スイープトウショウの肌にディープインパクトという期待の良血レガッタ。新馬戦は母を彷彿とさせる切れ味で器の違いを見せたが、昆貢調教師に聞けば、まだまだ能力だけで走っているという段階。それでも1戦1勝の身できさらぎ賞に挑戦させるあたりが期待の表れで、ここで結果を出してくるようであれば、一躍クラシック候補として目が離せなくなる。少なくとも、当インタビューを読んだ方はそのジャッジがしやすくなるだろう。

超良血馬を1歳当時に見た印象

-:きさらぎ賞(G3)に向かうレガッタ(牡3、栗東・昆厩舎)について、久々登場の昆先生にお聞きいたします。よろしくお願い致します。まだキャリアが1戦1勝ということですので、最初にご覧になった時の印象から教えて頂けますか?

昆貢調教師:小さい馬だったので、1歳の間に上手に成長させないと、そのままになってしまいそうな感じでした。放牧地を変えたり、ウチから色々と注文を出して、育成法を変えてもらいました。その甲斐もあってか、普通の馬の形になったので、第一段階はクリアしてくれた感じでした。

-:1歳馬の体のを大きくするには、どういう事をなされたのですか?

昆:細かい事は牧場に任せています。そういう成長のさせ方ができればしてほしい、と牧場スタッフに頼んでやってもらいました。全ての馬ができるわけではないと思いますが、この馬はできたみたいです。

レガッタ

2013年のセレクトセール時のレガッタ


-:ディープインパクト産駒としても、そんなに小さかったのですか?

昆:そうですね。セリの時は体に脂が乗っていたのでポテッとは見えていました。脂を一回落として、骨の成長を早めたかったのですが、その時点で骨瘤が出ていました。筋にかかりそうなところもあり、まずいなと思ったので、「一回上(体)を軽くして、骨を成長させる感じでやってほしい」という注文で進めてもらいました。

といっても、僕はセリには行ってなかったんです。オーナーが「(セリで)落としたよ」と言ったので、2、3日後に見に行ったのですが、あの時点では高い買い物だなと思いましたね。


-:体の形ですが、いわゆるディープインパクト産駒というよりも、母系が出ていますか?

昆:僕はお母さんを知らないんですよ。勝ったレースなどは見ていますが、身近にその馬を見たわけではないので、それは何とも言えないです。

-:入厩してからの変化ですが、その頃にはだいぶ成長もしていましたか?

昆:馬の形としては、良い感じにできていました。牧場でも乗り込んでもらって、ゆっくりやって行こうということで、栗東に入れてからも3ヶ月くらい掛かりました。実が入らないまま使っていたのですが、バネが凄いということで、調教はそんなに一回目からビシビシやらなくても良いかなと。基礎体力もまだ足りなかったですし、これくらいで一回使っといてもいいかな、という感じで使いました。

レガッタ

能力だけで勝ち切った新馬戦

-:そして、新馬戦ですが、デビュー前から個人的にも注目していたので、(調教で騎乗している)西谷さんら(西谷誠騎手)から話を聞いていたんです。それもあって、遅い流れだとちょっと引っ掛かるのかな、という先入観で見ていました。実際のレースも流れが遅くなったので、心配になりましたが、思っていた以上に折り合いがついたのでしょうか?

昆:調教とレースではスピードが違うので、息が入りにくくはないですし、そこまで引っ掛からないです。調教は“15-15”とかの基本的なスピードになるので、馬も我慢しきれなくて行ってしまいますが、レースでは12秒台ですからね。そういうのをひっくるめても、そこまで引っ掛からないだろうと思いましたし、ドスローになった時はちょっと心配しましたが、あんな感じだろうと思いました。


「乗り味が最初から抜けていましたからね。調教で走る走らないは別として、バネのある馬は芝に行ってさらに良いので、その辺りは安心していました。走るのは間違いないなと思っていましたよ」


-:そこから圧巻だったのは、終いの3ハロンも33秒台で、2ハロンが10秒台です。思っていた以上のキレがありましたか?

昆:乗り味が最初から抜けていましたからね。調教で走る走らないは別として、バネのある馬は芝に行ってさらに良いので、その辺りは安心していました。走るのは間違いないなと思っていましたよ。まだ完成はしていませんが、肉がちゃんと乗ってきて、調教もそれなりに動くと思います。今の時点ではそこまで求めていないですし、基礎体力がもっとつけばいいなと思い間をあけました。馬も2ヶ月目あたりから、かなり良い感じにしっかりしてきたよ、と言っていたので、その辺りは目的どおりにきたと思います。

-:新馬戦とは違いますか?

昆:あの頃は馬がゆるゆるでした。能力だけで勝ちました。

-:ドスローだったので、勝ちタイムも遅いですし、終い3ハロンのタイムの速さだけが目立ったレースでした。2戦目は違うレースが見られますか?

昆:あの時点で、新馬なら速いレースは心配していませんでした。ただ、今度はG3なのでそれなりのメンバーも出てきますし、完成度の高い馬もいますからね。その辺りを考えると、基礎体力のない状態で出しても、ダラダラと走って帰ってくるだけで終わると思いましたし、それなら基礎体力をつけて、不安な部分を少しでも解消しないと、と思ったので間を空けました。

-:それでは間を空けたことがこの2戦目、しかも重賞というところで生きてくると。

昆:僕はそう思いますね。

-:上積みに期待したいですね。

昆:この前は馬なりで勝っているのでね。上がりは33秒2でしたが、そこも馬なりでしたし、ビシッとやれば32秒台で来ていたかもしれません。でも、そこまで攻める必要はなかったですし、福永君も次のことまで考えて競馬をしてくれました。ですから、内容はあれで良かったと思っていますよ。

レガッタ

期待が高い故のきさらぎ賞挑戦

-:今朝(1/28)の追い切りですが、2頭併せで四位騎手が乗られていました。82秒台で上がってきましたが、動きはいかがでしたか?

昆:大体予想していた通りの時計でした。調教ではあまり走る馬ではないのでね。先週の時点で四位君も調教ではそんなに動かない、という感触は掴んでいると思います。僕としても上(坂路)でやっても下(コース)でやっても、あまり動かないと思っていますし、82秒台が出れば十分です。前の馬を追いかけるかたちができれば良かったとは思いますが、前の馬が進んで行かずに途中で前に出てしまいました。それでも良い追い切りだったとは言ってくれましたよ。

-:今回は四位騎手が初めてということで、坂路だけでなく下のコースも、ということだったのですね。上がってきた時の反応はいかがでしたか?

昆:「(ハミを)噛みそうな雰囲気はあるが、良く我慢していたし、前に出た時はしっかりと抜けて、自分の中ではイメージ通りにできた」とは言っていました。

-:それでは楽しみにして良さそうですね。

昆:調教も走ってレースも走ってくれれば一番分かりやすいのですが、この馬は調教では動かないのでね。でも持っている能力がなければ、あれだけの脚は使えないと思いますし、仕掛けたのは並びに行った時だけで、あとは馬なりみたいなものでしたからね。しかも物見しながら外に逃げていった、とも言っていたので、馬自身にはまだ能力があるのだと思います。

レガッタ

-:気になるポイントでは若干ですが、京都の馬場は荒れ気味になっています。

昆:そこはもうG1を獲るには言い訳にならないと思っています。そんなことを言い訳にしているようでは無理ですからね。

-:先の話になりますが、母がスイープトウショウという血統をふまえ、距離適性はどの辺りがベストだと考えていますか?

昆:父のディープインパクトが読みづらいところがありますよね。なので、僕としては母系のほうが出てほしいなとは思っていますが、こればかりはどうしようもできないですからね。正直に言えば使っていかないと分からないところではあります。ゲートも遅くて良いので、練習はほとんどしていないですし、終いに徹して、やれるようになってくれれば良いなと思っています。その上で競馬を使いながら覚えてくれればと。


「ここで結果を出せないとね。休み明けとかは言い訳になりませんから。そこも踏まえてやっていますので、どんな形であれ結果を出してもらいたいです。次からはもっと強い馬との勝負になる訳ですから」


-:それだけ先生が期待しているからこそ2戦目がここになったのですね。

昆:このレースを選んだのは新馬戦と同じ雰囲気のまま走ることができるので、馬自身にあまりプレッシャーをかけないで済むと思ったからで、そこでしっかりと走ってくれれば、違う競馬場に行った時も大丈夫なのかなと思っています。2000だとか1600だとかも考えたのですが、久々なので同じイメージでできる方が良いのかなと。今度はオープンになりますし、全体の時計も出るでしょうから、そこをクリアできれば先のことが見えてくると思います。

-:馬券を買うファンとしてはパドックや馬体重を気にするのですが、2戦目での体重の変化はあるのでしょうか?

昆:ほとんどないと思いますよ。ただ、そこに芯が入っているかが問題で、中身は違っていると思います。

-:改めて真価が問われる一戦になると?

昆:ここで結果を出せないとね。休み明けとかは言い訳になりませんから。そこも踏まえてやっていますので、どんな形であれ結果を出してもらいたいです。次からはもっと強い馬との勝負になる訳ですから、ここは頑張ってもらうしかないですね。

-:それでは、ここから楽しみが広がるようなレースを期待しています。ありがとございました。

(取材・写真=高橋章夫)