G1仕様で2強に迫るアロマティコ
2012/10/8(月)
佐々木晶三調教師
その点、アロマティコも前走のムーンライトHはやっぱりトライアルと捉えて乗って欲しかった訳よ。悪くて中団ぐらいから行ってね。ジェンティルドンナはオークスなんか真ん中よりちょっと後ろやろ？それがトライアルなのよ。負けたって良いんだよ。だから、俺は悔しい。しかも(ムーンライトHのメンバーなら)ウチの馬の方が上だと思っていたから。
－：さすがに相手(ジェンティルドンナ)は強いと思います……。
晶：強過ぎる。だって今年のダービーに出走していたら勝ってるで、ジェンティルドンナは。距離を不安視して、ちょっとでも弱い相手ということでオークスになったけど、時計を見てもそうだし、あのレース内容はダービーに出ていたら勝っているでしょ。
－：それぐらいの器の馬ですか。
晶：ディープインパクトだよ、あれは。本当に女のディープインパクト。そして、アロマティコはインティライミだ。その時のダービーの再現になったら良いよね。この間勝っていたら、ジェンティルドンナとヴィルシーナの間に入れると思った訳よ。俺はヴィルシーナの欠点を良く知っているから。多分哲ちゃんも知っているけど、こうやったら負かせる秘策もある訳よ。
－：ヴィルシーナならば、小細工しようがあるということですね。
晶：小細工しようがあるねん。ジェンティルドンナは欠点がない訳よ、どうあれ。ということはディープが勝ったダービーによく似ている。あの時は一発！奇襲作戦をして、あと1ハロンでユタカちゃんが横を見て「ハイ、終わり」って。きっちり5馬身離されて、俺は預言者やとよく言ってたんやけど。ジェンティルは強いけれど、なんとかあがきたいねえ。
－：三冠に手がかかっているジェンティルドンナは同世代の牝馬とは思えないですね。
晶：思えないなあ。ブエナビスタより強いわ、あれは。ビックリするくらいだわ。そうそう、(厩舎の地区的に)近所におるね。冗談抜きで強いわ。
－：そういう意味では、アロマティコの母系の一族に乗り慣れた佐藤哲三騎手に戻ることは心強いですね。
アンデスレディーは母として有名ですが、お母さんのナスカにファンはあまりイメージがないかもしれないので、どういう馬だったのでしょうか？
晶：未出走だったからね。やっぱりサンデーサイレンスの子で綺麗な馬だったよ。哲ちゃんも、その一族だし、重賞を頼まれたのに、断って京都の新馬戦に残ろうとしてくれたんだ。それでも、調教で骨盤が折れてしまってね。お母さんの分まで走らせてあげたいという思い入れは強いわな、こちらとしてはね。
－：ああいう切れを見たら、アンデスレディーじゃなくてサンデーが入っている感じがしますね。
晶：そう、アロマティコのイメージはサンデーだよね。どちらかと言えば、気性もサンデーだし、扱いやすさはキンカメかなという感じやな。
－：なかなかおもしろい血統ですね。
晶：そう！おもしろ過ぎる血統。
－：佐々木晶三厩舎からちゃんとラインを継承しつつ、こういう馬が出てきましたね。
晶：絶対走ると思ったからね。綺麗な馬だしね。
－：見るからに軽さがありますね。
晶：2歳の時はカイバの食いが悪かったりで、体を細くしていたけど、今はドッシリしてきているからね。パワーアップしているしね。
－：馬を見るとインティライミとアロマティコでは全然違いますね。
晶：全然違うよ。サンバレンティン(父スペシャルウィーク)とも違うし、オーバーザウォール(父ドクターデヴィアス)とも違う。独特のタイプやな。
－：それはキンカメが出ているのですか？
晶：キンカメが出ているのかなあ。どうなんだろうねえ。サンデーではないしね、キンカメかもしれないね。
－：レース内容を見ると、サンデーの瞬発力を確実に持っていますね。
晶：持っている。持っている。何と言っても距離が持つのが一番良いよね。
G1仕様で2強に割って入る！
－：アロマティコの適性距離ですが、秋華賞を終えて、古馬牝馬になってからの可能性としてはいかがですか？
晶：2200ｍまでは大丈夫でしょう。へたをしたら2400ｍも大丈夫かもしれない。古馬になれば。
－：厩舎にとって、相性の良い宝塚記念にも行けるかもしれないですね？
晶：行けるかもしれないなあ。アーネストリーの後継馬で……。最初、1400ｍを使っていたのだけど、あんまり番組もなかったけどね。それで、哲ちゃんがちょっとづつ距離を延ばして、2000ｍでも将来を考えて乗っていたから、ああいう良い競馬になったのでしょう。
－：それは簡単なように見えても、最初は1400ｍのコーナー2つの競馬をしていて、いきなりコーナーが4つになると戸惑うと思いますが。
晶：戸惑うけどね。それをそういう風に考えながらやってくれていたからね。取りあえず未勝利を勝たさないといけなかったから、距離が合わないけど無理くりやっていたけどね。それでも我慢していたから。
－：小倉戦やムーンライトHを見ているとギリギリ秋華賞に間に合った馬ではないと思います。
晶：そうじゃないね。3勝して確定していて、早くから出られたから。
－：出られる出られないの次元でもなく、3歳牝馬のオープンの中に入っても、やれそうな期待感がある馬ですね。
晶：取りあえず1000万を勝たしておこうかと、西海賞を狙っていったんだけど、ことのほか相手が例年になく強かったんでビックリしたんだけど、あっさり横綱相撲で勝っているからね。
－：調教に関してですが、昨日(10/4)1週前追い切りを坂路(54.1－13.0)でやられましたが、なぜか馬場コンディションが重くて、だいたいの馬が54秒を切れない、終い13秒を切れないという中で、アロマティコは標準的な時計で上がってきたのですが、実質、どういうオーダーを出して、あの時計になったのですか？
晶：馬なり。G1だから体が減っても良いから。G1仕様にしないといけないからね。
－：ということは来週はもうちょっとやるということですか？
晶：終いだけやる。また、月曜日にやるよ。休み前にね。なんぼ出るか知らないけど。55～6、7ぐらいが良いけど、もうちょっと出るかもしれないしね。具合が良いから。
－：終いだけ12秒ぐらいの速い時計ですか？
晶：まあ、そこまではやらないけどな。
－：反応を確かめる程度と。
晶：そうそう。反応が良いのは分かっているから、息保たせ。ただただ、G1仕様にしなきゃ。生半可じゃ通用するメンバーとちゃうもん。ビチッと。キッチリやって、直前はラストだけビチッとやって。
－：ムーンライトHの体重から換算すると減るということですか？
晶：4キロぐらい減るかもしれないね。前が460の458で2キロ減やろ。今回4キロ減って454でギリギリというところやろな。
－：それぐらいにしておかないと太刀打ちできないということですね。
晶：できないね。減る分には俺は全然気にしていないねん。大丈夫だと思う。
－：じゃあ挑戦者の気持ちで臨むと。
晶：だから前走勝っていたらもっと楽しかったんだろうけどね。もう負けちゃっているもんだから。重賞でああいう競馬なら楽しみも出るんだろうけど、ムーンライトHは1600万でしかも51キロという勝って下さいのハンデだから、それで取りこぼしているからさ。
－：しかも内容が秋華賞に繋がる乗り方ではなかったですからね？
晶：そう。勝って行くのとでは気分的に違うからね。やっぱりG1でお祭りだから、ある程度は印が欲しい訳よ。それを一般の人が見ると「1600万で51キロのハンデで3着。いらんわ」となる訳よ。
■｢G1仕様にしなきゃ。生半可じゃ通用するメンバーとちゃうもん。ビチッと｣
－：僕ら馬券を買うほうからしたら、勝たれているよりも人気を落とすぶん、オイシイ馬かもしれないですよね。
晶：うん、オイシイ馬かもしれないけど、厩舎サイドとすれば勝って、ある程度人気をもらうのと1600万の51キロのハンデで取りこぼしていくのとでは、だいぶん雰囲気が違うわな。
－：そういう意味ではムーンライトHも哲三ジョッキーに乗ってもらいたかったですね。
晶：51やから乗れないけどね。誰が乗るということより、普通に乗って欲しかったなと。ただ、普通にね。
－：ムーンライトHは、なぜあそこまで下げ過ぎたかということは聞かれましたか。
晶：いや、聞かない。まあ、本番の秋華賞はジェンティルドンナとヴィルシーナの戦いだから、その間に夏の上昇勢力として出たいという思惑があったかもしれない。それは勘ぐりだから何とも言えない。
－：先生としてはそこに割って入りたかった訳ですね。
晶：そうそう。俺はその間に入りたかったからなあ。
－：あとはアロマティコの能力に期待ですね。
晶：｢次は？｣ってなるやん。でも次はG1だから。半端でないんだから。1600万だったら、｢次は？｣ってなるよ。
－：G3、G2、G1と3ランク上がる訳ですからね。
晶：そうそう。しかも下手したら世界的名馬かもしれないよ、ジェンティルドンナは。体重も増えているし、あくまでもトライアルで、トライアルの体で、トライアルのレースをして、キッチリ勝つというのは世界的名馬になるかもしれない。本当に。
－：そんなジェンティルドンナにアロマティコで一矢報いてください。ありがとうございました。
(取材・写真)高橋章夫
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■最近の主な重賞勝利 |
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騎手としては桜花賞などを制し通算137勝。94年に厩舎を開業させると、タップダンスシチー(ジャパンカップなど)、インティライミ(重賞3勝)などを大舞台へ送り込み、昨年はアーネストリーで宝塚記念を制覇。 オープンで雄弁な人柄は競馬ファンもしるところだが、コンスタントにオープン馬を輩出。調教師としての腕も確かなものをみせている。 |
