関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

尾関知人調教師

尾関知人調教師


-:リーダーの役割ということで。ちなみに、先生は学生時代に部活のキャプテンをされたりしたことは?

尾:そういうのは全然無いですね。

-:リーダーとして、自分のここを強化していきたい、と思うところはありますか?

尾:表には出さないですけど、気持ちの浮き沈みが激しいので、そういうところの波を無くしていきたいですね。

-:気持ちの浮き沈みが激しいなんて、意外です。

尾:みんなが見ていないところでガクッとしています(笑)。だからスタッフだけではなくて、自分も高いモチベーションをキープ出来るようにしないといけないな、と思います。

-:なるほど。逆に、リーダーとして、思ったよりも出来たと思う点はありますか?例えば、思いのほか人の意見を聞くことが出来たな、とか。

尾:基本的に、人に対してガーッと言える人間でもないですし、厩務員をやっていた期間が短いので、現場の意見を聞くようにしていかないといけないな、と思っています。その方がスタッフのやる気も出るのかな、というところもありますし。

-:あまり先生の考えを押し付け過ぎるということではなく。

尾:そうですね。現状、ある程度の大枠を僕の意図したとおりにやってくれていますし、今でこそ厩舎制度改革といって、全ての厩舎が柔軟な対応を迫られていますけど、ウチの厩舎では制度改革に先んじて、みんな内容のある仕事を文句も言わずにやってくれていましたからね。そういう意味でも、現場の意見が出てくれば、それを聞いて取り入れていくという形にしたいと思っています。最近は更にもうちょっと進んで、こちらが悩んだときは聞くようにしていますよ。

-:先生の方からスタッフの方に意見を聞く、と。

尾:例えば助手に「この馬で併せ馬をやるなら、どこでやればいいかな?」というような感じで。その答えを参考にして決めていこう、と。

-:スタッフの皆さんも、意見を聞き入れてもらえたと思えばモチベーションも上がりますよね。

尾:そうだといいな、と思っています。

-:モチベーションが上がるといえば、厩舎のお引越しも大きく影響しませんか?今度の厩舎では、ミストなどの設備も整えられたということで。以前の厩舎にはミストは付いていなかったんですか?

尾:はい。

-:では、夏の過ごし方も大変だったんじゃないですか?

尾:いえ、2009年の夏はそれなりに暑かったですけど、2010年と比べれば全然でしたから、特に酷い夏バテをする馬もいませんでしたよ。2010年も、あの暑さの割りに体調を崩す馬はいませんでした。ミストは夏場だけではなくて、咳を予防するためにも年間通して使いますよ。ただ、引っ越ししてからなかなか勝てなかったので、設備投資の効果があったかどうかは、まだ判断出来ませんけどね(笑)。

-:結果はさておき、馬にとって住環境は良くなったな、と。



尾:そうですね。前扉も、顔を出せるようにしましたけど、ミストが出ているときに顔を出して気持ち良さそうにしているのを見ると、良かったなと思いますよ(笑)。

-:投資した甲斐があった、と(笑)。今度の厩舎は20馬房ですよね。

尾:そうですね。今までは10馬房、10馬房で2つに別れていましたけど、1箇所になって馬を管理しやすくなりましたね。仕事もやりやすいです。

-:仕事環境も充実されてきて、迎える2011年ですが、どのような年にしたいですか?

尾:2011年は中京開催の代わりに小倉開催になるので、番組的にはかなり厳しい一年なんですよ。だから本当にかなり頭を使っていかないといけないな、と思っています。2010年は最初の中京で2つくらい勝てましたけど、それが無いわけですから。

-:確かにそうですね。

尾:あと、2010年の2歳戦で勝ち上がったのが3頭ですね。他にも新馬で2、3着をしている馬もいて楽しみな世代ですし、他の世代にも頑張ってもらいたいですね。ユウセンも、少しでもクラシック戦線に近づけるように、もっと上を意識していかないと現実にはならないと思いますし、それに伴ってスタッフのモチベーションも技術も上げられれば、厩舎の底上げにもなると思っています。本当に、勝たせなければいけない馬がたくさんいるので、その結果が今後の厩舎の運営にも関わるな、という気持ちでいます。

-:厩舎の競争も激化していて、回転も速いですもんね。

尾:開業してまだ丸2年経っていませんけど、2世代下の調教師が開業していますし、3月には3世代下の調教師が開業するかもしれませんからね。2011年で開業3年目ですから、まだ地固めをしていきたいところですけど、そんな悠長なことは言っていられないですね。そういう現状ですし、競馬に限らずどの社会でもそういう流れになっていますから。

-:そうですね。

尾:我々も楽ではありませんけど、レースの賞金や手当が下がって、オーナーも大変だと思うんですよ。だから競馬の内容はもちろんですけど、改めて厩舎の経営を考えないといけないと思います、預託料もなるべく抑えないといけないし、調子の良い馬をきちんとレースに使えるようにするなど全体を把握して、厩舎全体のマネージメントが問われる年になると思います。

-:分かりました。厳しいご時勢ですけど、私も馬券を買って応援します。

尾:馬券を買うなら、ウチの厩舎の馬は良いですよ。4、5着ぐらいに来た馬がその次に勝ったりするケースが多いので、勝ち負けするときはそれほど人気がありませんから(笑)。単勝も良いですよ。

-:ああ、先生の厩舎は1着の回数と比べて2着がかなり少ないですよね。これは、効率が良いってことになりますよね。

尾:そう思っているんですけどね(笑)。勝ったレースは気持ち良くハマっていますよね。例えば、フラワーロックはそれなりに走る馬ですから、ここで権利を取って中2週で牝馬限定戦に行けば勝てるだろう、という計算通りでしたし、リズミカルステップやフリーソウルは、洋芝の方が絶対に良いだろうなと思って北海道に持っていった馬なので。

-:なるほど。

尾:(2010年の厩舎成績を見ながら)この数の中で、小野騎手と黛騎手といった、継続して乗ってくれている騎手で勝てたのは嬉しかったですね。正直、それほど積極的に乗せられるかというと、まだまだ僕もオーナーに強く言えるほどの成績は残していませんから。

-:先生としても、出来る限りチャンスを、と。

尾:やっぱり普段から良い攻め馬をしてくれていますからね。また、そういう定期的に乗ってくれるジョッキーだけではなくて、今回は新馬を使うにあたって、横山典さんや柴田善さんや蛯名さんに1週前追い切りに乗ってもらいましたけど、スタッフも僕も緊張感があるというか、ピリッとした感じがあったので、もうちょっと頼んでもいいかな、という気はしました。いろいろな方に協力してもらいながら、もう一ランク上のクラスを勝てるようにしていきたいですね。2009年は未勝利戦しか勝っていなかったので、2010年一発目が初めての500万勝ちだったんですよ。

-:じゃあこの後は1000万、1600万、オープンですね。飛び級も含めて、上のクラスでの活躍を楽しみにしています。

尾:ありがとうございます。達成できるように頑張ります。

-:お忙しい中、ありがとうございました。

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【尾関 知人】 Ozeki Tomohito

1971年熊本県出身。
08年に調教師免許を取得。
09年に厩舎開業。
JRA通算成績は22勝(11/1/5現在)
初出走:
09年3月 1日 2回中山2日3R ノボパガーレ(14着)
初勝利:
09年4月11日 3回中山5日5R ノボパガーレ


「NO HORSE, NO LIFE !」のキャッチフレーズと共に2009年厩舎開業。開業初年は7勝、2年目の2010年には15勝をあげ、着実に成績を伸ばしている。また中央だけではなく、地方競馬へも積極的に管理馬を出走させている。厩舎キャッチフレーズである「NO HORSE, NO LIFE !」をタイトルにしたブログ(http://ozeking.com/)も公開している。