第4章 最高の瞬間の舞台裏


松田宣浩×戸崎圭太「日本一の熱き男たち」(第3章)はコチラ⇒


-:続いて、戸崎騎手から松田選手へ披露したいレースを2つほどピックアップさせてもらったので、映像を観ながら説明をしていただければと思います。まずはフリオーソという地方競馬の競走馬が、2011年に制したかしわ記念(Jpn1)ですね。

圭太:これは千葉県の船橋で行なわれている地方競馬なんですよ。僕は、本当にこの馬に色々なことを教えてもらって、ここまで来られた感謝の思いが今でもあります。この馬の引退式で僕は泣いちゃいましたもん。このレースはちょうど震災があって、ずっと競馬がやれなくて、それで再開された時の大きいレースだったのですが、この馬にとって、ここが地元だったんで。

松田:この時の気持ちはどうでしたか?

圭太:いや、もう「嬉しい」の一言ですね。野球だと、やっぱりホームランになった時は嬉しいですか?

松田:そうですね。バッターならではの快感だと思います。

圭太:映像を観ていると、「これで入っちゃうんだ?」というくらいの打ち方だったり当たりだったりで、それを持っていっちゃうんですもんね。すごいですよね。

松田:ああ、僕は独特なんで(笑)。野球というのは引きつけて打つのが主流なのですが、それじゃ僕の持っている力が半減しちゃうので、前で弾くという打ち方をやっています。

対談


-:そういう打ち方になってきたというのは、ツーシームなど変化球の問題ですか?

松田:そう、それがあるので。引きつけるのが主流なのですが、そうするとボールが飛ばないんですよね。だから前で、軽く捌けるところで打つという。

圭太:今度から、それを意識して試合を観させていただきます。「ああ、今日はちょっと遅いな」みたいな、ハハハ(笑)。

-:続いて、有馬記念のジェンティルドンナです。一昨年の12月でした。

松田:ジェンティルドンナは超有名ですもんね!僕も聞いたことがあります。

-:有馬記念は1年の最後の大きいレースになります。

圭太:ヤンキースの田中将大選手が(枠順を)引いてくれて。4番の馬ですね。

松田:僕もイベントなどで毎年、有馬記念の予想はしているのですが、この予想は多分、自分の背番号の5番でしたね、ハハハ(笑)。

戸崎「もう引退レースだったので、本当に気持ち良く、リズム良く走ってこようと思った感じで。ただ、作戦通りというか、良い位置も自然と取れたので良かったなと」


-:道中はどんなことを考えられていたのですか?

圭太:この辺りでは、勝ち負けはあまり意識していなかったんですよね。もう引退レースだったので、本当に気持ち良く、リズム良く走ってこようと思った感じで。ただ、作戦通りというか、良い位置も自然と取れたので良かったという感触はありましたね。

松田:何かカッコ良いよなぁ。騎手って、誰でも出来ないですもんね。

圭太:僕らから見たら、(野球選手は)カッコ良くて素晴らしいですよ。

松田:これは、日本全国の競馬好きな人が観ますもんね。

圭太:そうですね。大一番ですので。

-:競馬にあまり詳しくない人でも観るレースですからね。3~4コーナー辺りはどんな感じでしたか?

圭太:手応えがすごく良かったので、「もしかしたら勝てるな」という意識はありましたが、後ろから来る強い馬も一杯いたので。油断できなかったですね。ただ、ジェンティルドンナは本当に素晴らしい馬でしたよ。


松田:(レースを観ながら)うわっ、スゲー!

圭太:5番も来ていましたけどね。

一同:(笑)。

松田:この瞬間は本当に最高ですよね。

圭太:最高ですね。周りの反響も、有馬記念ではまた違いましたね。

松田:あの紙(馬券)が飛んだということは、その人の馬券は外れたということですね。

圭太:そうですね、ハハハ(笑)。5番を賭けた松田さんと同じ気持ちだったということですね。

松田:これからは戸崎騎手に賭けるから、全然紙を放らんで良くなるわ~(笑)。

-:続いて、我々競馬ラボの、大のホークスファンが松田選手の名シーンを選んだので、その場面を説明していただければなと思います。2011年のクライマックスシリーズのシーンを流させていただきます。

松田:クライマックスシリーズでは負けることが多く、「クライマックスの呪縛」があって、この2011年に初めて突破したんですよ。その試合だったので、やはり思い出深いところがあります。それで、2014年、2015年もここが勝てたからこそ、リーグ優勝が出来て、クライマックスシリーズも勝てて日本一になれたんですよ。これまでは、2010年もリーグで1位になったのですが、次のステージではプレッシャーで負けたから、日本一になれない経験があったので、やっぱり覚えています。ホームランは打った瞬間入ったと思いました。

松田「やっぱりチームの順位が第一に来るので、最下位でどれだけ頑張っても評価をされない。チームが勝った中で活躍したいという意識があります」


圭太:でも、(弾道が)随分低いですよね。

松田:ボールとバットが当たる感覚というのが重かったら飛ばないですが、軽かったので行くと思いましたね。

圭太:自身が活躍されて日本一になったというのは最高の気持ちじゃないですか?

松田:そうですね。それが一番良いですよね。やはりチームスポーツなので、個人の結果が良かったと言っても、やっぱりチームの順位が第一に来るので、最下位でどれだけ頑張っても評価をされない。チームが勝った中で活躍したいという意識があります。

-:それでは、去年のサヨナラのホームランシーンを一つ。

松田:これは12回のツーアウトなので、僕がアウトになったらこの試合は引き分けだったんですよね。延長が12回までなので。

圭太:「もう俺しかいない」という気持ちですね。こういう時、僕は多分不安になっちゃうんです。「ああ、大丈夫かな」みたいな。

-:こういう時はイケイケな感じですか?

松田:もう負けはないので、イケイケじゃないと。

圭太:やっぱりカッコ良いですよね。フワっといって入っちゃうんだもん。(ホームランのシーンを観ながら)ウワっ、これはすごいわ。

松田:僕がアウトになったら終わっちゃうので、打席に立つ前に初球から何でも振ってやろうと思ったんですよ。それがたまたまバットに当たった感じでした。

圭太:ええ~、そうなんだ。

松田:だから、ちょっとボールが低かったでしょ。普通だったら見逃すかもしれないですよ。でも、何でも見えたらボールに当てろと思いました。スライダーかカーブだったと思いますが、相手が投げる前から「振るぞ」と決めていたんですよ。それで、バットを当てたら入りました。

圭太:はぁ~、すごい方ですね。聞けば聞くほど、ハハハ(笑)。

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