあっただけに、ショックな面もありました。

甲斐純也調教助手:これも競馬かなと、真摯に受け止めました。枠順はみな良いところが欲しいですし、僕らがどうこうというのはないです。それは競馬場でジョッキーがどのように展開を読んだりするかという話ですので。ただ、結果として、外枠で前に壁も作れないという展開になりました。

-:珍しく引っ掛かっていました。

甲:ノリさん(横山典騎手)としても、位置を取りに行こうと出して行きましたけど、どこにも入れずに、壁を作れないという厳しい展開になってしまいましたね。

-:休み明けの内容も良かったですし、レース前の調教も強くしていました。かなり仕上がっている印象も受けましたが、調教が強過ぎて、良くなかったというのはありませんか?

甲:全然それはないですね。

-:負けたということで、こちらとしては色々な敗因を探してしまうのですが、コンディションの問題ではなく、レースの展開が向かなかったことが一番大きかったということですね。

甲:あと、当日のテンションがいつもより高かったというのも敗因のひとつですね。

-:それは逆に言えば、前哨戦の神戸新聞杯での反応の鈍さを消そうと思って、調教を強くしたことで、思っていた以上の仕上がりになってしまった、ということでもあるのでしょうか?

甲:そういう訳ではないですね。珍しく気負っていました。ワンアンドオンリー自身が2冠馬になりたくて、気持ちが入り過ぎていたのかもしれません。

ワンアンドオンリー

この中間も今までどおりの調整

-:菊花賞の敗戦を受けて、仕切り直しでJCに向かうのか、その先に行くのかというところで、プランが決まらない時期もありました。JCと決まってからの調整はいかがでしょうか?

甲:普段通りに、レースの2週前から徐々にペースアップして、という感じですね。

-:そして、今日が1週前の追い切りでした。

甲:ダノンメジャーとの併せ馬でしたが、あの馬も来週レースがありますし、調教駆けするので、ただの追い切りではなかった部分もありますね。

-:写真を撮っていますと、菊花賞の前よりもワンアンドオンリーの顔が闘志をみなぎらせている様に見えました(笑)。そして、走りを見ていますと、左前脚にクセがあるように見えるのですが?

甲:乗っているとほぼ左右均等のように感じます。どっちの手前が、というのも特にないですし。

-:カメラで狙っていると馬の左目で僚馬をロックオンして、絶対に抜かせないぞという表情をしている様に思えます。

甲:結構、闘志は表情に出してきます。普段は全く違うんですけどね。

-:その闘志をJCでは古馬相手に出せたら良いですね。

甲:どこまでやれるかですね。

ワンアンドオンリー

-:前回の菊花賞から距離が変わり、ペースも速くなります。掛かる心配はなくなると思うのですが、今回のJCで古馬と戦って、上位にくるために必要な条件は何ですか?前回からの修正点としては、当日のテンションが上がり過ぎない方がいいですよね。

甲:そうですね。前走も状態面には全く不安がなかったですし、良い状態で送り出せました。今回、どこかをあえて変えることはないです。攻め馬を強化したり、軽くすることもなく、今まで通りに調整します。

-:府中はダービーを勝っている縁起の良い舞台で、距離も同じです。しっかり巻き返したいですね。

甲:巻き返したいです。

-:力関係的には、天皇賞(秋)でイスラボニータが外枠ながら3着に入っています。古馬と斤量差もありますし、互角以上に注意しないといけない存在ですよね。ダービーの時は馬場傾向の都合もあり先行しましたが、差す脚もあります。どういうレースをするか、横山典騎手がどう乗るか楽しみです。

甲:先行するか、控えるかは、ノリさん次第です。


「任された以上、良い状態で臨むだけです。競馬なので、それで結果が出るか出ないかは分かりません。各陣営も一番の状態で、と意識しますし、その中で勝ち負けしようと思ったら、色々な要素が必要です」


-:甲斐さんとしては、馬を走れる状態に整えることですよね。

甲:ええ。馬が力を出し切れる状態に持って行くことだけです。

-:いたってシンプルですよね。菊花賞と同じでいいのだなと思いました。負けた陣営というのは、どこがダメだったと、色々とイジる方向に走りがちです。

甲:僕自身“たら・れば”が嫌いなんです。「ああしてたら」と後から後悔したくないんです。

-:良いと思っていたことで結果が出なくても、それは受け入れるしかないんですね。

甲:任された以上、良い状態で臨むだけです。競馬なので、それで結果が出るか出ないかは分かりません。各陣営も一番の状態で、と意識しますし、それぞれの馬の良い状態で臨んできます。その中で勝ち負けしようと思ったら、色々なものが必要です。

-:色々なものが向いた一頭が勝てるのですね。

甲:どれだけ良い状態で行っても、競馬で不利を受けて力を出し切れないこともあります。やってみないと分かりません。

ワンアンドオンリー・甲斐純也調教助手インタビュー(後半)
「父同様に完成型はまだまだ先」はコチラ⇒

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ワンアンドオンリー

ワンアンドオンリーの追い切りを担当する赤木高太郎調教助手(元騎手)と甲斐助手(右)