こんな馬場が得意 それにしてものサトノクラウンの伸びだ!【平林雅芳の目】

サトノクラウン

17年6/25(日)3回阪神8日目11R 第58回宝塚記念(G1)(芝2200m)

  • サトノクラウン
  • (牡5、美浦・堀厩舎)
  • 父:Marju
  • 母:ジョコンダ2
  • 母父:Rossini

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予報を大きく裏切る当日の空。だが夜半に降った雨の影響はかなりで、芝のレースでは内を空けて外目での勝負となっていた。シュヴァルグランが先手、シャケトラが2番手でキタサンブラックがその後ろにつける流れ。4角で外から前の2頭に並びかけていく姿を見て今日も行けると思った大勢のファンの声援が悲鳴に替わったのは、直線半ば。次々と抜かれていくキタサンブラックに、競馬の怖さを改めて思わせるものであった。サトノクラウンの勝利よりも、キタサンブラックの負けっぷりに沸いてしまった今年の宝塚記念となった。

朝から場内を歩くのに手間取っていた。どこへ行ってもかなりの人で溢れている。そして場所取りで歩くスペースが狭くなって、よけい歩きにくくなってしまっていた。開き直って9R、10Rとパドックにい座って、場内放送の声が聞こえにくい歓声のたびにどうだったのか気にはなるが、動かずにいた。
社台のユヒさんが傍に来て《度々おめでとうございます》と言ってくれて、《ああ!10Rも勝ったんだ》と、順調に来ていることに安心していた。iPadでJRA・VANのレースビデオが見れる頃合いにコースどりを確認して、キタサンブラックの乗り方は大体想像できた。内へ入ることはしないだろうから、逃げはなし。好位の2、3番手で進めるだろう…と。

騎乗合図の前にパドックを後にして、検量室上のカメラマン達がいる場所で馬場入場、返し馬を見ていた。《ウン、悪くないな~》とまずはひと安心。後ろの場長室には、宝塚のスターの卵なのか、宝塚歌劇団の人たちが大勢が来ていた。昼にはゲストの《真琴つばさ》さんの姿もあった。《細いな~》と思えるスタイル。宝塚記念のムードが盛り上がっていく。

レースのビデオを見て、《こんな馬場だとサトノクラウンとゴールドアクターがうまいのだろうな~》と見ていた。そのサトノクラウンが向こう正面に入って、すぐにキタサンブラックの後ろから横まで来て、探りを入れるかの様な動きをする。その後の3コーナーではまた後ろへと下げる乗り方。あれは何だったんだろうと思えた動きだった。

火曜朝の坂路監視小屋で音無師が、『あの馬場であの流れはかなり速いぞ~。付いて行った馬がみんなバテたぞ。うちのもそんな感じやった・・』と言っていた。
ラップを振り返ると、スタート直後の1ハロンが12.5と4つめが13.1、次が12.3。そして最後の苦しいゴール前が12.2だが、後は7つのハロンで11秒台をマークである。それも逃げたシュヴァルグランにしろシャケトラにしろ、内を空けて4頭分ぐらい外を通る距離ロスがあってのものである。ゴールドアクターなどはスタートして1ハロンも行かないうちから外へと進路を取っていく横山典Jの乗り方である。

中団の外目でレースを進めた3頭が上位を占めたのも、納得の流れなんであろう。ゴールドアクターだけは、4コーナーで外に密集していたからなのか進路を内目に取ってきた。そこで前にいた内の2頭がなかなかバテなくて、スペースが出来るまで待ってからの追い出し。あそこがもっと早めに空いていたら、この着差はもっと際どいものになっていただろう。

キタサンブラックは、ビデオで見ると最初のカーブに入る時にもクビを大きく降る仕草。こんなことはあまり見たこともない。何よりも、4コーナーに入る時、前のシャケトラに並びかける時に鞍上が左ムチで肩ムチを入れていた。あそこで促しているのに、スイッチがそう入っていかない。そんな感じに見受けた。
何よりも、戦いから帰ってきて枠場からかなり遠いところで馬から降りた時のジョッキーとトレーナーの会話の重苦しくて少ないことよ。担当さんが馬の手綱を持って鞍を外す時の《間》も、誰もが言葉が出ないといった雰囲気であった。こんなキタサンブラックを見たことがない。そんな宝塚記念が終わりました。

大阪杯、天皇賞、そして宝塚記念の3つを勝ったら2億円のボーナス。この意味が良く判ります。やれるものならやってみろと言うことでしょう。
常に全力で走り切ってきたキタサンブラック。疲れも溜まっていたのでしょう。前へ行って下がったシュヴァルグランにも、また抜かれるゴール前。
馬には申し訳ない宝塚記念だったのかも知れません。ゆっくりと休んでください。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。