またまた関東馬だ、藤沢厩舎だ!サトノアレスが3連勝で頂点へ!!【平林雅芳の目】

サトノアレス

16年12/18(日)5回阪神6日目11R 第68回朝日杯FS(G1)(芝1600m)

  • サトノアレス
  • (牡2、美浦・藤沢厩舎)
  • 父:ディープインパクト
  • 母:サトノアマゾネス
  • 母父:Danehill

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土曜よりも気温は上がったはずなのだが、体に感じる寒さはさほど変わらぬ師走の阪神競馬場。先週に続いてフランケル産駒の無敗馬が牡馬を蹴散らすのかと、パドック廻りはけっこうな人、人、人で埋まる。
その期待を背負ったミスエルテ。直線の半ばでそれなりに伸びては来ているが、前走の様なスパっと切れる脚でない。先週と同じだったのは勝ったのが関東馬であり、藤沢和厩舎だったこと。ディープインパクト産駒のサトノアレスが、逃げ粘るボンセルヴィーソを交わして先頭に立つ。大外をモンドキャンノが追い込んできたが、馬体を併せに行ったのか、鞍上の動きで半馬身の差を残してゴールを駆け抜けた。

先週の阪神JFは、ディープインパクト産駒が1頭も出ていないG1レースであった。その事自体が珍しいもの。今週はちゃんと2頭の出走。しかし人気は圧倒的にミスエルテ。ソウルスターリングと別れての出走とか、いろいろな噂が飛ぶ。パドックでの周回は、少し小走りになったりとドッシリ感はないものの、こんなものかと思ってしまう。
クリアザトラックがキャリア1戦を物語るかの様に、やや気合を出し過ぎ。レッドアンシェルも心のなかのマグマが沸騰点に達したかの様にうるさい。サトノアレスは輸送してきたのに、おっとりとして周回している。最後尾のまだ後ろにタガノアシュラが大人しく歩いている。眼の器具(ハッシュ何とかという馬具を装填)して、それが利いているのか、いい感じで歩いている。関東馬のトリリオネアやボンセルヴィーソも、それなりにいい。

いつもの席に帰って返し馬を観る。いきなりタガノアシュラが馬場内から出てきて、真っ先に1コーナーへと去っていった。本当に落ち着いていて、何か今日はいい走りをしてくれそうな予感がする。
サトノアレスともう1頭だけがゴール板を過ぎて1ハロンあたりまで歩いて、そこからのキャンターに入った。後はおしなべて馬場入りしてすぐに右へと走り去って行く馬ばかり。見渡すかぎり人、人、人であるが、後日判ったのが、入場者が昨年を下回る2万6千人少しだったとは思えない程。

生ファンファーレの中でゲート入り。今日はミスエルテも互角以上のゲートの出であった。すぐにボンセルヴィーソが前に出て行く。最内のレヴァンテライオンが行く。タガノアシュラはやはりそんなに速くなく、前ではレースが出来そうもない。追い込むいい機会かと心の中で思う。流れが落ち着いて行く。最初のカーブに入るあたりでそれぞれの位置を確認する。ミスエルテは馬群の真ん中より前あたり。サトノアレスが馬群の切れめにいる。その後ろあたりにタガノアシュラ、モンドキャンノがいる。
淡々とした流れで、1000mを60秒チョイで行くボンセルヴィーソ。あとは直線で弾けるかの勝負となりそうだ。
4コーナーが近づいて一気に馬群が短くなる。ミスエルテのすぐ横の外にサトノアレスが上がってきている。先頭から最後尾まで、ほんの4馬身ぐらい。

直線に入ってきて全体が見渡せる。ボンセルヴィーソはまだ楽。左右に広がった馬群の真ん中あたりにミスエルテが見える。その横をサトノアレスが先に動いて行って、一気に前へと出てきた模様だ。その動きにミスエルテが付いて行けていない。内ではボンセルヴィーソが、またリードを広げた。逃げ切りかと思って視線を外へと切り替えた時には、サトノアレスの馬体があっさりと前に出ていた。そして外を凄い勢いでモンドキャンノが迫ってきて、2頭の争いとなる。ミスエルテは馬場の真ん中を伸びてきたが、ボンセルヴィーソを交わすまでに至らなかった。

レッドアンシェル、ダンビュライトは伸びを欠いてしまっていた。前へ行った組ではボンセルヴィーソが頑張ったし、2番手のトラストも電光掲示板に乗る粘りをみせた。タガノアシュラは、武豊Jが『ボコボコした馬場では動けないみたい。もっと綺麗な馬場の方がいいかも』と語っていた。ゲート前の輪乗りの段階でまたスイッチが入ったかの様にテンションが高まっていたタガノアシュラ。そこらの気性面がやや問題か。

9Rのロイカバードが勝ちハクサンルドルフが2着したレースでも、馬場の大外の馬の伸びが内や真ん中の馬の伸びと数段違っていた。この朝日杯FSでも、ミスエルテが通ったコースよりももっと外目の伸びが断然にいい。PVで見ても、道中も外と内の色の黒さが違っていた。勝ち馬、2着馬はそのいいところを通ってきている。タガノアシュラが同じ位置にいながら外へ出せるだけの脚色もないのが致命的になっていた。かくして無敗牝馬での戴冠はならなかった。

ディープインパクト産駒のサトノアレスが見事、未勝利戦から3連勝で牡馬の頂点に立った。惜しむらくは、そのサトノアレスを札幌で負かしたサングレーザーがゲートに並べなかったこと。おそらくいい勝負をしていたに違いないだけに、今後のサングレーザーに注目としておきたい。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。