第141回ケンタッキーダービー直前展望[和田栄司コラム]

5月最初の土曜日が近付いて来た。今年は2日、日本時間の3日朝、米ケンタッキー州ルイヴィルのチャーチルダウンズ競馬場のダートコース、距離10ハロンで行なわれるのがトリプルクラウンの初戦ケンタッキーダービーである。今年の主役は、2歳チャンピオンのアメリカンファラオ(牡3歳/父パイオニアオブザナイル)だろう。11日アーカンソー州ホットスプリングスのオークローンパーク競馬場で行なわれたG1アーカンソーダービー(D9F)は、改めてその強さを思い知らされる結果となった。

8頭立てのレースは、3番枠からブリジッツビッグラヴィが先行した。6番枠から発走したヴィクター・エスピノーザ騎乗の大本命(単勝1.1倍)アメリカンファラオは3馬身差の2番手を追走する。フラクションは 22.77-45.99。アメリカンファラオは3コーナーから仕掛けて3~4コーナー中間で先頭、1馬身差でミスターズィーが追いかけたが4コーナーでは差が付き始めた。アメリカンファラオは馬なりのまま1分48秒52で3つ目のG1優勝、8馬身差の2着は最後方からファーライトが上がった。

思いもよらぬハイペースとなったアーカンソーダービーで折り合いを付けさせ、速い流れとなりそうな本番での対策にも抜かりがない。2007年のストリートセンス以来となる2歳チャンピオンの優勝が、俄然近付いて来た。ケンタッキーダービー出走枠の20頭、40ポイントのボーダーラインの馬が次々と回避を決め、30ポイント以下にもチャンスが回って来るかも知れない。現在までの出走予定馬(内19頭は出走表明)は、30ポイントまでの20頭。

インターナショナルスター(牡3歳/父フサイチペガサス) G2ルイジアナダービー1着
ドルトムント(牡3歳/父ビッグブラウン) サンタアニタダービー1着
カーペディエム(牡3歳/父ジャイアンツコーズウェイ) ブルーグラスS1着
アメリカンファラオ(牡3歳/父パイオニアオブザナイル) アーカンソーダービー1着
フロステッド(牡3歳/父タピット) ウッドメモリアルS1着
ムブタヒージ(牡3歳/父ドバウィ )G2UAEダービー1着
マテリアリティ(牡3歳/父アフリートアレックス) フロリダダービー1着
エルカビール(牡3歳/父スキャットダディ) ウッドメモリアルS3着
アップスタート(リジ3歳/父フラッター) フロリダダービー2着
ファーライト(リジ3歳/父ノーショナル) アーカンソーダービー2着
イッツアノックアウト(牡3歳/父レモンドロップキッド) フロリダダービー4着
ファイアリングライン(牡3歳/父ラインオブデヴィッド) G3サンランドダービー1着
ダンジグムーン(牡3歳/父マリブムーン) ブルーグラスS2着
ウォーストーリー(セン3歳/父ノーザンアフリート) G2ルイジアナダービー3着
テンセンドール(牡3歳/父ウォリアーズリワード) ウッドメモリアルS2着
スタンフォード(牡3歳/父マリブムーン) G2ルイジアナダービー2着
ミスターズィー(牡3歳/父マリブムーン) アーカンソーダービー3着
オーチョオーチョオーチョ(牡3歳/父) ブルーグラスS3着
ボーロ(牡3歳/父テンプルシティ) サンタアニタダービー3着
メイドフロムラッキー(牡3歳/父ルッキンアットラッキー) アーカンソーダービー4着

ベイヤースピード指数はフロリダダービー組が上位を占め、マテリアリティ110、アップスタート108、これに続くのがSAダービーを勝ったドルトムントの106、アメリカンファラオ105は指数的には4番目になる。またアメリカンファラオのドサージュ指数は4.23と高いのも不安材料と言えよう。しかし、アーカンソーダービーの走りを見る限り、全てを払拭出来ると思う。

ボブ・バファート調教師は、1997年シルヴァーチャーム、1998年リアルクワイエット、2002年ウォーエンブレムで勝っており、今年はドルトムントとアメリカンファラオで4勝目を狙う。ケンタッキーダービー4勝はウエイン・ルーカス調教師の記録に並ぶことになる。またヴィクター・エスピノーザ騎手は、2002年ウォーエンブレム、2014年カリフォルニアクロームで勝っており、3勝となると現役ではカルヴィン・ボレル騎手とゲイリー・スティーヴンス騎手に並ぶことになる。

特に今年は前に行く馬が多く、ペースは上がるだろう。枠順にもよるだろうが、アメリカンファラオの先行は考えにくく、前団の後ろから抜け出す競馬になると思われる。3~4コーナー中間から仕掛けて行き、直線早めに抜け出すのが理想的。前団壊滅を予想するとインターナショナルスターの追い込みが不気味だが、それは2着争いまでと見た。

さて、18日ウエストヴァージニア州チャールズタウンで行なわれたG2チャールズタウンクラシック(D9F)に出走した目下ワールドランキングのトップの座を香港のエイブルフレンドと分かち合っているシェアードビリーフ(セン4歳/父キャンディライド)が、終始後方のままバックストレッチで競走を中止するハプニングが起きた。

レース後シェアードビリーフは近くの病院に運ばれX線による検査も受けたが、異常は見られなかった。獣医によると呼吸器の軟部組織に少し腫れが見られるというもので、ジェリー・ホーレンドーファー調教師は全く気にしていない。マイク・スミス騎手はゲートを出た時から普通じゃなかったとコメントしている。チャールズタウンの競馬は、シェアードビリーフにとって初めてカリフォルニアを離れてのレースだった。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。