伏兵コスモネモシンで一発を狙う!
2010/4/3(土)
清水英克調教師
清:よろしくお願いします。僕、競馬ラボに登録したよ。割りと見てるんだ、あのインタビュー(笑)。
高:ありがとうございます(笑)。そうおっしゃっていただけると嬉しいです。
清:僕、これで3回目?結構会っているうちにクセになってくるでしょ?会えば会うほど味が出る、スルメみたいな男ってよく言われてるんだ(笑)。「またもう一回会いたいな」みたいな。
高:アハハ(笑)。
清:で、何の話だっけ?
高:桜花賞のコスモネモシンです(笑)。えー、いよいよ来週になりましたけど、桜花賞へ向かおうと決められたのは、いつ頃だったんですか?
清:「この馬は良いな、走るな」とは思っていましたけど「桜花賞へ行こう」とハッキリと思ったのは、やっぱりフェアリーステークスを勝ってからですね。最初はオーナーサイドも、5大登録はしない、と考えていたみたいで。
高:そうなんですか。
清:ところが2戦目あたりからの走りを見ていたら「良いなあ」と思って。それで5大登録をお願いしたら了承していただけたんですよね。その頃から「もしや」と思ってはいましたよ。
高:良いところがあるなあ、と。
清:そうそう。それで、一番「走るなあ」って感じたのが、3戦目の府中で4着になった時ですね。
高:躓いてしまったレースですね。
清:そう。あれは、普通の牝馬だったら勝負をあきらめるんですけど、ちゃんと持ち直しましたからね。また、あのレースで4着に入らなかったら、優先出走権が無くて全てが白紙だったので。本当「走る馬だな」と思いました。
高:着順こそ4着でしたけど、先生には手応えがあったんですね。
清:うん、内容的には勝っていたレースでしょう。乗り役さんが落ちかけていたくらいでしたから。
高:実際、その次の未勝利戦で初勝利をあげられましたね。
清:そうですね。また勝ったレースも厳しいレースでしたよ。なかなか出られなくて苦労して、出たところでビュッと伸びるっていう、牡馬みたいなレースでしたからね。馬場も悪かったですし。
高:非常に濃い内容で。そして次にフェアリーステークスへ出走されました。
清:未勝利を勝ったあとに、オーナーサイドと話をして、すぐに「ここだ」と決めましたね。
高:そのフェアリーステークスを勝ったあとに、フラワーカップに進みますけれども、先生はあのレースをどうご覧になられましたか?
清:うーん、人気馬を意識し過ぎた乗り方になっちゃっていたかな、というふうに思いましたね。レースのあと、横山典弘騎手とも「ちょっと脩がマークし過ぎちゃったかな」なんていう話をしてね。あと、抜けようとしたときに前をカットされていましたからね。それであの着差なら、斤量差も考えれば「勝ちに等しい内容だったかな」と思っていますよ。
高:あー、重賞を勝っている分、1キロ多かったんですよね。
清:そう。だから悔しくて三日三晩眠れなかったですよ。それで飲み過ぎちゃった(笑)。
高:あらー(笑)。でも本当にあの伸び方は凄かったですよね、私も興奮して「ワーッ」と叫んじゃいましたよ。じゃあ、先生としては負けた悔しさはあったけど、決して力負けはしていないぞ、と。
清:そうですね。
高:そしていよいよ桜花賞に向かうわけですけど、今日(3/31・水)の追い切り内容はいかがでしたか?
清:もう指示通りでしたね。「時計を気にしなくていいから、リラックスして走らせて」と。力みの無いように。レース間隔も無いし、長距離輸送もあるので今回はあまりキツくやらずにいこうかな、と。順調に来ていますよ。
高:なるほど。そういえば今回は初めての長距離輸送があるんですよね。これに関しては…
清:正直分からないですね。でも、分からないけど、牡馬みたいなところがあるから、意外とケロッとしているかもしれませんからね。
高:普段、厩舎にいるときのネモシンはどんな感じなんですか?
清:最近、スイッチのオンオフがハッキリしてきた感じかな。馬房にいるときはリラックスしておっとりしているけど、いざ乗り出すときにはスイッチが入って、負けず嫌いな面が出てきますよ。
高:そのペースが乱れなければ、関西へ行っても大丈夫、という感じですか?
清:そう、自分の世界を持っているので、孤独になっても特に影響が無いんじゃないかな、という感じがあるんですよね。だから、変に萎縮したり、寂しがって急に入れ込んだり、というのは無いと思います。
高:なるほど。阪神の1600mという舞台に関してはいかがですか?
清:折り合いがどうこう、という不安はありませんし、自由自在なレースを出来るところがあるので心配はしていませんよ。桜花賞は、結構雰囲気に舞い上がって暴走してしまう馬がいたりしてペースが乱れがちになる面もありますけど、ネモシンにとっては、乱ペースになればレースはしやすくなりますよね。フェアリーステークスのときも乱ペースだったけど、冷静に回って来られましたからね。
高:既に経験済みで結果も残していますもんね。
清:牝馬はこの時期難しいですからね、発情が来るので。一番難しい時期なんじゃないかな。そうなるとチャンスはあるのかな、と思いますけどね。
高:ネモシンにとってはプラスに働く、と。
清:そう思っていますけどね。だから、本当に輸送がカギですよ。ひとつだけ、一番心配な種は何ですか、と聞かれたら、それは輸送だね。また三日三晩眠れない原因になるのは(笑)。
高:アハハ(笑)。眠れなくなるほど気になるポイントで。
清:そう(笑)。キーワードは「輸送」ですよ。多分、そんなに心配は無いと思いますけどね。
高:馬体重に関してはいかがですか?
清:増えている分には全く問題は無いと思います。前回がちょっとマイナスだったからね。「この時期でマイナス体重はちょっとキツいな」と思いましたけどね。
高:じゃあ本当にむしろ増えていて欲しいな、というくらいで。
清:そうですね。今日で456キロあったので、450キロくらいで出走出来ればいいかなと思っています。
高:そうですか。ちなみに先生がネモシンの好不調を見分けるときは、どういうところをご覧になるんですか?
清:仕草だったり、毛ヅヤだったり、着目点はいっぱいありますよ。
高:仕草で言うと、どんな仕草をしているときに「良いな」と感じるんですか?
清:引っ張って歩いているときにグイグイ行っていて、自分の気に入らないことがあると、蹴ったりするときは「良いな」と思いますね。
高:気合が前面に出ているような感じで。
清:そうですね。
高:本当に牡馬みたいな…。肉食系女子ですね(笑)。
清:本当本当(笑)。
高:本番が楽しみですね。桜の中でのレースって、雰囲気が良いですよね。
清:ねえ、最高だよね。去年の今頃はこうなることを全く描いていなかったからね。自分の厩舎の馬がクラシックに使えるようになっているって、頭の中に無かったし。「いつかは」と思っていましたけど、一年後に現実にクラシックの舞台に送り出せるのは、凄く幸せだなあと思っています。
高:三日三晩眠れなくなる日があったとしても「幸せだ」と。
清:いや、寝てる。
高:アハハ(笑)。「眠れない」と言いつつも。
清:よく寝てる。今朝もギリギリに起きた。
高:アハハ(笑)。
清:いや、僕は、楽しみはありますけど、緊張感っていうのは今のところ無いんですよ。自分が助手のときの方が緊張が大きかったですね。いつも僕が言っているように、助手さんの仕事は、レースの前日までが仕事じゃないですか。
高:はい。
清:でも、調教師の僕の仕事は、ハッキリ言えば装鞍所で鞍を置くだけなんですよ。あとはスタッフに指示を出しているだけなので。逆にあまり僕が緊張感を持っていてはいけないんじゃないかと思うんですよね。冷静に周りを見ていないといけないので。
高:先生が緊張して肩に力を入れても、良いことがない、と。
清:そうそう。普段のレースでも、1番人気になってカチカチになっている厩務員さんを見て笑っていたりしているんですよ。そこで僕が冷静さを失うとやっぱり良くないですからね。
高:先生はかなりリラックスされていますね。
清:していますよ。多分、当日のレースのファンファーレを聞くまでリラックスしているんじゃないかなあ。こういう機会って、もう二度と無いかもしれないですから、楽しみたいですよね。もっとこの期間が長ければ良いなあと思いますよ。
高:楽しい時間をもっと味わいたいですよね。
清:もう3年間くらい続いて欲しいな(笑)。やっぱり忘れられるのが早い世界ですからね。単発で終わりたくないじゃないですか。
高:今の良い流れを継続させたいですよね。
清:そう。自分としては「自分がやって来たことに結果が付いて来ればいい」と考える性格なんですけど、スタッフのみんなも同じような気持ちでやって来てくれて、結果も出て来ているところなので、このままで行きたいな、というのが正直な気持ちですよね。僕たちが頑張って作っている馬が良い結果を残してくれるのが凄く幸せです。その積み重ねの結果が重賞であったりG1であったりということでね。
高:今回も厩舎としてベストを尽くしたひとつの結果なんですね。では、そろそろお時間になりますので、最後に桜花賞へ向けてひとことお願いします。
清:そうですね、馬が稼いでくれることは嬉しいですけど、僕はまず「無事にいて欲しい」と思っているんですね。厩舎からレースに送り出して、帰って来れなかった馬たちもこれまでにいるわけですからね。今回も、もちろん勝ち負けは大切ですけれども、やはりまずは無事に帰って来て欲しいと思っています。
高:ありがとうございました。応援しています!
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■最近の主な重賞勝利 |
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今年は新年早々に、シンザン記念、フェアリーSと二日連続重賞勝ちと好スタート。この春はその勝ち馬・コスモネモシンとガルボで初GⅠ制覇を狙う。 |
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■出演番組
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2006年から2008年までの2年間、JRA「ターフトピックス」美浦担当リポーターを務める。明るい笑顔と元気なキャラクターでトレセン関係者の人気も高い。2009年より、競馬ラボでインタビュアーとして活動をスタート。いじられやすいキャラを生かして、関係者の本音を引き出す。 |