関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

野中賢二調教師

野中賢二調教師

芝のマイル戦でデビューし、その後のローテは試行錯誤の繰り返し。しかし、実績を辿れば、今回出走する根岸Sと同じダート1400mで4勝しており、適性がどこにあるのかは言わずもがな。2歳時から高い素質を買われながら、ようやく昨秋に本格化したエーシンウェズンだが、陣営としての苦悩も少なくなかったはずだ。今回は競馬ラボ初登場となる野中賢二調教師に、ここまでのプロセスとこの先の期待を語っていただいた。

フェブラリーSに向けて勝ちたい根岸S

-:根岸ステークスに向けてエーシンウェズンについて、よろしくお願いします。前走のカペラステークスはちょっと詰まり気味の競馬でした。

野中賢二調教師:この馬はゲートというところにもともと課題があったんです。休み明けで東京の1400(霜月ステークス)を勝った時は大外枠で、一番、最後入れに救われたという部分がありました。

-:あの時もゲートの出はあんまり速くなかったですけれど、大外枠だったにもかかわらず、向正面であんまり行く馬がいなかったから隊列が絞れたんですよね。

野:一番大外から良い入り方ができて、ロスなく回ってこれたし。ゲートだけやね。カペラSの中山の1200mダートというのは、ああいうパターンになるから、どうしてもゲートで立ち遅れた分が出てしまいますよね。

-:ただ、救われたのは勝ち時計がそんなに速くなかったので、あれでもっと速い流れになっていたら、1200のスペシャリストの方が来ていたかも知れないです。

野:スタートをシッカリ決めた上であれば、1200でも戦えるのかな、という感じ。思っていた通り、ちょっと立ち遅れ気味に行ってましたが、エンジンが掛かるのは遅いからね。スピードに乗ってからは、そのスピードの持続はできるのだけれど、そこに行くまでに時間差があるから。確認しながら伸びてくるというのはあの馬にはキツくて、4コーナーではある程度、トップスピードに入る準備をしてコーナーを回ってこないと。

坂を利用したらスゴい脚を使うんだろうけれど、やっぱり立ち遅れて、包まれて動けない分、道中もずっとこうなっているから、それにしては良く伸びているんだけれどね。枠が外とかで、上手く4コーナーを回って来れたら、また違うかなというのはあります。




-:特に霜月Sの時は追い出しを待つ余裕がありましたからね。

野:今回は舞台が東京の1400というところは、この前の中山の1200よりは競馬をしやすいと思うし、この辺で頑張ってくれないとフェブラリーSに行きたいとは言ってられないし、勝たないと行けないだろうから。まあ、前々走の内容を見れば、骨折明けの休み明けで、あれだけ強い競馬をするということは楽しみは楽しみですけどね。

-:この馬はそんなにバッチリとしたスタートではないじゃないですか。他のハナに行ったりする先行馬より遅れ気味になるから、そんなにバッチリとしたスタートは見たことがないというか。

野:新馬のときぐらいかな(笑)。

-:そこまで遡りますか?

野:ええ。

理想の馬体重と馬場状態

-:これまで24戦した訳ですけれど、1番人気が14戦。勝った数の倍以上、1番人気になっているというのは、それだけ可能性に多くの人が期待していると思うんです。

野:あちこちが弱くて、やっとある程度、思った通り。まあ、ここまで無事に来てくれた思いです。

-:冬場で色々、体重に変動がある時期なんですけれど、今の体重に関して教えていただいてよろしいですか。

野:多分、10キロぐらい重いんじゃないかな。でも結構、コイツは東京とか行くと、ガクッと減っちゃうから。この前もマイナスかなと思ったら、プラス4キロぐらいで、逆にちょうど良かった。走らない時というのは10キロぐらい減っちゃうんだよね。結構、ノンビリしているようで、神経質で、内面でもっちゃうから。向こうに行くとテンションが高かったりするから、ちょっと余裕のある作りにしておいた方が良いのは良いんだけどね。

-:輸送は結構、気を使うタイプの馬ですか。

野:ええ、ゲートもそうだし。普段はすごいおとなしくて、人が促さないと歩かないぐらいだけれど、やっぱりそういう繊細なところが、サラブレッドだしね。この馬に関してはソッチ方面が神経質だから。

-:トレセンのテンションと競馬場のテンションは競走馬にとって、全然違いますからね。あとは距離は、ここを順調にいけたら、フェブラリーSというプランがあると思うんですけれど、レース後に骨折していたオアシスSは除外できるとして、府中の1600は乗り方一つで何とかなると。

野:うん、そこだけだね。ただ、乗り方一つだね。

-:フェブラリーSに向かうためには今回の根岸Sは結構、良いコンディションで出せると。

野:もう、ココにシッカリ出さないとG1に出れない訳だから、シッカリと勝てる作りにしていかないとアカンしね。



-:色んな展開は経験してきている馬なんですけれど、前走のカペラSは距離が1ハロン短いて、差しの展開だったじゃないですか?今まで見てきたら、もうちょっとゆっくりしたペースの方がこの馬には合うのかなと思ったんです。逆に速い方が良さが出る気もしますが。

野:そうやね、逆にね。う~ん……。

-:良い脚があるんですよ。しかも1200でしたからね。あとは馬場コンディション。パサパサより若干、湿っている方がいいのかと。芝もこれだけ走っている馬ですから。まあ、芝、ダート兼用なんでしょうか。

野:競馬はしやすいかもしれないね。

-:先生が一番、自信を持てる馬場状態というのは稍重ぐらいですか?

野:そうやねえ、強い勝ち方するもんな。時計に対応できるからね。

-:速くなればなるほど他が苦にしますから。

野:この時期はすぐに馬場が悪くなるからね。

-:でも、悩ましいのは先週の3日間開催の初日のダートは速かったんですよ。しかも1レースからずっと速かったんです。1日明けるじゃないですか。日曜日になると序盤から相当、遅くなるんですよ。観ている側からすれば訳が分からないんですよ。何でそんなに時計が変わるのか。

野:何やろな。不凍液かな。不凍剤が入って、パサパサになるんじゃないかな。

-:それでそんなに変わるというのはエーシンウェズンにとっては、あんまり寒い状況になって、不凍剤を撒かれるよりはいいのかなと。ファンは気温も見ておいた方が良いですね。

野:うん、そうだね。

野中賢二調教師インタビュー(後半)
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【野中 賢二】Kenji Nonaka

1965年生まれ 福岡県出身。
2007年に調教師免許を取得。
2008年に厩舎開業。
JRA通算成績は96勝(13/1/20現在)
初出走:
2008年3月1日 1回阪神1日目9R トウカイフラッグ
初勝利:
2008年3月15日 1回阪神5日8R トウカイインパクト(1着/16頭)


最近の主な重賞勝利
・12年 ステイヤーズS(トウカイトリック号)
・12年 愛知杯(エーシンメンフィス号)


厩務員をやっていた父の影響で10歳から乗馬を始める。昭和57年10月から藤岡範士厩舎に入り、厩務員から助手へと転身し、その後は厩舎を開業するまで所属。

藤岡範師を「父であり人生の師匠」と尊敬しており、番頭を任される中でタフネススター(カブトヤマ記念を勝利)などを育て上げた。当時の雰囲気を自厩舎で継承しつつ、目標でありライバルとしては「昔から一緒に馬乗りをやっていて、お互いやろうとしていることが分かる。スタッフを揃えて技術を上げていって、ああいう風にやっていきたいというのはある」と、藤原英昭師の名を挙げる。馬に対して「生きてきたそのまんま。本当に感謝しかない」と語るそのポリシーは、11歳にして平地で競走生活を続けるトウカイトリックの育て方に相通じるものがある。