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池江 泰寿調教師

池江 泰寿調教師


デビュー戦、続くいちょうSと芝で連勝したものの、一旦は低迷。しかし、ダート路線に矛先を向けた後は条件を問わずして、13戦して掲示板外なしという抜群の安定感を身につけた。いよいよGⅠへと辿りついた格好だが、この挑戦を池江泰寿調教師はどう捉えているのか。聞けば聞くほどダノンカモンの走りに興味がつきない。

-:大変お忙しいなか、ありがとうございます。早速ですが、芝路線でデビューしたダノンカモンの当時の印象から振り返ってください。

池:連勝した2戦ともに芝のマイルで切れ味がある走りをしてくれました。クラシック路線に乗せようというよりも、1600~2000mくらいに適性があると見ていました。

-:その後はご苦労もあったかと思いますが、ダートを使った途端にレースぶりが一変しました。予感というか、可能性は感じていたのでしょうか。

池:シンボリクリスエス産駒ですからね。能力が高かったですし、合う番組が芝でしたので、あのような使い方でしたが、ダートにも適性があるであろうことは分かっていました。

-:まさにそのとおりというか、現在はダートで安定した走りを続けているわけですが、それでも本気で走っていない印象すらあります。前走の根岸Sも負けて強しの競馬でしたが、何か普段の調教で取り入れている工夫などはありますか。

池:この馬はソラを使うところがあるので、稽古でも常に先頭を歩かせています。解消できれば、もうひとつ上のレベルのパフォーマンスができるでしょうから。

-:東京のダートコースは6戦ですか。重賞でも2度の②着と安定した走り見せていますが、このフェブラリーSを見据えて番組を選んできたという部分は…。

池:正直なところありません。基本的に馬優先というか、逆算してのローテはなるべく組まないようにしていますので。ドリームジャーニーのように賞金を持っている馬は好きなステップレースを使えるので別ですが、重賞勝ちがない馬は除外の可能性があるので、目の前の一戦が重要です。ダノンカモンの場合、根岸Sの②着で賞金が加算できたので、辿り着いた場所にフェブラリーSがあったということ。むしろ上半期の目標は根岸Sと位置づけていたくらいです。

-:そうでしたか。そのような苦労がありながらも、凄くコンスタントに使えている丈夫な馬という印象です。

池:今はそうですね。若いときは不安定な部分もありましたけれど、うまくリフレッシュ放牧を混ぜながら固まってきました。やっぱりダートは脚元に負担もかからないので。

-:500キロを超える大型馬ですが、馬体重の変動も多いように感じます。意図的に増やす、また絞る時期というパターンはあるのでしょうか。

池:増やすということはありません。どちらかというと太りやすいタイプなので普段から気をつけて馬体重をコントロールしているのですが、それでも太かった時は次走に向けてさらに考えて調整しています。この馬は、ほっておけば550~560キロにまでなってしまいますからね。

-:走れる体というか理想の馬体重はどのくらいという目安はありますか。

池:520キロ台ではないでしょうか。2走前が立派すぎたので、調整した根岸Sは丁度いい体だったと思います。



-:目標でもあったという根岸Sですが、競馬を見る限り1ハロン伸びたマイルのほうが競馬もしやすいのではという印象を受けたのですが…。

池:マイルはいいですよ。ただ、相手もあっての競馬ですから、単に適性があるからと勝てる訳ではありません。“GⅠで勝ち負けします”と今のレベルでは強気になれませんし、根岸Sを目標にしたのは1400のGⅢと1600のGⅠでどちらが勝てる可能性が高いのか?という計算の元です。それを経て、うまく賞金が加算できました、中2週で疲れもないので向かいましょう、ということですね。賞金がない馬はやっぱりそうですよ。逆算していたら、フェブラリーSを使えていたかどうかもわかりません。

-:相手のレベルに合わせて走れる安定感があるダノンカモンですが、成長の曲線的にはどうなのでしょうか。

池:もう少し良くなる要素は残っています。ただ、あまり先のことは考えすぎず、目の前の一戦に集中したいと思っています。状態自体は凄くいいですよ。前走使った後もパワーがついてきたなという印象ですから。疲れていると感じたら、GⅠだからと無理に使うようなことはしませんし。このレベルでどこまで通用するかという楽しみはあります。

-:理想とする枠順や、こうなってほしくないという展開などはありますか。

池:割りと器用なところがあるので、特にありません。自分で動けるタイプなので、遅ければ前に行ったらいいし、早ければ控えてもいいし。そういった部分の注文はない馬ですよ。

-:今回はGⅠでリスポリ騎手が手綱をとる形ですが、任せることに対しての思惑や考えなどはありますか。

池:チャンスを求めている騎手に、こちらのチャンスも高めてもらえればと思います。彼らにできることは、乗せてあげることしかありませんしね。

-:フェブラリーSでファンの皆さんがダノンカモンを見る上で、注意して見たほうがいいという部分はありますか。

池:僕たちなりに精一杯の状態で送りだしますので、そこは皆さんの感覚で見ていただければと思います。同時にレースが盛り上がってくれれば何よりです。

-:新たに転厩馬が加わるお忙しい時期にありがとうございました。

池:本当に“ウチの厩舎に預けたい”と言ってくださる馬主さんには感謝しています。忙しいのは有難いことですし、気兼ねなく声をかけてください。




【池江 泰寿】Yasutoshi Ikee

1969年滋賀県出身。
2003年に調教師免許を取得。
2004年に厩舎開業。
JRA通算成績は233勝(11/2/13現在)
【初出走で初勝利】
2004年3月20日1回阪神7日目5Rソニックサーパス(1着/14頭)


■最近の主な重賞勝利
・11年 アメリカJCC
・10年 アルゼンチン共和国杯
(共にトーセンジョーダン号)
・09年 有馬記念
・09年 宝塚記念
(共にドリームジャーニー号)


惜しまれつつ定年を迎える池江泰郎調教師を父に持ち、武豊騎手とは同級生であり幼馴染でもある。開業3年目の06年にドリームジャーニー号で朝日杯FSを制しGⅠ初制覇。同年に最高勝率調教師賞を受賞し、さらに08年には最多勝利調教師賞も受賞。多数の名だたるオープン馬を育て上げ、もはや知らぬ者などいない誰もが認めるトップ調教師の一人。