春シーズンは皐月賞3着と好走し、満を持してダービーというところで出走取り消し。そこで歯車が狂ってしまったウインフルブルームだが、紆余曲折を経てのマイル戦でリスタートなれば適性的にはマッチしそうな印象だ。現役でも屈指の美貌を誇る栗毛の馬であり、京都金杯でパドックを彩ることは間違いなし。競馬ラボ初登場となる小久保貴博調教助手に、巻き返しに向けての手応えを伺ってきた。

ここ2戦で30キロ増。影響は?

-:前回のチャンレンジCはウインフルブルーム(牡3、栗東・宮本厩舎)に期待していた方も多かったと思いますが、展開が不向きでしたでしょうか?

小久保貴博調教助手:負けるにしても、掲示板は外さないだろうな、という印象を持っていたので残念でしたが、それにしてもちょっと不甲斐なかったなというのが……。上がってからも息の入りが早かったですし、後日に乗り始めてからも、普段のレース明けよりはダメージも少なかったので、そんな走りきっていないのかな、という感じですね。

-:ここ2走で合計30キロ増えているじゃないですか。その辺りの成長期にかかっているという難しさがあるのでしょうか?

小:もともとこちらに来る前に牧場で520キロほどあったらしいので、それがカシオペアSの時は戻って、そこから更に筋肉が盛ってきた感じですね。見た目にはそんな太くはなかったですし、追い切りでも反応できていたので、問題ないとは思って出したのですが、手が動きだすのも早かったです。いくらか(体重の)影響があるのかとは思って、今回はそこまで太らさないよう、何キロかマイナス体重で出れるよう、と思いつつ、この中間は乗っています。

-:この寒い時季なので、発汗量も少ないです。絞るにもきつい時季じゃないですか。汗取りとかはされていますか?

小:そこまでキチッという感じではないですが、普段の速歩を乗る時にあまりイジりたくないので、割とフラットで乗っていましたが、それをシッカリと出して、長めに乗るようにはしています。

ウインフルブルーム

-:1歩、1歩シッカリ踏み込んで歩かせるような調教ですね。もとはといえば、皐月賞で3着に来ている実力馬ですからね。

小:そうですね。だから、前回が能力だとは思ってないですね。

-:ファンもそれは重々分かっていると思うので、金杯でも人気にはなってくると思います。コースや条件についてはどう見ていますか?

小:臨戦過程は京都の方が良いですね。馬場に向かうまでが阪神だと、どうしてもパドックの上(屋根に音)が反響するので、それに反応してカッとなるんですよね。正直、あの屋根を何とかしてほしいですよね(苦笑)。実況の音声も結構ダイレクトで来るじゃないですか。そういう意味でも、やっぱりカシオペアSの時よりは、レースへ向かう時のテンションが高かったですよね。京都はゆったりと回れていたので、大丈夫だと思いますが……。

軽快な先行力の源は気性面

-:普段はどんな馬なのかということを、ファンに教えていただけますか?

小:もう本当におとなしいですね。全然手が掛からないです。今は体調もシッカリしてきたので、カイバもバリバリ食べます。帰厩してすぐは体も減っていましたし、なかなか食い込んでこなかったのですが、すっかり食欲も戻っていますね。

-:この馬は普段メンコを着けて乗っていられますが、意外と反応が良い馬なのですね。

小:反応は良いです。怖がりな面もあるので。

-:そういうところがレースに出ないように、ということですか?

小:それだけに、パドックはメンコを着けて、馬場に入ってゲート裏で外す、という形をとっているんです。

-:「メンコを着けていても、ゼッコで反応をする」という話も耳にしました。

小:乗っていて反応します。やっぱり高い音には敏感みたいで、普段乗っていて、強風の時などに大きな葉っぱがカサカサと揺れるじゃないですか。それにビックリして跳んだり、なんてこともありますね。

-:見ていると、並の先行馬プラス瞬発力もあるようなタイプですね。

小:マイルくらいだったら、その瞬発力もある程度使えるのかと思っているので、マイルになるというのは良い条件と思っていますね。


「前回で惨敗したから、斤量がプラスになることはないと思うので、今回に関しては、そこは前向きなところでもありますね。それと同型馬との兼ね合いです。開幕週ですし、踏ん張ってくれるとは思いますが、瞬発力勝負になると分が悪いことも確かです」


-:枠はあまり内過ぎない方が、包まれないということを考えたら良いということですね。

小:ゲートは出ますからね。偶数だったらどこでも、という感じですね。奇数はシンザン記念の時が最悪でした。1番で散々待たされて、普段よりゲートが甘くて、ミッキーアイルが凄い勢いで出たので。あれが逆だったら、ちょっと違う結果にもなっていたのかなと。

-:ゲートというポイントは、この馬にとって最後の数センチを争うには大きい要素ですよね。

小:そうですね。前走もゲートの時点でそんなに出ていかなかったので、それも含めて、あれっ、何でだろうという、首を傾げる部分がありましたね。

-:次戦に向けての変更点、改善点は見つかりましたか?

小:そこまで小細工はせずに、前よりもなんぼか、こちらで気を乗せて行こうかなとは思っています。来週の本追い切りの前に、1回終いだけしっかりカリ気合だけを付けて、乗っておこうかと。でも、前回で惨敗したから、斤量がプラスになることはないと思うので、今回に関しては、そこは前向きなところでもありますね。それと同型馬との兼ね合いです。開幕週ですし、踏ん張ってくれるとは思いますが、瞬発力勝負になると分が悪いことも確かです。

ウインフルブルーム

キーワードは金杯、金髪の「金」。

-:今回も乗られる池添ジョッキーですが、カシオペアSを勝った後のコメントはありましたか?

小:「まだ馬が幼いから、その辺が改善できないかな……」というようなことは言っていましたね。道中ずっと張りっぱなしだったみたいなので。4コーナーでガッと膨れたじゃないですか。やはりそこが気掛かりなようでした。

-:でも、それを調教でチェックしようと思っても、この馬は……?

小:もう全然、トレセンでは精神状態が違うので、そういうところを見せないんですよね。

-:宮本先生もその辺を懸念して、坂路であえて真ん中を走らせて、どちらにモタれたり張ったりするのかをチェックしようとされていましたが、調教ではそういう面がないですものね。

小:ええ。前から割と真ん中めを、追い切りでも走っていましたしね。特に操作性に問題はないので、やっぱりどうしようもないですね。かと言って、こちらでそんなに精神的に追い込むのも良いとは思えないですから。

ウインフルブルーム

-:レースの時はそういう癖を持っている馬だと思っておいたら良いですね。レースまではまだ期日がありますが、改めて期待したいところですね。

小:当然、期待はしています。今後へ向けて、やっぱり賞金は加算してきてもらいたいですね。

-:金杯の勝ち馬はその後の進むべき道というのが開けている訳で、最終的には安田記念あたりでしょうか?

小:オーナーもそこを使いたいという希望があるみたいです。ただし、賞金を稼がないとマイル路線はなかなか層が厚いので。

-:今年の春は皐月賞3着という大健闘の後に、NHKマイルCに行くのか、ダービーに行くのかという、悩んでいる期間もありましたものね。

小:スタミナもソコソコに兼ね備えているので、全然こなせると思ったんです。ジョッキーもみんな口を揃えて「左回りの方が良いんじゃないか」と言ってくれているので。

-:それは先ほど言っていた外に張る部分が?

小:ええ。やっぱり外に張ったりする部分があるので。

-:結局、左回りで走っていないんですよね。

小:そうなんです。未経験なんです。

ウインフルブルーム

-:そこは楽しみに待って、まずは金杯から賞金加算して、来年の2015年というのは、ウインフルブルームにとって飛躍の年にするということですね。

小:なって欲しいですね。「飛躍の年にできる」と断言まで、デカイことは言えませんが(笑)。

-:見栄えが派手な馬で、ファンも多いと思いますが、グラスワンダーファンだった小久保さんにとったら、ライバルであるスペシャルウィーク産駒を担当することに、どんな思いですか?

小:これも何かの縁なのかなと思います。

-:金髪のウインフルブルームのファンにメッセージを。正月明け一発目です。

小:金杯で金髪が好走できたらな、と思って臨むので、応援よろしくお願います。これで勝ち負けしたら絵になると思いますけどね。

(取材・写真=高橋章夫)