フローラSは1番人気でオークス出走権を取り逃がしたビッシュ。しかし、運も相まってクラシック出走に漕ぎつけると、当時の2強に肉薄する競馬で3着。その内容がフロックではなかったことを示したのが夏を越した後の紫苑S圧勝で、迎える秋華賞はシンハライトの回避により大本命という声も聞こえてきた。ダイワドレッサー、ネオヴェルザンディ(抽選対象)との3頭出しを見据える鹿戸雄一調教師に、最後の一冠へ懸ける意気込みを聞かせてもらった。

能力と強運で掴んだオークス3着

-:秋華賞(G1)に出走するビッシュ(牝3、美浦・鹿戸雄厩舎)についてですが、レース数をそれほどこなしていないということで、少し遡って2月のデビュー前にこの馬を最初に見た先生の印象からお聞かせ下さい。

鹿戸雄一調教師:コンパクトですけど、バランスが良くて「良い馬だな」と思っていました。ちょっと体質的に弱いところがあって、すぐにデビューという訳にはいかなくて。でも、徐々に体力が付いてきて、ちょっと遅いデビューにはなりましたけど、新馬戦は良い状態で使うことができたと思います。

-:新馬戦は道悪馬場でしたが、レースを振り返っていかがでしたか?

鹿:初めてのレースにしては馬込みの中で我慢して、最後はすごい脚を使ってきていたので、あの新馬を勝った時はけっこう良いモノを持っていると思いましたね。

鹿戸雄一

▲紫苑Sを制し4度目のJRA重賞勝ちに笑顔を見せる鹿戸師(左から2人目)

-:そのまますぐ翌月の500万を勝ちましたが、こちらのレースはどう感じましたか?

鹿:「まだ、ちょっとコーナーでぎこちないところがある」と、その頃に乗っていたノリちゃん(横山典弘騎手)がそんな話をしていたのですが、それでも能力の差で勝った感じはありましたね。まだまだ課題が残る印象でした。

-:その次に重賞のフローラS(5着)に進み、ここが重賞初挑戦になりましたね。

鹿:スタートでちょっと不利があって後ろからの競馬になって、最後しか脚を使えませんでした。それでもあそこまで追い込みましたから、競馬にさえ慣れてくれば、重賞の舞台でも戦える力があることを見せてくれましたよね。

-:そして、オークスに出走することになりますが、本番に向けての調整過程で特に気を付けていた点があったら教えていただけますか?

鹿:出られるかどうかが分からなかったので、取りあえず(ノーザンファーム)天栄の方でジックリ乗り込んでもらって、良い状態で厩舎に戻してくれました。馬の方は元気一杯で帰ってきたように、体調は本当に良かったです。そのおかげで良い仕上がりでレースにも出られました。

-:見事に抽選を突破して、レースでは3着に入りました。内容はどのようにご覧になりましたか?

鹿:デムーロ騎手が強気な競馬をしてくれて、結果は負けましたが、本当に強い、良い競馬をしてくれました。もちろん上位の馬は強い馬ですし、それらにくっついて走ってこられただけでも、先々が楽しみになる競馬をしてくれたと思います。

鹿戸雄一

▲オークスでは上位2頭と差のない競馬で3着 素質の高さを証明

強気の姿勢でタイトルを獲りにいく秋

-:そこから一息入りましたが、この秋シーズンの予定というのはどのようにお考えになられていましたか?

鹿:やっぱり多少疲れもありましたし、秋華賞に行きたかったので、使うなら紫苑Sだと思っていました。ちょっと賞金もなかったので、そこに行ってみてどうなるか、というところでしたけど。

-:そして、紫苑Sに向けて調整される訳ですが、当日は420キロの馬体重での出走。馬の雰囲気など、先生がご覧になっていかがでしたか?

鹿:数字的にはそんなに体重が増えている訳ではないのですが、稽古の時から随分大きく見せていましたし、体調は良いと感じていました。

-:レース内容を振り返っていかがですか?

鹿:もちろんジョッキー(戸崎圭太騎手)と話して、チャンスだと思っていたので、強気な競馬をしてもらうようには頼んでいました。その通りに強い勝ち方をしてくれましたよね。

-:秋華賞までの中間の過ごし方を教えていただけますか?

鹿戸雄一

▲1週前はウッドで半マイルから古馬と併せて余力たっぷりの動き

鹿:すぐに(ノーザンファーム)天栄の方に戻して、向こうで調整してもらって、2週間前に戻して、今日(10/6)が初時計であと2本やって競馬という感じですね。

-:その初時計が今日の1週前追い切りでした。先生の出された指示、またご覧になっての感想はいかがですか?

鹿:あと2本できるので、いつも通り無理しないように。でも、ヤル気を出させるような稽古をしてもらおうと思って。

-:動きの評価はいかがですか?

鹿:良いと思いますよ。今日は先頭で行きましたが、後ろから馬が来た時にしっかり反応していましたし、余裕のある動きで良かったと思います。

-:あとは週末と来週ということですね。京都内回りの2000mというコースに対する適性はどうでしょう?

鹿:難しいコースだと思いますし、G1で相手も強い馬、良い馬が一杯出てきますので、そんな簡単じゃないですけど、あんまりゴチャゴチャした競馬にならなければ良いですね。

-:関西圏への輸送は初めてですけど、その辺りはいかがですか?

鹿:そんなに気にはしていないですよ。牧場と厩舎で何回も行ったり来たりしていますし、それよりちょっと長いだけなので。他の馬もそういう経験をしているので、気にしてもしょうがないところがありますからね。

-:現状、ビッシュの一番の強みというのはどの辺りになりますか?

鹿:やっぱり一生懸命に走るところですね。1回1回、頑張って走るので、それが強みと言えば強みですけどね。

あわよくば3頭出し?気になる伏兵もスタンバイ

-:続いてダイワドレッサー(牝3、美浦・鹿戸雄厩舎)についてお伺いしたいのですが、オークス(8着)から振り返っていただいて、この時の状態はいかがだったでしょうか?

鹿:ドレッサーも良い状態で送り出せたのですけどね。大外枠というのもあって、スタートでちょっとビックリして外に逃げて、後手後手になっちゃって。それでも最後は脚を使って来てくれたので、結果は8着でしたけれど、良い脚を見せてくれました。

-:その後はラジオNIKKEI賞(2着)に向かいましたが、その中間の状態というのはいかがでしたか?

鹿:短期放牧に出して、オークスで目一杯走っていた訳ではないですし、傷みもなかったので、この辺を行ってみようかと思いまして。競馬は上手な方なので福島でも対応できると判断して、そこを目標にしました。

-:牡馬相手に2着に好走しました。レース内容はどのようにご覧になりましたか?

鹿:良い競馬だったと思いますよ。競馬は上手だし、勝ちに行っての2着だったので、結果としては満足しています。

鹿戸雄一

▲オークスは8着も勝ち馬から0秒4差に健闘したダイワドレッサー

-:その後の過ごし方を教えて下さい。

鹿:山元トレセンの方に放牧に出しました。賞金も持っていますし、無理にトライアルを使ってアクシデントがあるのも嫌でしたので、じゃあ秋華賞1本で行こうと。それに合わせてちょっと早めに厩舎に入れて、稽古をドシドシやっています。

-:厩舎で乗り込みながら状態を上げていくという感じですね。今日の1週前追い切りの指示、評価をお願いできますか?

鹿:この馬も先頭で行きましたが、反応や動きはすごく良くて、体調もグンとアップしていると思います。

-:この馬も、京都の内回り2000mの適性はどうでしょうか?

鹿:けっこうレースが上手な方なので、ポカをする時もありますけど、京都の内回りでも対応できるとは思っています。

-:ダイワドレッサーの強みはどの辺りでしょうか?

鹿:やはり競馬が上手なところですかね。あんまりおかしなレースはしたことがないので、その辺が強みだと思います。

-:こちらは抽選対象となりますが、ネオヴェルザンディ(牝3、美浦・鹿戸雄厩舎)は前走、ビッシュの紫苑Sと同じ日にあった500万条件を勝利しました。レースをご覧になって、どう感じましたか?

鹿:上手くスタートを出られたので、ハナに行ってそのまま押し切りましたよね。ペースも遅かったから頑張れたのもありますけど、なかなか良い根性を出してくれて、最後まで抜かされなかった、というのは評価できると思います。

-:もし、今回出走できた時の見通しをお願いできますか?

鹿:この子も先行力がありますし、レースが上手な方なので、相手は強くなりますけど、どのくらい頑張ってくれるのか、という楽しみはあります。

-:ネオヴェルザンディの出走が叶えば3頭出しということになります。複数の管理馬を送り出されるということで、最後に秋華賞に向けて意気込みをお願いします。

鹿:やっぱりどの馬も勝ちたいですけど、まずは無事にレースに出すことが大切だと思っていますので、まずはそこを一生懸命やりたいと思います。

-:ありがとうございました!