ワイズダン復帰戦はハナ差の辛勝[和田栄司コラム]

5月16日の疝痛の手術から蘇った2年連続の米年度代表馬ワイズダンは、8月30日のサラトガ競馬場で行なわれたG2バーナードバルークハンディキャップ(芝8.5F)でレース復帰を果たした。9頭立てのレースはワイズダンがトップハンデの127lb(57.5キロ)を背負い、他馬より3.5キロから6キロ重いハンデを課せられた。

ジョン・ヴェラスケス騎手を鞍上に5番枠からスタートしたワイズダンは、直ぐ指定席の4番手に収まった。レースはG3・2勝馬で3番人気に推されたファイヴアイアンが先行、道中3馬身半のリードを取った。ステークス勝馬で2番人気のバイオプロが2番手、サイアードが並びかけ、単独4番手のワイズダンは先頭から6馬身差で追走する。フラクションは半マイル通過46秒32、ファーム表示の馬場、ほぼ平均ペースである。

3コーナーに向かうところでファイヴアイアンのリードは1馬身に縮まり、4番手のワイズダンも2馬身差で前が固まる展開になった。4コーナー、ワイズダンは外から捲って残り1ハロンの8ポールでファイヴアイアンとサイアードの半馬身差に迫ったが、道中1馬身半差の5番手を追走した116lb(52.5キロ)のG3・3勝馬オプティマイザーが1馬身差で追いかけて来た。

ワイズダンは残り100ヤードの16ポールで先頭に立ったが、ここからはオプティマイザーとの攻防に移る。差は4分の3馬身に縮まり、更に追い詰めるオプティマイザー、ゴールは写真判定に縺れ込んだが、それでも交わされるような印象は無く、ハナ差でワイズダンが勝利した。勝ちタイム1分39秒08は、1991年にフォースターデイヴがマークしたレコードに100分の17及ばない速い時計だった。

2010年の冬にデビューして以来30戦目となる復帰戦を勝利で飾って、ワイズダンの通算成績は30戦22勝、2着2回。サラトガ競馬場では3戦して負けなしの3連勝となった。これで獲得賞金額は695万2920ドル。チャールズ・ロプレスティ調教師は「信じられますか、凄い馬ですよ。驚異的な生き物です。何でも食べるし、今日は特に良く見えた。少し疲れたと思いますが、想定内のことです」とコメントした。

ワイズマンズフェリーの7歳のセン馬はこれが18個目のグレード勝ち、次のレースは10月4日にキーンランド競馬場で行なわれるG1シャドウェルターフマイル、そして11月1日にサンタアニタパーク競馬場のG1ブリーダーズカップマイルで3連覇を目指す予定である。これを達成すれば、1974年から1976年にかけて3年連続でエクリプス賞の年度代表馬に輝いたあの歴史的名馬フォアゴーに並ぶことも夢ではない。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。