2014年有言実行のリーディング獲得!矢作芳人師に訊く!
2015/1/10(土)
有言実行でリーディング獲得
-:2014年は最終週のデッドヒートを制して54勝で最多勝、リーディングを獲得されたということで、おめでとうございます。
矢作芳人調教師:ありがとうございます。
-:しかも出走回数が500回越えという、脅威の出走回数でした。
矢:馬房が増えたんでね。昔に比べたら、1馬房あたりの稼働率は減っていると思います。それは当然仕方ないですよね。良い馬が増えてきたので。
-:回数を使いたくても、コンディション管理ができていなかったら、年間で500回以上というのは難しいですよね。
矢:それはスタッフの力とオーナーの協力だと思います。
-:出走回数が多いというのは、オーナーさんにとってもありがたいことですよね。
矢:それは当然意識していますし、計算をしています。レースに使えばお金になるという競馬のシステムは、日本の中央競馬だけなのでね。
「賞金も少なかったですし、そこは課題ですね。重賞も獲れないんじゃ、本当に情けなかったし、2015年はシッカリとそこを修正していきたいと思っています。そして、それだけ数を使っても、もう少し(好走)率を高められるようにね」
-:出走奨励金ですね。
矢:非常に大きいですから、それは常に意識しています。
-:ビジネスとして馬主さんに還元できるということですね。
矢:500何回ということは、出走に関して35万円以上出ている訳ですから、2億円近くを還元しているということで、それは表に出ないお金ですが、大きいと思います。
-:8着までに入れば賞金がもらえるということを考えれば、プラスアルファで還元しているわけですね。
矢:それも含めて全て、日本の中央競馬しかあり得ないシステムなので、そのシステムというのを利用しなければと思っています。
-:全体の獲得賞金からいくと、重賞やG1は勝てなかった訳ですが、馬主さんにとっては大きいですよね。
矢:ただし、賞金も少なかったですし、そこは課題ですね。重賞も獲れないんじゃ、本当に情けなかったし、2015年はシッカリとそこを修正していきたいと思っています。そして、それだけ数を使っても、もう少し(好走)率を高められるようにね。それでも、(馬券を買ってくれる)ファンのみなさんのためにそういう課題は一杯あるとは思いますが、まずは数を使えて、それだけ勝てたっていうことは、当然スタッフを誇りに思っています。
-:悪い言い方かもしれませんが、全部の馬に対して、酷使したわけでもありませんね。
矢:やっぱり馬は1頭1頭個性がありますし、かつ在籍馬も多いので、出走する割に1頭1頭に無理を掛けているという感じではないと思いますよ。
個人馬主での勝ち鞍が多いのも矢作厩舎の特徴だ
引退したグランプリボスとの思い出
-:矢作厩舎といえば、グランプリボスの存在も忘れられません。最後の香港まで頑張ってくれましたね。
矢:本当に思い出の馬なので、引退は非常に寂しいですけれども。
-:昨年で一番衝撃だったのは、安田記念のグランプリボスの出走直前のコンディション、体つきを見て、良い時の雰囲気にはないなと思っていたのに、あれだけ走ったということです。あの馬のハートの強さというのを、レースで見せつけられた印象ですね。
矢:いや~、本当にそうだね。あれは馬に教えられたという風に思っていますね。
-:引退したグランプリボスにかける言葉はありますか?
矢:お父さんとしての仕事の方が長いので、成功して欲しいし、今まで助けられた分、今度は助けていきたいと思います。
-:あんな逞しい子が出てくるのでしょうか?
矢:絶対に成功するんじゃないかと思います。パワーもスピードも兼ね備えているし、サクラバクシンオーの後継ということでね。
-:ある程度、落としどころを見計らって、繁殖牝馬も探してもらいたいですよね。
矢:やっぱり、今の日本の競馬を考えると、2歳から走るというのは非常に重要なことなのでね。仕上がりの早さはありますし、とても楽しみというか、間違いなく成功すると思っています。
-:あの馬は、バクシンオーにしては距離の融通が利いたというのは、どういう部分からだと思いますか?
矢:やっぱりサンデーの血じゃないのかな。でも、入ってきた時からそうでしたよね。厩舎に入ってきた時から1200の馬とは思わなかった馬ですから。
-:それをずっと「何でマイルに使うんだ」みたいなやりとりがあったのを思い出します。
矢:そうそう(苦笑)。
-:それが最後の最後、香港マイルでも3着に来たわけですからね。
矢:思ったことが間違っていなくて良かったです。人間の思い込み、先入観というのはいかにダメだということを、証明できたかと。
-:馬ごとにちゃんと見て見極めて行けば、違う柔軟な考え方が必要だということですね。その辺は、ファンも血統とか近走の成績だけではなくて、もうちょっと柔らかい眼で見てほしいですね。
矢:それもまた、競馬の楽しみの一つと思います。
新年の目標と「ここだけの話」
-:昨年1年で、重賞でもたくさんの馬を出走させた訳なのですが、2015年に楽しみになりそうな馬を、何頭か挙げていただけますか?
矢:晩成な馬は挙げたくないところですが、今年は2歳だけで13~14勝したと思うんです。これは日本でもトップクラスだと思うし、新年に向けて、その2歳馬の勝利というのは大きいですよね。リーディングを穫れてもう何も後は出ない、という状態じゃなくて、2歳がそれだけ勝ち上がっているということは非常に楽しみです。
-:最終週の新馬(リアルスティール)でも?
矢:もちろん、あの馬が一番期待が大きいのは確かです。
-:あとは、僕が個人的に気に入っている馬でダノングラシアスはどうでしょう?
矢:これはG1に関しては不可解だったですが、巻き返してくるモノを、それだけの器を感じています。グラシアスにもタイトルを獲らせたいですね。
-:あの馬は近い内にどこか使う予定が決まっているのですか?
矢:まだ、今のところは決めていないのですが、どこかを使ってトライアルで、桜花賞で3走目にしようかなとは思っています。
-:良いスピードもあるし、抜けてくる時の勝負根性がありますよね。1回不利のないスムーズな競馬でどこまでやれるかというのを、まだまだ挽回出来ると思うので楽しみにしています。最後に、矢作厩舎を応援してくれたファンにメッセージをいただけますか?
矢:本当に応援してくれている人が多いので、それが僕にとってもスタッフにとっても励みになっています。本当にありがとうございます。感謝の言葉だけですが、ちょっと数が多いということで、みなさんにもっと貢献できるように、2015年はもう少し質を高めていきたいと思っていますので、引き続き応援よろしくお願いします。
-:先生の場合は、新聞紙上のコメントかでも、勝負になる時はなると、ちょっと厳しい時は厳しいと、ハッキリ仰られますよね。
矢:それは素直に言っているつもりなんで、そこら辺はよく見てほしいよな。
「厩舎というのは、正直、全てが勝てる馬ばっかりではないのでね。そこは、ファンに対してちゃんと考えています。自分もギャンブラーだからね。やっぱり、その気持ちを良く考えてやって行きたいと思います」
-:勝率に換算すると出走回数が多いだけに、馬券ファンとしては狙い辛いような気もしますが、コメントと擦り合わすと、意外に僕らの馬券の勝率は上げられるというか?
矢:そうだろうね。厩舎というのは、正直、全てが勝てる馬ばっかりではないのでね。そこは、ファンに対してちゃんと考えています。自分もギャンブラーだからね。やっぱり、その気持ちを良く考えてやって行きたいと思います。
-:2014年使いまくって、2015年が萎むということでもないというのは、さきほどの話で分かったので、引き続き楽しみですね。
矢:ただ、ちょっと今年はスロースタートで行こうと思っていますよ。
-:2015年の目標があれば教えてください。
矢:G1しかないです。G1を獲る!昨年はG1どころか、重賞も勝てなかったというのは本当に情けないなと思っています。昨年に関してはリーディングを獲るという目標で、それを実現できたので、今年はG1を獲るということで挑みたいと思います。
-:それがすごいですよね。目標を掲げて、その目標を達成できるというのは。また重賞出走前に取材をさせていただくことがあると思いますので、昨年同様ご協力下さい。
矢:よろしくお願いします。ありがとう。
(取材・写真=高橋章夫、写真=競馬ラボ特派員)
プロフィール
【矢作 芳人】Yoshito Yahagi
父の矢作和人氏は大井競馬の元調教師。自身は名門・開成高校を卒業するも、父の影響を受けて競馬界へ足を踏み入れる。厩務員・調教助手時代は5つの厩舎を渡り歩き、2005年に厩舎を開業。実に14回目の受験で、晴れて調教師免許を手にした。
厩舎開業後はコンスタントに勝ち星を重ね、スーパーホーネット、グロリアスノア、グランプリボス、ディープブリランテら活躍馬を多数輩出。2014年にはついに初の調教師リーディングを獲得している。
また、メディア・ファン対応も精力的にこなしており、2008年には初の著書「開成調教師 安馬を激走に導く厩舎マネジメント」を発刊。『よく稼ぎ、よく遊べ』をモットーに、他とは一線を画した厩舎運営を続けている。
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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