初めての個人所有馬ジャスタウェイがレーティング世界No.1の評価を獲得し、種牡馬に。
人並み外れた馬運の持ち主が脚本家という本業のキャリアを活かし、馬主ライフを書き下ろします。
「凱旋門賞へ2」
2014/9/17(水)
僕の不幸自慢
皆さんこんにちは、ご無沙汰してすみません。ライター大和屋です。お蔭様で各所の皆さんから凱旋門賞挑戦に関するインタビューやら執筆依頼などをいただいております。人生最後のモテ期をこれで使ってしまったのか!?などと思い、戦々恐々としている今日このごろです。
ジャスタウェイ(牡5、栗東・須貝尚厩舎)はゴールドシップ(牡5、栗東・須貝尚厩舎)らと共に検疫厩舎に移動しました。そして20日にフランスへ向けて旅立ちます。遠征も近づき緊張感も高まってまいりました。意気込みだとか、心境だとか、通り一遍の事は大体言い尽くしてしまいましたので、ここでは安田記念に引き続き、僕の不幸自慢をしたいと思います。前にも言いましたが競馬運が良い時は他の運が最悪です。何故こんな目にあうのかまったくわかりませんが、順調に不幸な感じなので、じわじわと手応えを掴んでいる今日この頃。ジャスのライバル達も次々と、よもやの敗戦や戦線離脱で混迷を極めてきた凱旋門賞。もうこうなったらもっともっと不幸な目にあって万全を期してフランスに乗り込みたい所存です。
では行きましょう。まず最初の不幸は、史上最悪の蕎麦に出会ってしまったこと。こう見えて僕は蕎麦好きです。好きとかいっておいて立ち食い蕎麦なんかも平気で好きですしその場合コロッケ蕎麦がデフォルトです。地元の駅に立ち食い蕎麦屋がないんで時々無性にジャンクな蕎麦が食べたくなる時がありまして……そんな感じで無性に蕎麦が食べたくなった僕は吉祥寺のとある蕎麦屋へ。コロッケがカレー味ではないことを確認しコロッケ蕎麦を頼むと手慣れた感じですぐに出て来ます。
さて食べようと口に運んでみてびっくり。味がしない……。蕎麦の香りも一切なければ、コシもない。ツユも限りなく薄く何かの間違いではないかというほどのアンサンブル。愕然とし周囲を見渡すと皆もくもくと食べてます。どうやら何かの間違いではないようです。とりあえず七味をぶっかけ食べ進もうとしますが、まずすぎて食べられません。蕎麦をすするも地獄、ツユをすするも地獄、食べられるのがコロッケとワカメだけ。しばしの葛藤、なんとか頑張ろうとはしましたが……。
そして人生初、蕎麦を完食できずに残すという屈辱を味わいました。学食の蕎麦も美味しくいただき、どこの立ち食い蕎麦だろうが、どんなにまずくても完食していたこの僕が、まさか蕎麦を残すという事態に陥るとは思いもしませんでした。あまりのまずさにその夜夢に蕎麦が出てきてうなされました。あーまずかった。もうあの店には二度と近づきません。
次に不審な電話が更に増えました。基本ライターは電話が苦手な人種です。電話の音が鳴るだけで心の底からびびります。催促の電話なんか掛かってきたその日にはもう一日ブルーです。とまあそういう訳なので関係各所の皆さん、現在僕の携帯に登録されていない電話には出ないようにしております。決して嫌いだからとかではないので誤解なさらないよう願います。関係者の方はメールか、留守電に要件を残しておいてくれると助かります。それから関係者の皆さん、僕の携帯番号を第三者へ勝手に教えないでください。なんでこの人が知ってるんだろうと首を傾げることが最近ほんとに多々あります。個人情報は大切に扱いましょう。
そして極め付けの不幸、先日銀座のど真ん中ですっ転びました。自分でも驚きました。ガードレールを乗り越えようと足をあげたらそのままバランスを崩し前のめりに突っ伏しました。場所は数寄屋橋の交差点付近。銀座の中でも人がわらわら歩いてる場所でした。痛いやら恥ずかしいやらでとりあえず足を引きずりながら人目をはばかり地下へと避難してみました。いい年こいた40代のおっさんが無意味に転ぶってどういうことでしょう?左ひざを強打し、右肩をぶつけ擦り傷と内出血。酔っ払って転ぶならまだしもシラフです。友人達との待ち合わせだったのですが、その後痛みをこらえヒリヒリしながら酒を飲みました。勿論ですがその友人達にこけたことは一切言いませんでした。なんか情けない。
他、おばちゃんにタクシー横取りされたり電車で寝過ごしたり、風邪ひいたり腹壊したり、間違って鼻にムヒ塗ったりとか、細かい不幸はいつもの事のように起きてます。言えば角が立ったり、この場では言えない事などを含めると安田記念の時以上かもしれません。いえ、はっきり言ってあの時以上です。そういう訳で前回に引き続き競馬運以外はずたぼろです。前回もこんな感じで安田記念を勝ってくれたので今回も……期待というかちょっと自信が湧いてきました(笑)。
ジャスタウェイは順調に調整されています。入厩したての頃はどこかぼんやりしていたそうですが、ゴールドシップと併せ馬をするあたりにはスイッチが入ったようで、気合乗りも動きも変わってきたとのこと。須貝さんからは元気だとか順調だとかしか聞こえてきませんのでそれだけ順調に行っているのでしょう。僕のほうも順調に不幸ですし良い流れなのではないでしょうか? 了
プロフィール
大和屋 暁 - Akatsuki Yamatoya
脚本家・作詞家・ライター。若くして一口馬主に出資を始め、クラブ馬主歴2年目にハーツクライと運命的な出会いを果たすと、有馬記念、ドバイシーマクラシックを制す大活躍。しかし、ノド鳴りによるアクシデントに見まわれ、突如として引退したことに一念発起、馬主になる決心を固めた。個人馬主としては、初めてデビューを果たした所有馬ジャスタウェイが大活躍の強運ぶりを発揮。遂には、目標であったドバイ遠征を実現させ、ドバイデューティーフリー(現在のドバイターフ)を圧勝。「自らの馬でドバイを勝つという」夢を実現させたばかりでなく、そのパフォーマンスが評価され、2014年度のワールドベストレースホースランキングでは、日本馬史上初の1位を獲得している。
現在の現役所有馬はカリボール、マジカルステージ、ジャスコ、キングロコマイカイ。一口馬主や共有馬ではアウィルアウェイ、ルーツドール、イストワールファムなどに出資している。
本業ではアニメ版「銀魂」、「スーパー戦隊シリーズ」などの脚本を手がけ、2020年公開の映画「デジモンアドベンチャー」も担当。愛馬との数年間に及ぶ足跡を綿密に綴った『ジャスタウェイな本』などの執筆も手がけた。