関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

安田翔伍調教助手


マイルで結果を出すための工夫

-:道中のラップについてお聞きしたいんですけれど、スプリント戦からマイル戦に変わると、やっぱりテンの3ハロンでも若干遅くなると思います。その時に対応できそうな手応えはありますか?

安田翔伍調教助手:あります。マイルの流れにカナロアのリズムで、かつ周りの流れに合った中で、カナロアがリズムを崩さずに競馬を出来る対応力があることは、岩田さんも含めて確信はしています。あとは距離が伸びることで、適性でどれだけ1200と同じような脚が使えるかどうかとか、やっぱり行ってみないと分からない部分はありますが……。

-:カナロアだったら1200をずっと使っていれば、馬は1200を走っているという理解があると思うんですよ。

翔:それも踏まえて、この中間はちょっと競馬に向かうまでのカナロアの気持ちを含めて、そこはちょっと工夫しながら。今までは1200に対応できるように調整してきたつもりなんで。

-:どういう工夫をしたのか、それをちょっと教えていただければ。企業秘密に触れない程度で教えていただけませんか?

翔:企業秘密という程じゃないんですけれど、簡単に言えば、競馬で走りたい気持ちを爆発させるというのを逆算して、スプリント戦は前哨戦も踏まえてやってきました。前哨戦を使って、次は本番だということで、走りたい気持ちをストレスも含めて、実際に競馬で爆発させた結果、スプリント戦では良い方に出ているというのも感じています。ただ、今回は最初に馬を作りきって、今でも競馬ができるぐらいの状態なんですが、ココからは気持ちを切らさない程度に走る体を準備して、レースに挑ませます。

ボケさせるという表現でもないんですけれど、競馬に対して走りたい気持ちを爆発させない程度に、いつでもあれだけの馬だから合図を出せば動けるというのは分かっているので、動くまでがどれだけ1600の流れに対応できるかというのを考えて。まあ、香港とは逆ですよね。今は先に体を作って、後は気持ちが入り過ぎないように。


-:例えば、レースで言えば1000mぐらい行った時に?

翔:僕らの感触で行けば、そこまでズブさというか、あの馬としてのごまかしというのが出せるのが、どのポジションになるのか分からないですけれど、その時点での今までのスプリントでの最初の3ハロンでの競馬の仕方が変わってるので。どちらかと言えば、“ケンカして、ケンカして、爆発させる”というのがスプリントだったのが、今回はいかに最初の2~3ハロンをごまかすことによって、ということなんですけれどね。それができる馬だと思いますしね。

-:今まで通りのテンの3ハロンの入りだと持たない可能性が?

翔:距離に関してはそんなに不安はないんですけれど、今までの入りだと絶対に逃げちゃうと思うんですよね。普通にゲートを出ても、1~2歩目は他の馬よりも出ちゃうと思うんで。逃げた時にそこまで集中力が持たないと思うんでね、初めての舞台で。いかに競馬の中に入れるかと言われた時に、今までの調整で最初の1ハロンを1200のように出た時に、絶対に逃げちゃうことは目に見えてるので、そうなったら結果は付いてこないなというのは分かってるんでね。いかにスタートして、フワッと乗れるかという。



-:フワッとした中で、番手がどうこうではなく、カナロアのリズムで組み立てていくことがポイントなんですね?

翔:そうですね。1200とか使っている馬で最後方というのは無理でしょうけど、それが中団であろうが、好位であろうが、カナロアのオフなリズムで勝負所まで行けたら、最後はメリハリを付けれるかなと。そこからの脚は競馬に行ってみないと分からないですけどね。

-:しかも、今回の安田記念は例年に比べて、好メンバーが揃っていると言われてます。 ファンの注目度も高いレースとなりますが。

翔:強い相手ですよね。そこに有力馬の1頭として挑めることは、この世界にいる限り、ありがたいことですね。

-:有力馬の1頭というか、多分、本命馬の1頭だと思います。

翔:でも、気持ちは“挑戦する。格上ではなく異なる条件で、どれだけ今まで養ってきた経験を発揮できるかというのを見たいな”という気持ちで送り出しますね。挑戦者という表現でもないんですけれど、今までの経験がどれだけこの舞台で、異なる条件をクリアできるかなという思いです。

-:ロードカナロアが競馬の幅をどこまで持っているか。許容範囲がどこまで広いかというのを確認できる舞台ではありますね。

翔:それに関しては本当に競馬に行ってみないと分からないというのが、正直なところなんですけれどね。

-:それを軽はずみに勝ち負けできるというのは簡単だと思うんですけれど、その辺はやっぱり慎重に?

翔:こういうインタビューを参考にしてくれる方もいるかもしれないんで、やっぱり軽はずみな発言はできないので、そういう表現になってしまうんですけれど。ただ、結果は求めたいですね、今まで以上に。

馬自身が立場を自覚するように

-:先週、カナロアが歩いているところをたまたま見たんですけれど、のけ反るほどの迫力が出てませんか?

翔:何か風格が出て来ましたね。風格から来るズブさが。歩いてても全然、周りに左右されなくなって、堂々として。ディープインパクトは自分のことをどれだけのモノと思ってるのかなと見ていたんですけど、最近携わって、自分の立場というのを理解したアクションが多いなと、自覚してるんじゃないかなと思うようになりましたね。

-:コレだけの馬なので、もちろん最後は伸びてくると思うんですが、楽しみなゴール前になりそうですね?

翔:楽しみであって欲しいですけれどね。「距離が長かった」とならなければね。言い方は悪いですけれど、“唯一、負けが許されるレース”だと思って、自分に言い聞かせてます。負けることによって、ベストパフォーマンスを見せれる距離適性がなかったんだ、ということを自分に言い聞かせて、硬くならないようにしてるんですけどね。

-:あともう一つの条件として、馬場が悪くなってもこなすじゃないですか、この馬は。マイルになった時に雨が降ると、よりスタミナ傾向が強くなるから、そこはどういう解釈をすれば良いのかなと?

翔:常識的な範囲ではいかにロスなく行けるかが、そういう馬場に関しても、コース取りに関しても、ロスなく行けることに越したことはないんでしょうけれど、ずっと色んな獣医さんが触ってきた中で「心臓の音がスプリントの音じゃない」と言うんですよ。もうスゴい心臓をしていて「2000とかでもこなすんじゃないか」と言われるんですけれど、いきなり2000に行ける訳ないじゃないですか。そういう意味では雨も含めて、楽しみですね。

-:強い馬の条件として、色んな条件を関係なく結果をこなすというのが?

翔:挑戦をすると決めた以上は雨が降らないで欲しいとか、そういうのを求めて出走はしてないので、どういう条件になっても、今までの経験がどれだけ活きるかなという風には思っています。





-:あの体を見たら、ドンと来いという感じじゃないですか。

翔:若干、スプリント色の強い走り方になってきてたので、この中間は1完歩を大きく伸ばすよう頭においています。まあ、そう簡単にできることじゃないんですけれどね。今まではケンカして、ケンカして、だったのが、それ(完歩を伸ばすよう)をしたいから早めに体を作っておいたんですよ。だから、今週末と来週はCWで追い切る予定ですし、ストライドを大きく見せるというのを目的として。

-:単純に考えたら、同じ1600を走るのもピッチで走るより、ストライドで走った方が完歩が少なくなりますからね?

翔:それがちょっとでも効果があれば良いなと思います。この中間は意識してきたんですけどね。

-:多分、スゴい人気になると思うんで、楽しみにしてます。

翔:気楽に行かせて下さい(笑)。そういう訳にはいかないと思いますけれど……。この馬のキャリアを崩さない意味でも、このレースを使うというのは、秋を見据えた上ではベストな選択だと自分たちは思ってるんですよ。安定したところに行っておけば良いのにと思う自分も、自分に対してあるんですけれど、そこを超えないとダメだというのを香港の遠征でも勉強になりました。

-:このクラスの馬ですし、もしもこなしたらロードカナロアの今後に対しても選択肢が広がりますからね。

翔:やっぱりコレだけの結果をもたらしてくれた馬なんで、今後は競走馬としての価値を高める選択をするのも、僕たちの使命だと思っているのでね。

-:今、乗りに乗っているケイアイファームさんはオークスも3頭出しでしたからね。

翔:まあ、あやかりたいですね。

-:良い結果を期待してますんで、あと1週間頑張って下さい。

翔:はい、集中して頑張ります。

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【安田 翔伍】 Syogo Yasuda

昭和57年7月8日生まれ。高校時代にアイルランドに渡り、本場の馬乗りを経験。1年間の修行を経て帰国後はノーザンファームへ。その後、安田隆行厩舎に入り、フィフティーワナー、カレンチャン、ロードカナロア等の活躍馬の調教を担当する。
父は安田隆行調教師、兄は同じ安田厩舎に所属する安田景一朗調教助手。兄の景一朗助手と共に厩舎の屋台骨として活躍している。