そぼ降る雨も問題なし ココロノアイがステッキ2発で完勝!

ココロノアイ

15年3月7日(土)1回阪神3日目11R 第22回チューリップ賞(G3)(芝外1600m)

ココロノアイ
(牝3、美浦・尾関厩舎)
父:ステイゴールド
母:ビューティソング
母父:デインヒル

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まるでG1かと思えるほどに、パドックの廻りがギッシリと埋まる。どうやらブチコをひと目見ようのファンが多かった様だ。雨もけっこう降って、芝もかなりの悪コンディション。もしかして本当にブチコの出番があるのかと内心期待して見ていたが、それも4角廻った処まで。後は内で粘るレッツゴードンキをアッサリ交していくココロノアイの、余裕タップリな勝ちっぷりを感心して見ていた。そしてこんな馬場なのに、大外に出したディープインパクト産駒アンドリエッテが鋭く伸びてきてレッツゴードンキを交して行く脚には、驚きを感じたものだった…。


ごく間近な予報では昼ぐらいから雨だったのに、朝起きた時からすでに濡れていた。そして小さい雨ながら降り続けた。良発表から始まって、9Rから稍重となった。しかしレースを終えたジョッキー達は、《相当に悪い》《先週のが残っているうえにさらにだから、ひどい馬場コンディション》と口ぐちに言うほど。10Rでは重にまでなった。
10Rのレース後の感想を訊いてから、すぐにパドックへと移動する。周回する馬の鞍が濡れない様にとビニールが被せられているが、それが邪魔して全体像がうまく見きれない。雨の弊害である。
それでも落ち着きとか雰囲気は、誰にでもすぐに判る。ココロノアイが実に落ち着いている。阪神への輸送が2回目だからなのか。レッツゴードンキも余裕の仕上げとは見えない。クルミナルは、やや若さを出しているのかと感じる。ディープインパクトの子供にはこんな馬場は辛いだろうな~と思う。やはりブチコの白さと斑な模様は目立つ。眉毛まで白いのに気がつく。スタンドで返し馬を観ていると、後ろで《ブチコの映像を撮れた~》なんて声が聞こえる。だから人が多かったのか~と納得した。

ゲートが開いた。ブチコの先手もあるのかな~と思っていたが、もっと上をいかれた。レッツゴードンキが、2Fぐらい行ってから先頭に立っていく。岩田Jらしい乗り方だ。この馬場、行けたら行った方がベストだろう。ココロノアイも徐々に番手を上げていって、好位のすぐ後ろに居座る。淡々と流れて行っている。9Rあたりでは内ピッタリの馬が掲示板を独占したが、あれからさらに馬場は悪化。内も外もないのかも知れない。
3角過ぎに、内の方でアンドリエッテが前の馬との間隔がなくなりやや下げざるを得ないのが見えた。4角手前までは内で脚を貯めていたアンドリエッテ。直線入り口では外目へと進路を取ってきている。アスカビレンが外にいたので最外という訳にはいかなかったが、視界は開けていた。

4角ではレッツゴーンドキ、ブチコ、オデッタウインアキレアと4頭が並び、その後ろでココロノアイがもの凄い手応えで続いていた。
ラスト300mの赤い棒のあたりでは、ブチコが沈みだす。ココロノアイが外からスーッと前に出てくる。その時に横山典Jの左ステッキが1発入る。内ではレッツゴードンキがラチ沿いで先頭をキープしていたが、脚色が違った。
ラスト200mでさらにもう1発、ステッキを入れるノリJ。その後は手綱を動かしもせず、馬の勢いに任せてゴールへ向かうココロノアイ。外からアンドリエッテが一気に伸びて来ていても、まったく見向きもしない鞍上。手綱をピーンと張ったまま、ゴール板を迎えていた。

ロカがまた権利を取れない4着。いい脚は使っているのだろうが、運が向かない様だ。前走で惨敗したアスカビレンが5着と盛り返している。ここらが判らない女心だ。ディープインパクトの子供達は、おしなべてこの馬場で脚を使えずだった。連勝して1番人気の支持のクルミナルは11着。同じく無敗のコンテッサトゥーレは6着。タッチングスピードは内ラチ沿いを最後は脚を伸ばしてはいたが、9着だった…。ブチコは《芝のこんな馬場も合わないみたい》と、真っ白な馬体にブチの斑がある馬だが、泥がかなりついて斑がより増していた。


PVを見上げていると、横山典Jが少し前を横切っていく。後を追って話をしに行く。レースを終えて検量室前の枠場へ向かう時に、ココロノアイの馬上のノリJには《おめでとう》とは言っておいたが、訊きたい事もあった。『パドックで落ち着いていたな~』と尋ねると『いや~、前はうるさかったんだ。それが前回の時も今回も落ち着きだしたからね~。それが大きいな~』と言う。それだけ聞けば十分だった。

何度もPVを観る。《はたしてステッキを入れていたのかな~》と疑問に思って見直す。すると、直線に入ってすぐぐらいで左ステッキを1発いれた。後は抜け出した時に叱咤激励の意味で軽く1発入れた。ほとんど目一杯ではない追い方とみた。
アルテミスSでレッツゴードンキにハナ差勝ち。阪神JFでは先んじられたが、今回は完勝だ。しかし東軍にはまだ上がいる。2歳女王ショウナンアデラに、ルージュバックという無敗の女神までいる。厚い層である。今年は、牝馬から東勢にやられそうである。巻き返しに期待したい関西勢だ。
また中山メインのオーシャンSでも、尾関厩舎サクラゴスペルが外から強襲して勝利と、東西で一度に重賞ゲットと華々しく勝った。『どっちにいても勝ったじゃんか』と向けると、《いや~、俺では中山は勝てなかったよ。あんなに後ろから行かないものな~》と謙遜する横山典Jである。
ベテランが、またいぶし銀の勝利。これだから競馬は面白いのである…。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。