関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

鈴木勝久&相田一善調教助手(斎藤誠厩舎)

相田一善&鈴木勝久調教助手(斎藤誠厩舎)

高:それも助手さんの仕事の1つになるわけですね。他に、例えば「この馬をこのレースに使ったらどうですか?」というような、馬のローテーションに関する話を先生にされることはありますか?

相:うーん、よほど先生が迷っているときには話し合うこともありますけど、基本的に、先生から「ここで行くから」って言われたところに合わせて持っていこう、と頑張るのが僕たちの仕事なので。

鈴:先生がレースの予定を決める背景には、騎乗させるジョッキーの予定や、馬主さんへの対応があると思うので、僕たちは出来るだけ期待に沿うように努力をします。でも、どうしても馬のコンディションが悪くてダメな場合は「1週延ばした方がいいんじゃないですか?」という話はします。

相:より良い状態でレースに使えるように、1日の調教の中で工夫したり、1週間のスパンでサジ加減を調整したりします。

高:そのような微調整に関しては助手さんの判断が問われる所なんですか?

鈴:そうですね。調教メニューも、ある程度パターン化したものがあるにはあるんですけど、それを行うか行わないかの判断は、その場でその場で判断することが求められます。先生が競馬場や牧場に行って不在のことが多いので。

高:なるほど、責任重大ですね。ちなみにレースがある時はどうされているんですか?

鈴:土日はだいたい臨場業務があるから、競馬場へ行きますね。厩務員さんと違って、僕たちは自分で車を運転していかなきゃいけないんで、結構眠いです(笑)。

高:朝、調教に乗って、それから移動されるんですもんね。

鈴:中山競馬場に臨場に行く場合だと、夜中の2時に厩舎に来て、馬に乗って調教をして、終わったら支度をして車を運転して競馬場へ行って、という感じです。日曜だと次の月曜日が休みですからまだいいですけど、土曜だと、帰ってきてまた次の日に同じことを繰り返すので。

高:夜中2時に厩舎ですか…。中山競馬場だったら、まだ美浦から近いですけど、東京になったら更に大変なんじゃないですか?

鈴:でも移動の時間は変わりませんから。

相:時間は同じぐらいですね。中山の方が楽ですよ、競馬場が小さくて装鞍やパドックなどの移動距離が少なくて済みますから。

鈴:臨場業務が入るとトレセンに残る人数が少なくなるから、残った人の仕事量が増えたりしますね。

高:そういう調整も大変なんでしょうね。

鈴:でも、臨場は一番しっかりと答えが見えるからいいと思います。競馬から上がってきた様子を目の前で見られますからね。レースが終わってすぐに聞いたジョッキーからのコメントを次に活かすことも出来ますし。やっぱり人づてに聞いたり紙面で読むよりも、リアルタイムで見たり聞いたりした方が絶対にいいですから。

相:レース中の様子や馬の表情も全部見えるから、それは良いことだと思います。

高:なるほど。ところで調教助手にとって必要な能力って何だと思いますか?

相:何でしょうね…、とにかく何でも出来ないと…。

鈴:バランスかなあ?バランスもそうだし、特出した、秀でたものが一つあるとか。

高:例えば馬乗りが凄く上手い、とか?

鈴:そうですね。根本的には「馬を調教してより良くする」っていうのが大原則ですけど、そのためには馬に乗る技術もそうですし、馬をよく見たり、触ったりとかの厩務員さん的な要素も絶対必要ですから。あとは、調教師の指示と担当厩務員の見解を上手くミックスさせてスタッフに伝えたり。平たく言えば中間管理職ですね。

相:本当、中間管理職のようなものですね。違う人が13人14人集まって働くわけで、個性というか仕事に対するスタイルは人によってだいぶ違いますから。

高:上手くみんなの意見を活かして、仕事がスムーズに行くようにして。

鈴:そうですね。自分一人だけ頑張ればいいものでもありませんし、人に任せることが必要な部分もありますから、その辺のバランスも大事です。複数の考えをぶつけないと、その人にとって都合のいいような馬作りをしてしまったり、偏りが出てしまうかもしれませんから。

高:なるほど。

鈴:例えば、一頭の馬に関して、厩務員さんが「大丈夫だ」と言っても、僕の印象は違うかもしれないし。そもそも助手3人が馬に乗って受ける感じは、たぶん全員違うと思いますよ。

高:人それぞれ受ける印象が違うんですね。

鈴:はい。調子の良い悪いだけに限らず、乗った感触や足の具合をどう感じるかとか。

相:「これぐらいだったら許容範囲じゃないか」っていうジャッジをする人がいたり「これは危ない」とうジャッジをする人がいたり。

鈴:でも、それらを全て複合して斎藤誠厩舎の作品として送り出すわけですから、そのブレを少なくしなきゃいけないんですよ。だから全てが1人のジャッジで決まるという風にならないようにしていきたいと思っています。

高:たくさんの目で馬を診断されるんですね。そうなると、人と話して色々意見をすり合わせていくコミュニケーションが必要ですよね。

相:はい。だからコミュニケーションは取るようにしていますよ。くだらない話の流れで「あの馬、大丈夫でした?」とか、そういう感じでサラッと聞いてある程度把握しておいて、パッと先生に聞かれた時に「ああ、あの馬はこうです」って答えられる癖がやっとついてきました。

高:最初の頃は答えられなかったんですか?

相:調教に乗った当日の馬のことしか覚えていなかったんですよ。
厩舎にいる20頭の、次の競馬に向かうプランが頭の中に全然浮かんでこなくて「なんで今日この馬にこの調教をするんだろう?」っていう戸惑いをずっと感じていました。今はもう前日に攻め馬の調子をだいたい考えるようにして、慣れて来ました。そうなるまで、…1年くらいかかりましたよね?


鈴:そうだね、1年だね。

高:そういうのプランは助手としてある程度の経験を積まないと、頭の中で組み立てられないものなんですね。鈴木さんも苦労されましたか?

鈴:そうですね、最初は馬に乗ることで精一杯でしたから。あとは、先生がいない時にどうするか、自分たちで考えながら判断する経験が蓄積されて、いろいろ対処が出来るようになってきたかなと思います。だから今は、厩舎にいる馬の調教タイムでも、先生に聞かれたらすぐに答えられますよ。

高:凄いですね。

鈴:先生は僕ら以上に状況を把握しなきゃいけない頭数が多いですからね。だから僕たちは出来る限り、厩舎にいる20頭はしっかり把握しておこうと思っています。
助手の僕たちだけではなくて、スタッフの皆が情報を共有出来るように、管理馬の放牧状況をホワイトボードに張って、情報を可視化出来るようにしています。


高:便利ですね。

鈴:厩務員さんも「どういう馬主さんの馬がどの牧場に行っているかな」っていうのも、可視化してあるとイメージしやすいでしょうから。みんなが同じ情報を知っているのがベストですよね。

高:いろいろ工夫をされているんですね。そんな苦労の中、レースの勝ち負け以外で、助手の仕事をやっていて嬉しいと思えるところはありますか?

相:うーん、朝が厩務員さんよりちょっと遅いことですかね(笑)。30分ぐらいですけど。

高:アハハ(笑)。

相:まあ、去年1年助手として働いて、調教にしても、事務にしても「先生から信頼をしてもらえているな」と感じられることが多くなってきたんですよね。
信頼されることによって僕からも自信持って意見を言えるようになるし、そういう話は、先生もちゃんと聞いてくれます。そういうとき、やりがいを感じる瞬間はありますね。それがまた結果につながっていけば、なお良いなあと。他に助手になって良かったことは…、やっぱり朝がちょっと遅いことですね(笑)。


高:そこは主張しますね(笑)。

鈴:でもその分帰りはみんなより遅いですけどね(笑)。みんなが帰った後にいろんな事務仕事やお客さんの対応がありますから。先生がいないときに馬主さんが来られたりしますし。

高:鈴木さんはいかがですか?助手の仕事をやっていて、こういう瞬間は嬉しく感じるという点があったら教えてください。

鈴:厩舎の馬がマスコミに取り上げられると嬉しいですよ。そういう馬に携われているっていうことで嬉しいです。あと、やっぱりG1に出られた時ですね。内側の馬場から、スタンドを見上げた時のあの興奮が、もう凄く忘れられなくて。

高:サンツェッペリンでクラシックに参戦しましたもんね。

鈴:厩舎開業2年目で皐月賞、ダービー、菊花賞の牡馬クラシックに全部出て、暮れには朝日杯でG1も勝たせてもらいましたから。G1に出る馬の出走過程の全部に触れられる体験を早めに出来たのは、大きい財産だと思います。見えないものを追いかけるわけじゃなくて、1回やったものですし「これはたまんねえ!」っていう経験、あれはやっぱり毎年求めたいですよね。

高:いいですね。またG1に進めるようにこれからも応援しています。今日はありがとうございました。

鈴・相:ありがとうございました。

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鈴木勝久調教助手

1976年5月6日生まれ。
2006年6月1日より斎藤誠厩舎にて助手として活躍。



相田一善調教助手

1980年7月15日生まれ。
2008年10月1日より斎藤誠厩舎にて助手として活躍。



高橋摩衣

生年月日・1982年5月28日
星座・ふたご座 出身地・東京 血液型・O型
趣味・ダンス ぬいぐるみ集め 貯金
特技・ダンス 料理 書道(二段)
好きな馬券の種類・応援馬券(単勝+複勝)


■出演番組
「Hometown 板橋」「四季食彩」(ジェイコム東京・テレビ) レギュラー
「オフ娘!」(ジェイコム千葉)レギュラー
「金曜かわら版」(千葉テレビ)レギュラー
「BOOMER Do!」(J SPORTS)レギュラー
「さんまのスーパーからくりTV」レギュラーアシスタント


2006年から2008年までの2年間、JRA「ターフトピックス」美浦担当リポーターを務める。明るい笑顔と元気なキャラクターでトレセン関係者の人気も高い。2009年より、競馬ラボでインタビュアーとして活動をスタート。いじられやすいキャラを生かして、関係者の本音を引き出す。