競馬ラボではニコ生G1討論会にも緊急出演を果たし、すっかりお馴染みの存在である吉原寛人騎手。その吉原騎手の代名詞的存在ともいえるのが南関東二冠馬のハッピースプリントだが、約4ヶ月ぶりの休養を経て、満を持して秋初戦・勝島王冠(S3)に向かう。先日のJBCスプリントでもあわや2着のパフォーマンスを魅せるなど、地方競馬の第一人者として活躍を続ける吉原ジョッキーと、地方の雄が再びの大舞台を見据えて始動。JDDの回顧から新シーズンに挑む心持ちまで、じっくりと明かしてくれた。




強さが裏目に出たJDD

-:まず、JDDについて振り返っていただきたいのですけど、東京ダービーは凄いプレッシャーだったと思います。2冠馬としてハッピースプリント(牡3、大井・森下厩舎)でJDDに挑む気持ちはいかがだったでしょうか?

吉原寛人騎手:3冠が懸かる馬に乗せてもらえるという、その気持ちだけですごく昂った状態で出たのですが、そういう僕の未熟な部分も出たレースだなと思いましたね。だから、もう少しレースに慣れていれば、もっと落ち着いたレースが出来たのかなと。結果論ですが、そういうイメージが残っていますね。

-:それは少し、自分で硬くなってしまったところがあるということですか?

吉:自分自身ではそんなつもりはないのですが、やっぱりそういう風になっていたのかなと。無意識の内にそういうのがあったので、レースビデオを見ても、ほんの少し、一瞬の判断のことですが、あそこでもう少し一息入れていればなと。結果的には負けてしまったので、直線の長い大井に合った競馬ではなかったのかなと思います。そういう風に反省しなければいけないと思うし、競馬は本当に難しいと痛感させられました。

-:ワールドスーパージョッキーズシリーズなどの大舞台も経験をされていますが、そういったレースと比べても緊張の一戦だった訳ですか?

吉:特にクラシックという、馬にとっても1回しかないレースというのは、そういう思いが強かったですね。


「京浜盃、羽田盃、ダービーと本当に横綱相撲でしたので、ある意味ライバルがいない状態で独りの競馬をしていました。それだけに、どうしてもあの競馬が板に付いていましたし、僕もそういう風にさせてしまっていました」


-:そういった中でのJDDのレースを振り返っていきます。番手の競馬になりましたが、レースの前はどこで競馬をしようと思っていたとか、プランは立てていたのですか?

吉:もう少しスタートを出せていければ、楽な番手に行けたかもしれないですけど、ちょっと追っ付けながらになってしまいました。あそこで脚を使ってしまったことは、自分の想像とちょっと違いましたね。

-:番手の位置でJRAの有力馬の位置を見つつ、後ろも警戒しながら、という競馬でした。

吉:逃げて怖い馬もいましたし、カゼノコにしろ、後ろからとんでもない脚で来る馬もいました。板挟み状態で競馬をしなければいけなかったので、前も見つつ、後ろも意識しないといけない、この難しい競馬で、自分なりに考えて前をしっかり捕らえた上で粘り切るというイメージで乗っていました。ただ、結果的に最後はカゼノコにハナ差敗れてしまったので、もう少し工夫しなければいけなかったなと思います。

-:それでも番手から勝ちに行って、動いて行ったレースだったと思います。ハッピースプリントの力量的には決して中央馬にヒケを取るものではなかったと思いますが?

吉:まさにおっしゃる通りで、京浜盃、羽田盃、ダービーと本当に横綱相撲でしたので、ある意味ライバルがいない状態で独りの競馬をしていました。それだけに、どうしてもあの競馬が板に付いていましたし、僕もそういう風にさせてしまっていました。どうしてもファンからの見る眼も怖く、ジャパンダートダービーではそういった“ハッピーの競馬、イコール番手の競馬”という形にしてしまった僕も良くなかったと思います。ただ、もっと強力なライバルがいれば、また違った競馬をしていたと思いますし、ハッピーもまた違う成長をしていたと思います。どうしてもハッピーの能力が抜けていましたので、その点は誰が悪いというのは……。

吉原寛人

-:人気馬ゆえの競馬の難しさだと。

吉:そうですね。難しさがあったというのはありますね。

-:JDD当日のハッピーの気配ですが、東京ダービー、羽田盃と使ってきていました。気配自体はいかがでしたか?

吉:京浜盃でひと叩きし、休み明けの分もありましたが、上がりは37秒台でしっかりとまとめてきていたので、デキは悪くないなという感じでした。羽田盃ではしっかりと仕上がって、強い勝ち方をしてくれましたが、その反面、反動が出て、ダービーではちょっと緩い仕上がりでの参戦となりましたね。それでもしっかりと勝ち切ってくれたし、ジャパンダートダービーとしては本当に究極の仕上げで、連戦が続いた中での疲れはあったかもしれないですが、本当に作り込んだハッピーの状態だったと思います。

-:その当時の時点では、最高の状態で出走できたと?

吉:そうですね。本当にジャパンダートダービーの時計が物語るように、かなりハイレベルな戦いだったと思います。

万全を期しての下半期初戦

-:JDDの後、休養に入った訳ですが、少し復帰戦まで日程が延びました。その理由を教えていただけますでしょうか?

吉:この連戦が響いて、夏に入って一気に疲れが出てしまったので、ここまで延びてしまいました。ただ、本当に良くなるまでは休ませよう、ということでしたので、しっかりと休養を挟んでくれました。1回ガタッと来たところを、この勝島王冠を目標につくり直してきました。当初はもう少し早い復帰、出陣を狙っていたのですが、これだけの馬なので、本当に良くなるまでは、使わないでおこうということでした。

-:無理をせず、思いっきり休ませようということですね。そして、期間的には延びましたが、勝島王冠という目標が決まってからは、10月の頭に帰厩してから何回か跨っていらっしゃいますか?

吉:3回乗せていただきまして、北海道でも1度乗せていただいたんで、それを合わせて4回乗せていただきました。本当に日が経つにつれて良くなっているのを実感しましたし、本当に今日の追い切りなんかは最高の状態になったな、間に合ったなという印象です。楽しみですね。


「本当にこの世代の中ではかなりのレベルの馬だと思うし、それを補う力があると背中で感じていますので、楽しみですね」


-:最終追い切りが終わって、思っていた以上に上がってきてくれた感触はあるのですか?

吉:当初はどうなるのかなという状態だったので、ここまでしっかりと良く仕上がってくれたなと思います。本当に森下先生の手腕は凄いと思いますし、ハッピーのポテンシャルの高さにも驚かされますね。

-:やはり気になるのは、現段階で最高の状態だったJDDと比べての状態になります。どのように感じていらっしゃいますか?

吉:特にガラッと変わった部分はないのですが、馬がフレッシュな分、良いかなというのが今の状態ですね。どうしても使い詰めで、馬が競馬を多少嫌になっていた部分もありました。それが抜けて今はフレッシュで前向きなハッピーになっていますので、それが良い方に出てくれればと思います。

-:張り詰めていた部分が抜けて、また気持ち良く走る方向になっているということですか?

吉:そうですね。

-:今回は初めて古馬との対戦になりますが、カゼノコが先日JBCクラシックに出走して、敗れてしまいました。今度は古馬との対戦ということで、ハッピーの感触はいかがでしょうか?

吉:休養明けと古馬との戦い、そこが本当にどうなるかというレースだと思うのですが、特には心配していないです。本当にこの世代の中ではかなりのレベルの馬だと思うし、それを補う力があると背中で感じていますので、楽しみですね。

吉原寛人

-:ポテンシャルを考えれば、現時点でも古馬と遜色はないと。

吉:そうですね。

-:追い切りの指示はどのようなものだったのでしょうか。今日は3頭併せでしたが?

吉:「古馬2頭を1馬身前に置いて、追走して3ハロンからしっかりと出していって、その中で溜めながら、そして残り1ハロンでちょっと脚を伸ばしてくれ」ということでした。本当に強力な古馬相手でも、最後はしっかりと突き放してくれましたし、時計もまとまっていて、不安のない動きでした。今日の動きは本当に自信になりましたね。

-:力を出せる状態にあると。

吉:ハイ!そう感じています。

ハッピースプリント・吉原寛人騎手インタビュー(後半)
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