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池江泰寿調教師

池江泰寿調教師


-:よろしくお願いします。本日はドリームジャーニーについてお伺いします。前走の結果については、どう受け止められましたか?

池:こちらこそ、よろしくお願いします。前走は、やっぱり左回りのため内にモタれて、直線でいつものいい脚が使えませんでした。

-:その点、今回の有馬記念は条件がプラスになるという事で?

池:そうですね。右回りというのはいいし、小回りもいいので。条件的には、今回の方がだいぶイイと思います。

-:去年の有馬記念では④着でしたね。その時と比較するとどうでしょうか?



池:状態もいいですし、馬のレベルも1ランクくらい上がっているので、去年よりも自信というのはありますよね。

-:ローテーションも違いますものね。

池:そう。ローテーションも違いますし、状態そのものが、今回は本当にいいんです。去年も悪くはなかったんですが、ちょっとピークを過ぎている感じもしたので…。

-:今回のローテーションというのは、天皇賞以前から決めていたんでしょうか?

池:香港カップと両睨みだったんですけれど、天皇賞のデキがもうひとつだったので…。 これで香港となると、有馬記念より2週間早くて、飛行機での輸送や検疫もありますし、中途半端なデキになるかなと。有馬記念だったら十分間隔があるので、いい状態にできる自信はありました。

-:池江先生が、以前、ステイゴールドを担当されていた事を考えると、香港という選択肢もあるのかと思いました。

池:ステイゴールドは使いつつ調子を上げてゆくタイプですけれど、ジャーニーは割と全力投球するタイプなので。中5~7週は空けないと、万全の状態にできないというのもありますし、あの頃と香港は芝の質も違いますからね。

-:どうゆう風に変わったんでしょうか?

池:重くなりましたね。日本の馬が沢山勝つからでしょうか?どちらかというと、ヨーロッパ向きの馬場ですよね。本当にそういう考え(日本の馬に勝たせたくない)があるのかはわからないですけど、そのような傾向になっている事もわかっていましたから。

-:今年の有馬記念は、どんな結果になるか、想像し難いメンバー構成ですね。

池:僕らとしても、展開予想は立てにくいですね。色々なケースが考えられますし、展開は難解です。その点、ウチの場合は臨機応変というか、ゲートが開いてどのポジションにいるべきかはジョッキーがわかっていますからね。昔のジャーニーだったら、折り合いがつかなくて、ゲート出たなりの位置で競馬するしかできなかったと思いますが、今は逃げや先行はないにしても、謙一(池添騎手)が色々と教え込んでくれたお陰で、状況に応じた競馬はできますからね。

-:今年は宝塚記念で2歳以来のGⅠ制覇となりましたが、戦前の様子はどうだったんでしょうか?

池:不安はありませんでした。状態もすごく良くて、飼い葉もよく食べてくれていて。

-:そう考えると、息の長い活躍をしていますよね。

池:一回使ったら、グリーンウッドに放牧に出して、ストレスを溜めないように間隔を空けています。トレセンに置いてダラダラしていたら、ここまでの馬になっていなかったでしょう。やっぱり、この馬は、ウチの厩舎だけじゃなくて、グリーンウッドと連携がとれている事も大きいですね。

-:リフレッシュ放牧明けと、トレセンに残っている場合とでの大きな違いはどのようなところでしょうか?

池:ボロが違います。こっち(トレセン)にいる馬の90%はカイバにえん麦が残っているんですけれど、それが、(放牧に出ている)牧場にいる場合は(えん麦が)入っていないんです。トレセンにいるとストレスがかかって、消化不良を起こしている場合も多いんですけどね。

-:どんな展開になるかわかりませんが、有馬記念は期待できますね。

池:どんなポジションになるか、わかりませんが、それは謙一が直感で決めるでしょうからね。どこかで外に出してトップギアに入れれば、十分チャンスはあると思っています。

-:池添騎手が騎乗した頃から成績が上がっているのは、彼とは追い出しのタイミングなどが合うのでしょうか?

池:いや、彼自身が色々教え込んだんです。小倉記念の時は、3コーナーからジワっと進出させたりして。今までそんな事はできませんでしたから。3,200mの天皇賞でも距離を我慢させてくれました。

-:池添騎手を主戦として選んだ理由というのは?

池:当たりが柔らかいというところですね。結果的に彼とのコンビ選択は大正解でした。




~~~池江泰寿調教師が選ぶベスト・オブ・有馬記念~~~


-:先生の思い出の有馬記念というと、いつのレースになりますか?

池:やっぱり、オグリキャップですね。かなり追い込まれていたと思うんですよ。馬もそうですけれども、伯父さん(父・池江泰郎調教師の兄、池江敏郎厩務員)も。引退レースで勝って、本当に嬉しそうでした。その後、すぐにオグリを見せてもらってトモの筋肉を触ったんですけれど、なんていうのかな…。赤ん坊のような筋肉だったんですよね。「GⅠで激走した馬が、こんな筋肉!?コレは違うな」と。

-:血統を超越したものがあったのでしょうか?戦前、もうオグリは終わっているというムードでした。

池:あったんでしょうね。突然変異と言えるでしょうし。さらに、ラストランの有馬記念で見事に復活ですから!感動的なレースでした。

-:あれは、秘策としては、うまく手前を替えたことでしょうか?

池:(武)ユタカ君ですよね。見事に。

-:オグリはどっちの手前が好きだったんですか?

池:オグリはずーっと右手前のまま走る馬でしたから。右手前が好きだったんでしょうね。それで直線まで来たら、伸びないです。そこで手前を変えないと!当時、デキは良かったと言っていましたよ。あのレースは、有馬記念に限定しなくても、一番記憶に残るレースじゃないですかねぇ。

-:誰もが記憶に残るレースでした。

池:大川慶次郎さんくらいだったかな?(笑)「ライアン!ライアン!」って。実況の人も「右手を挙げた武豊!」って、本当は反対の手でしたよね。それだけみんな興奮していたんですよね。




~~~グランプリ・有馬記念。そして、来年へ向けて~~~

-:年始に向けての注目馬がいたら教えてください。

池:ひょっとしたら、トーセンジョーダンは中山金杯に使うかもしれません。こんな馬じゃないぞというところをみせたいんです。ハッキリとは決めていないですけれど…。

-:この間(中日新聞杯)のレースは、位置取りがちょっと意外でしたね。

池:意外どころか、想像すらしませんでしたよ。中京開幕週の初日ですからね(苦笑)。スミヨンも直前で失格になって、動揺していたのか?あまりトーセンジョーダンとは合わなかったのか?オリビエ(ペリエ)みたいな競馬をしていたらね、違っていたと思うけれども。ジョーダンっていうのは、自転車みたいなところあるんですよ。ポンっとゲート出て、そのままならそのままですよ。グッグッグと押していったら、2~3番手に行けますから。

-:漕がないダメだと?

池:スミヨンを休み明けでも乗せたのが失敗でした。休み明けと、叩いた後だったらガラっと変わる馬なのに、休み明けを乗せたから、馬を信用してしないんですよね。追い切りも乗せたけど動かないから「この馬はこんなものか」と。

-:良くない先入観を与えてしまったと?

池:そうですね。「ソラを使った」って言ってましたけど、ホープフルSなんかグングン引き離していった位で、ソラなんか使っていませんから。とにかく、休み明けは走らないんですよ。

-:そういう意味で、馬と人とのコミュニケーションは、重要ですか?

池:むちゃくちゃ重要ですよ。ジャーニーなんか、謙一は12戦も乗ってますからね。強いジャーニーを知ってるけれど、弱いときも知っている。その信頼関係ですよ。テン乗りというのは、リスクありますからね。そして、謙一はこの馬に対する思いが強いですよ。

-:自分が馬を造ったというところから思い入れはくるものでしょうか?

池:僕らもそう思ってますし、この馬の母のオリエンタルアートにも謙一は乗っていましたからね。僕らホースマンというのは、馴染みの血統に思い入れが強くなってしまうんですよ。僕は特に「血」を育てていくということが好きですから。勿論、セリの高馬をやらせてもらう事も名誉なことだけれども、お父さんも知ってる、お母さんも、おじいちゃんも、兄弟も知っている…。そういった馬たちを牧場に送り返して、またその子孫を反映させていく。謙一のお父さんだって、ジョッキー出身の調教師ですからね。馬の思いも、スタッフの思いも感じ取って、なんとかしなきゃと思っているのが伝わります。

-:最後に有馬記念でドリームジャーニーを応援するファンの方々に、一言、お願いします。

池:ファン投票4位に選んでいただいて、光栄ですし、支持してくれたファンの皆様の期待に応えられるようなレースをおみせできると思いますので、是非、有馬記念は中山競馬場まで足を運んで頂いて、観戦して頂けたらと思います。

-:有馬記念の雰囲気っていいですよね?

池:そうですね(笑)。照明もついたり、1~2コーナーの方に西日が差して「ちょっと観にくいぞ」みたいなところもあって。そわそわした雰囲気がなんともいえないですね。

-:本日はありがとうございました。

池:ありがとうございました。




池江 泰寿

1969年滋賀県出身。
2003年に調教師免許を取得。
2004年に厩舎開業。
JRA通算成績は184勝(09/12/17現在)
【初出走で初勝利】
2004年3月20日1回阪神7日目5Rソニックサーパス(1着/14頭)


■最近の主な重賞勝利
・09年宝塚記念、大阪杯 (共にドリームジャーニー号)
・09年プロキオンS (ランザローテ号)
・09年アンタレスS (共にウォータクティクス号)
■最近の表彰歴
・08年最多勝利調教師賞 ・優秀調教師賞(関西) 1位 ・'08JRA賞(最多勝利調教師)


父に名伯楽・池江泰郎調教師、伯父にオグリキャップを担当していた池江敏郎元厩務員を持つ競馬一家に生まれる。調教助手時代には、ステイゴールドや、トゥザヴィクトリーらを担当。調教師になってからも、数々のタイトルを獲得。今や競馬界を代表するトレーナーの一人である。