トレヴ2015年は完璧[和田栄司コラム]

凱旋門賞を連覇しているトレヴは、6月28日、欧州中距離レースのG1サンクルー大賞典(芝2400m)を勝つ為、パリ、ブローニュの森に位置するサンクルー競馬場に3度目の姿を現した。カタールのサラブレッド事業体アルシャカブレーシングのシェイク・ジョアン殿下が所有するモーティヴェーター産駒の5歳牝馬は、ジャドモントのG1勝馬フリントシャー、アガ・カーン殿下のドバイシーマクラシック勝馬ドルニヤを再び抑えての優勝となった。

「彼女はとても楽に勝てました。追ったのはほんの少しだけです」とクリケット・ヘッド=マーレック調教師は共同記者会見の席上で話す。ボン(良)表示の馬場、2分27秒59の速い時計、トレヴは今シーズン2度目の競走もパーフェクトな内容で完勝した。トレヴの2015年最初のレースは5月29日サンクルー競馬場で行なわれた4歳以上牝馬によるG2コリーダ賞(芝2100m)、8頭立てだった。

マーレック調教師はペースメーカーのシルヴァプランナを用意、ティエリ・ジャルネ騎乗のトレヴは内の5番手にポジションを取り、直線残り400mを過ぎて仕掛け、残り200mで抜け出す楽な競馬だった。ボン表示の馬場、時計は2分12秒99とかかってはいるが、内容が素晴らしい。4馬身開いた2着争いは、早めに抜け出したG3勝馬メイヘムをG1オペラ賞勝馬ウイアーがラストストライドで交わし決着した。

2戦目のサンクルー大賞典でもマーレック調教師はアルシャカブレーシングのアルタイラをペースメーカーに使った。アルタイラはペースをセットして、4コーナーでは馬場のセンターに進路を取って早くもレースから外れた。この為、2番手にいたフリントシャーは残り400mで先頭に立ち、ヴィンセント・チェミノード騎手は快適なクルージングでトレヴやドルニヤに差を付けたが、道中4番手にいたトレヴが早めに2番手に上がり、残り100mでエンジン全開、50m残して一気に差し切った。

3着ドルニヤは外枠発走が影響したか、中団7番手からの競馬は後手に回り、1馬身4分の1、2馬身半、今年前半の3戦とレースが余りにも違い過ぎた。トレヴは2013年に3歳でオルフェーヴル以下を破って凱旋門賞を勝ち、昨年10月に2度目の凱旋門賞を勝って引退を決めた。ドバウィとの交配が計画されたが、凱旋門賞3連覇というとてつもない歴史的勝利の為に一転、現役続行が決まった。

全ての計画が上手く行くなら、トレヴは9月13日ロンシャン競馬場で行なわれるG1ヴェルメイユ賞(芝2400m)で凱旋門賞の最終プレップを行う予定である。トレヴは6月28日のサンクルー大賞典で5つ目のG1を勝ち、通算成績を11戦8勝、2着1回、3着1回とした。ジョアン殿下のレーシングマネージメントを務めるハリー・ハーバート氏は「これは本当にエキサイティングだ。彼女はこれまでよりも上昇を続け、理想的で印象的な走りを見せている」と絶賛している。

目下凱旋門賞の前売りオッズでトレヴを追っているのが、今年のダービー馬ゴールデンホーン(牡3歳/父ケープクロス)。ゴールデンホーンは、4日、英サンダウン競馬場のG1コーラルエクリプス(芝10F7Y)で古馬を相手に逃げ切り勝ちを演じた。フランキー・デットーリ騎手は1番枠に決まった時点で先行を決め、4コーナーでG1馬ザグレイギャッツビーにクビ差まで迫られたものの、最後のハーフハロンは突き放して3馬身半差でG1を連勝した。

ジョン・ゴスデン調教師は「凱旋門賞を考えた場合、次のレースは最終プレップになる。まだ決めてはいないが、月末のキングジョージもそのオプションの1つ」と話している。コーラルエクリプスを回避したものの未だ4番人気に支持されている仏ダービー馬ニューベイ、こちらの方はいささかトーンダウンして、8月15日にドーヴィル競馬場で行なわれるG2ギョームドラーノ賞を使うことが決まった。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。