研究員ヤマノの重賞回顧

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9/16(日)、中山競馬場で行われたセントライト記念(3歳、G2・芝2200m)は、中団から競馬を進めた柴山雄一騎手騎乗の1番人気ロックドゥカンブ(牡3、美浦・堀宣行厩舎)が、4角手前でインに切れ込むと、最後の直線では馬場中央から豪快に脚を伸ばし、大外から強襲してきた2番人気ゴールデンダリアの追撃を1.1/4馬身抑え優勝した。
勝ちタイムは2分12秒0(良)。
さらに3馬身差の3着には14番人気スクリーンヒーローが入線。
この上位3頭が菊花賞(GI)の優先出走権を手に入れた。
このレースは戦前は混戦が予想されたが、結局は無傷の3連勝馬とダービー出走の素質馬2頭によるマッチレースとなり、力通りの決着となった。
この2頭の現時点での力差はほとんどないように思えるが、今回の勝敗の明暗を分けたものはなんだったのだろうか?
展開・馬場適性・斤量差など様々な要因が挙げられようが、1番の要因は、“伸びしろの差”だったのではないだろうか。
勝ったロックドゥカンブは南半球産の遅生まれながら、前走3連勝で重賞をモノにしていた。
他の馬と比べれば、成長力の伸びしろはかなり大きいように思える。
当然本番でも有力候補に挙げられるだろうが、対するゴールデンダリアとてここは休み明けの秋緒戦で、本番では調子を大きく上げてくるに違いない。
さて、3歳クラシックの最後の1冠に輝くのはどの馬なのか。


同16(日)、阪神競馬場で行われたローズS(3歳牝、G2・芝1800m)は、向こう正面でハナに立った安藤勝己騎手騎乗の1番人気ダイワスカーレット(牝3、栗東・松田国英厩舎)が、その後も絶妙のペースで逃げ脚を伸ばすと、直線でインから強襲してきた2番人気ベッラレイアの追撃を1/2馬身差抑えて完勝。
勝ちタイムは1分46秒1(良)。
さらに1/2馬身差の3着には3番人気レインダンスが入線。
この上位3頭が秋華賞(GI)の優先出走権を手に入れた。
勝った桜花賞馬ダイワスカーレットの強さは誰しもが認めるところだ。
しかし、オークスを無念の回避した裏にはある事情があった。
春は強烈なパフォーマンスを発揮する裏で、実は“体温の不安定”に悩まされていたのだった。
牝馬には有りがちのことのようだが、夏を越えてようやく体温も安定してきたという。
これで実力はいかんなく発揮できることだろう。
今回のレースが着差以上に強い勝ち方だったことは、ゴール前で鞍上が手綱を緩めていたことからも分かる。
さて本番では、いよいよあの強敵と再び激突する。
厳しい夏を越えた牝馬同士のケレン味のない力勝負が今から待ち遠しい。


翌17(月)、阪神競馬場で行われた阪神ジャンプS(3歳上、JG3・芝3140m)は、道中4番手からレースを進めた小坂忠士騎手騎乗の1番人気コウエイトライ(牝6、栗東・田所清広厩舎)が、徐々に進出し、3角で先頭に立つと、最後の直線でインから伸びてきた7番人気メイショウタローの追撃を二枚腰を使って振り切り、2馬身差でレコード勝ちを成し遂げた。
勝ちタイムの3分27秒9(良)<レコード>。
さらに7馬身差の3着に8番人気のオースミサムソンが入線。
抜群の安定感と強さを誇るコウエイトライだが、前々走では2.0秒差6着に破れ、能力の翳りが心配されていた。
前走の快勝で雪辱を果たしたわけだが、その調子が本物かどうか、まだ半信半疑だったのは私だけではないだろう。
しかし、今回のレコード勝ちでその疑念は払拭され、強さが改めて証明された。
今度この強い強い牝馬の牙城を脅かす馬は一体誰なのだろう。
次の焦点はいよいよそこに絞られてきた。


同17(月)、札幌競馬場で行われたエルムS(3歳上、G3・ダート1700m)は、中団からレースを進めた池添謙一騎手騎乗の2番人気メイショウトウコン(牡5、栗東・安田伊佐夫厩舎)が、3角からマクリ気味に上がっていくと、最終コーナーでは流れるようにスムーズな動きで、逃げる3番人気マコトスパルビエロを楽にかわし、そのまま力強く伸びて、3.1/2馬身差をつけて圧勝した。
勝ちタイムは1分43秒3(稍重)。
さらにハナ差の3着には1番人気のロングプライドが入った。
それにしても強い競馬だったが、この馬が初勝利まで13戦を要し、路線をダートに替える前の昨年春まで、500万さえ勝てなかった馬だとは到底思えない。
それが昨夏に芝からダートに路線変更後は、周知の通り破竹の快進撃。
この馬の一変ぶりを目の当たりにすると、現在、能力と使われてる条件などが合わずに埋もれている大物が、他にもまだいるのかもしれないと思えてしまう。
競走馬の出走する条件や戦法を決めるのは、あくまで陣営サイドだ。
でも、だからこそ陣営は競走馬に対してあらゆる可能性を模索して欲しいと思う。