オーナーブリーダー・岡田牧雄氏スペシャルインタビュー(2P)はコチラ⇒

第3章


-:では、次に、「馬主・岡田牧雄」としての方針をお聞かせください。

岡:常々「馬券は儲かる」と言っているのと同様に、「馬主は儲かる」という発想のもとにやっています。皆さんもご存じのように、日本の賞金体系は世界一充実していますからね。かなり前から「生産者は賞金で食うという発想を持つべき」と主張してきたのですが、その方針は今も変わりません。なお、「賞金で食うべき」という発言は、生産者の立場としてのものですが、私はオーナーブリーダーであり、生産者であることと馬主であることを切り離して考えるのは不可能です。さて、「賞金で食う」ということについてですが、その手段として、第一に挙げなければならないのは、「ある程度の頭数を確保する」という点です。

-:実際、どのくらい必要なのでしょう?

岡:まあ、100頭は欲しいですね。すべての馬がオープン、準オープンに出世するわけではありませんし、いかに丈夫な馬づくりを実践していても、故障馬が出てくるのは避けられませんから、コツコツと稼ぐ(入着賞金や出走手当も含め)には、常時馬を稼働できる体制を整える必要があるのです。それで初めて計算が立つ。5頭、10頭くらいでは、見通せませんからね。ちなみに、あの金子さん(金子真人氏/馬運がいいことで有名)にしても、「プラスにするためには、ある程度の頭数が必要」とおっしゃっていますしね。頭数をキープした上で、それぞれの馬をコンスタントにレースに使うこと。理想は1頭当たり年10回出走させることです。それを現実にするにも、「丈夫な馬づくり」が何よりも重要な要素になってくるわけです。

岡田牧雄

▲取材時に牧場へ訪れていたアンカツさんとエイシンヒカリで記念撮影

-:「丈夫な馬づくり」という点では、先ほどおっしゃられた夜間放牧やえりもでの中間育成などが必要不可欠な手段のようですが、他にも牧雄さんならではのやり方がありますよね。それは「セン馬」にすること。それによって、競走生活を伸ばすことができるとおっしゃっていましたよね。

岡:ええ。セン馬にする場合、一般的には、「気性の悪さの改善」が主目的なのですが、私の場合、別の観点からの重要な目的があります。実は、去勢した馬は女性ホルモンの関係で筋肉が固くなりにくくなるというメリットがあるのですよ。筋肉が柔らかければ故障が減るだけでなく、競走生命も伸びてくる。セン馬の現役生活が長いのは決してたまたまのことじゃありません。オセアニアや香港の競馬はセン馬が主流ですし、日本でももっとセン馬を増やしていいと思いますね。

-:なるほど。ただ、牡馬の場合、能力が高くて、かつ実績を残せば、「種牡馬」への道が開けよね。それを考えると、セン馬にするのに抵抗というか、怖い部分はありませんか?

岡:確かにそれはありますが、その可能性を見極めるのも我々の仕事の一つです。もっとも、デビュー前にタマを抜くケースはほとんどなくて、ある程度、実際にレースを見てから判断するわけですから、そういうリスクはあんまり考えなくてもいいんじゃないかって気がします。

-:そういわれればそうですね。実際にレースを見てから決めるわけですから。ただ、ノルマンディー所属のカルヴァリオの場合、デビュー前からセン馬にしていたじゃないですか。あれはどうしてなのです?

岡:あの馬の場合、純粋に気性の問題です。ハンパなく難しい馬でしたからね。もっとも、セン馬にしてからも、難しい面は残っているんですよ。昨年9月の準オープン(レインボーS)で惨敗したのも、能力ではなく気性の問題って気がしますね。

-:去年の夏、北海道で破ったミッキーロケットが日経新春杯に勝ったわけですし、あそこまで負けるとなると、やはり気性的な問題なんでしょうね。では、カルヴァリオの話題が出ましたので、次はノルマンディー・サラブレッドレーシングについてお聞きしたいと思います。

オーナーブリーダー・岡田牧雄氏スペシャルインタビュー(4P)
「第4章:ノルマンディーOCの方針と野望」はコチラ⇒

岡田牧雄

▲岡田スタッド生産馬のサウンドトゥルーはセン馬になってから飛躍を遂げた