【有馬記念】ラストラン・ヴィルシーナにウチパク「この子も名馬」

ジェンティルドンナのラストランが大きく注目される今年の有馬記念だが、同時代を彩ったもう一頭の名牝ヴィルシーナも引退レースを迎える。牝馬三冠をはじめ、何度も死闘を繰り広げてきた2頭の競演をしっかり見届けたいところ。その手綱を執るのは勿論、内田博幸騎手。悔しさも栄光も共に味わった名パートナーとの最後のタッグに向けた意気込みを聞かせてもらった。

●エリ女は有馬記念に繋がる内容の11着

-:ヴィルシーナ(牝5、栗東・友道厩舎)の1週前追い切りですが、追い出してから少しフワッとしている様にも見えたのですが?

内田博幸騎手:そうでもないですよ。1頭になって少し寂しいかなという感じはしましたが、最後までハミをくわえながらゴールまで入っていたのでね。最後の1ハロン12秒1ぐらいだったので、1週前としては上々ではないかと思います。

-:今の中山の馬場コンディションはどうでしょうか?

内:悪くないですよ。時計も出やすいですし、走りやすいですしね。

-:ヴィルシーナにとってはいかがでしょうか?

内:悪くないと思いますよ。

-:脚質的に逃げる可能性もあると思いますが、強敵が多いほど逃げ切りの可能性が上がるような気もします。

内:それはやってみなければ分かりませんね。競馬はそんなに甘くないのでね。こっちが考えていることと周りも違うことを考えているだろうし、同じように積極策を狙う馬もいるだろうし。ゲートが開いてポジションを取ってみないと分かりません。一概には言えませんよ。ただ、決めつける必要はないのでね。元々は2、3番手で競馬をしていた馬なので、そんなにハナにこだわる必要はないと思います。

-:府中牝馬Sを使えずに、ぶっつけでエリザベス女王杯に出てきました。腰の治療をしてからの出走でしたが、レース後の感触としては思っていたよりも頑張ってくれたとのことでした。

内:もっと早くタレていくのかなと思ったのですが、こちらが仕掛けていっても気持ちが入っていたのでね。ハミも良い感じに取れましたし、リズム良く走ってくれました。久々でも良い感じに走れて4コーナーまで来れたので、ひょっとしたら粘るのかなという感じもありました。やっぱり休み明けの分はありましたが、気持ちは折れていなかったので、次に繋がるレースをしてくれたと思います。

ヴィルシーナ

-:今回は1度使ったことで、より順調にきているということですか?

内:順調ですし、あとはこの相手にどれだけやれるのかということでしょうね。

-:その中にはジェンティルドンナもいますね。お互いここが引退レースになります。

内:牝馬ですし、長く使うことで繁殖として影響が出ては困るのでね。ちゃんと子どもたちを育てていってほしいと思います。その子どもに跨ることもあるかもしれないですし、ジェンティルの仔に乗るかもしれません。そういったロマンがあるのでね、楽しみにしたいなと。

●ラストランもジェンティルドンナと

-:桜花賞からエリザベス女王杯までずっと2着と珍しいパターンでしたが、内田博騎手ご自身が一番悔しかったレースはどれになりますか?

内:やっぱり秋華賞でジェンティルにハナ差で負けたのが悔しいですよね。あそこは勝ちに行ったのでね。ジェンティルを負かすなら京都内回りのここだ、と思っていましたから。枠順や出脚次第では良いポジションにつけられないレースなので、ちょっとした展開で後ろになってしまいます。ましてや内回りだとコーナーでかなり外を回されてしまいますので、小回りで一発狙うならここだなという気持ちはありました。あそこまで苦しめたのは凄いと思いますけどね。負けたけど勝ちに等しいレースをしてくれましたし、ジェンティルドンナ陣営を焦らせることはできたのではないかと思います。

-:ジェンティルドンナを苦しめた馬で、その後もヴィクトリアマイルを連覇していますから素晴らしい馬ですよね。

内:ジェンティルドンナみたいに牡馬相手にも勝ったり、海外でも勝ったりといった実績はないですが、無事にここまで走れて、結果も残してきたというのは名馬だと思いますよ。

-:お母さんになる前に最後の大仕事が待っています。まずは無事でいて、その上で好結果をということになるのでしょうか?

内:もちろん出るからにはそういった気持ちでいます。馬主さんも含めて陣営はそれを一番望んでいますからね。その気持ちがなかったら、乗せる意味もなくなってしまいますし、出来る限りのことはやって、この馬のラストランにふさわしいレースを出来ればと思います。

ヴィルシーナ

牝馬三冠のラスト・秋華賞はハナ差で涙


ヴィルシーナ

悔しさをバネに、史上初のVマイル連覇を達成


-:ファンとしても逃げると決めつけないで柔軟な視線で見たいと思います。

内:こればっかりはスタートしてみないと分かりません。競馬は逃げると言っている馬こそコケたりしますからね。なかなか思うようにいかないのが、勝負事ですので、臨機応変な騎乗したいですね。行けないなら行けないなりのレース、行けるなら行きますし、馬たちが走りやすいようにさせてあげることがベストだと思います。それで結果を残せるような乗り方をするのが騎手ですので、それを目指して乗りたいと思います。

-:内田博騎手にとって中山2500というのはどのようなコースですか?

内:意外とタフですよね。

-:スピードだけでは足りないと?

内:スピードだけだと、このクラスになると厳しいですね。あとはかなりのスタミナが必要かなと思います。

-:折り合い面に不安はありますか?

内:それはないですね。そこに関しては安心しています。

-:相手が掛かっているとその分のロスも考えられます。

内:コーナーを6つ回るわけで、コーナー4つと6つではスタミナの消耗度が全く違ってくるので、そこは大きいのかなと思います。

-:そこは引っ掛からないヴィルシーナの強みを活かしてということになるのでしょうか?

内:当日の状態もありますし、ゲートが開いての進み具合もありますしね。

-:そうなるとあと1週を順調に過ごしてもらいたいと?

内:そうですね。順調に来てもらいたいです。

(取材・写真=高橋章夫)

ヴィルシーナ