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鈴木裕幸調教助手

鈴木裕幸調教助手

注目の良血としてデビューしたものの、新馬戦はその前評判を上回る圧巻の競馬。初戦は2.9倍、続く京都2歳Sは1.2倍と、それは単勝オッズにも表れていた。引っ掛かりながらも全く危なげない競馬で2戦目も快勝すると、次なるローテは厩舎の大先輩ヴィクトワールピサと同様のラジオNIKKEI杯2歳S。母シーザリオも担当、偉大なる名牝の背中を知っている鈴木裕幸調教助手に、エピファネイアのポテンシャルと今後の可能性を伺ってきた。

掛かる課題を残しての圧勝劇

-:2連勝中のエピファネイアなんですけど、前回の勝ちっ振りというか、レースを振り返っていただけますか?

鈴木裕幸調教助手:やっぱり思っていた通りというか、前半掛かっちゃいましたね。ただ、(福永)祐一騎手も向正面の途中から上手く折り合ってくれたので、そこからは安心して見てられましたけどね。まあ、最後も軽く仕掛けただけで、無理せずに楽な勝ち方してくれたので、馬のダメージは少なくて良かったかなと思います。やっぱり、現在の課題でもありますけど、ちょっとハミ掛かりが良過ぎるところ、ちょっと融通が利き辛いところが今後、まだまだ改善の余地があるかなと思っていますけど。

-:その掛かることがテーマというか、そういう馬だと思うんですけど、2戦目は特に1回使って挑んだレースなんですけど、全体のペースがすごく遅かったじゃないですか。

鈴:デビュー戦より遅いぐらいだったと思うんですけどね。(1000m通過が)1分4秒ぐらいですものね。

-:その状況の中で上がり11秒が3発出ていますから。

鈴:競馬を2回経験した中での超スローを結果として我慢しきれた、と言うのは今後に向けて、すごく収穫かなと。あと、スローの上がり勝負、瞬発力勝負ということにも上手く対応してくれたというのも、一つ収穫があったのではないかなと思いますけどね。

-:2戦目に収穫が得られた一つの原因というのは、初戦も楽に勝ててるというのがあるんですかね。全開では全然、走ってないじゃないですか。いやらしいぐらいの余裕があって。

鈴:ステッキすら打ってないですからね。それは何とも言えないですけどね。逆に初戦、前からもう少し作っていけてれば、もうちょっと楽な競馬もできたのかなと。ただ、そういう面では教育というか、調教という面では少し足りない部分が後々にずれ込んで、今に来ている部分もあるかなとは。引っ掛かるという面ですけど。そこはやっぱり、反省点ではありますね。

-:掛かるといっても、色んな掛かり方とかタイプがあると思うんですけど。

鈴:結局、我慢させにいった時に、少し操作性という意味で融通が利かなくなっちゃう。それをグッとくわていても……。感覚的なものなんですけど、上手くそこで納得してくれていれば良いんですけど、ちょっと、その範疇からハミ出しちゃっている行きっ振りなんでね。



-:もうちょっと頑張ろうとしてしまうと。

鈴:今の掛かり方だと、上手くエネルギーが溜まりきらないですね。現状では通用してますけど、これがクラスが上がって、メンバーが強くなってくると、そこの道中のロスというのが、競馬の結果に響いてきますから。そういう意味ではウチの厩舎全体のテーマではありますけど、動きという無駄のない走りを今後、あの子も含めて、追求していかなければなと思ってますけどね。

-:ただ、キャリア2戦目なので、ある程度、遅いラップへの対応は見えてきているんですけど、これからクラスが上がった時に流れた場合にどうなんだというところは、まだ、見てないじゃないですか。クラスが上がって、今回のラジオNIKKEI杯2歳Sでもちょっとは速くなると思うんですけど、そこへの対応力というのはどのようにご覧になっていますか?

鈴:その面に関しては未知ではありますけど、正直、そこまで大きな不安としては持っていないです。こちらとしては。

-:むしろ流れて、ある程度の折り合いが付きやすいと?

鈴:そうですね。祐一騎手もそういう感じで思ってくれていると思いますし、流れてくれる分にはそこまで不安ではないかなと。まあ、分からないですけどね、こればっかりは。

-:やってみないと分からないけども、その方が良さそうだと。

鈴:今はペースが落ち着いた時に、もう少しリラックして走ってくれることの方が、現状では最優先課題かなと思っていますんで。

-:と言うことは2戦目でも大分、力んでいる部分というか。

鈴:まあ、祐一騎手が「心が折れかけた」というぐらいですからね。帰ってきて言いましたよ。折れんで良かったですねと。強よなったんちゃいますかと(笑)。

-:それぐらい掛かったという。

鈴:でも、向正面途中でスッと折り合った時点で「今日の仕事は終わったな」って「あの時点で思った」って言ってましたから。まあ、ジョッキー自体はそれだけ自信を持ってくれているんでしょうね。馬に対して、可能性も含めて。もちろん、相手があっての競馬ですし、他にも関東にも関西にも強い馬が一杯いるので、これから切磋琢磨してになるんでしょうけど。

母と父の良さを引き継いでいる馬

-:エピファネイアのお父さんのシンボリクリスエスですが、若干、繊細な面というか、敏感過ぎる面がある種馬じゃないですか?

鈴:そうですね。ウチに女の子であったり、男馬であったり、他にもいますけど、やっぱりテンションが上がりやすかったりという子が多かったように見受けられます、現状は。

-:その中でエピファネイアの性格というか、どうですか?

鈴:性格的にはお母さんに似ていると思いますけどね。お母さん自体もF1カーみたいな感じでしたからね。常にフルスロットルのアクセル全開で、最初から最後まで。その中でどれだけアクセル踏みながらブレーキを少しずつ踏んでいけるかというような気性でありましたから。そういう面では似ているのかなと思いますけどね。ただ、お母さんはその中で、無駄な動きがなかったですし、競馬に行って、ああいう力をロスするような掛かり方というのがなかったので、それが結果にも繋がってくれてたのですけれど。

-:シーザリオのレースで、キャリア2戦目の寒竹賞、中山のレースを勝った時に外目の3番手ぐらいで、押し切ったレースがありましたよね。あの時は相当、強いと思ったんですけどね。あのポジションを取れて、それで折り合いが付いて、終いまで伸びてくるといったら、ド本命の競馬ですからね。メチャクチャ強くて、これはスゴい排気量というか。

鈴:でも、息子にも受け継がれているとは思いますし、正直、その可能性は十分に秘めているなと思いますけど。

-:あのお母さんのパワフルさというのはスペシャルウィークというイメージがなくて、お母さん方はサドラーズウェルズですよね。

鈴:そのヨーロッパの血を受け継いで、それが上手く日本のスピードと融合した訳で、今回はそれとはまたちょっと変わるのかもしれないですけど、それで出たお母さんにシンボリクリスエスというのが……。まあ、元々、クリスエスを付けた理由というのが、やっぱり体質が強いという面を期待して付けた訳ですけど、それ以外でも上手く、今までのクリスエス産駒とは違う形で出てきてくれているのかなと思います。



-:シーザリオの4世代目の3番仔でしたかね?

鈴:そうです。3番目ですね。

-:今の段階でどこまでの器かということを聞いてはダメでしょうか?

鈴:何とも今の現状で、どうこう言って良いものか分からないですけどね(苦笑)。期待はしてます、はい。

-:そのエピファネイアと付き合ってて、1番難しい部分というのはどこでしょうか?

鈴:他の馬と比べて難しいというのは特に感じないです。やっぱり、言葉をしゃべらへん他の生き物と付きあっていくのは大変だと思いますよ。好きでやっていることですけども。ずっとその馬と2人だけの世界で、仕事をできる訳じゃないじゃないですか。そこにはやっぱり、他の人間なりも色々絡んできますし、他の馬も絡んできますので。そういう意味では色んな意味で頭を悩ますこともあれば……。

-:ファンも1戦1戦期待していると思うんですけど、上積みというか、競馬慣れというか。

鈴:あんまり周りが騒ぎ過ぎないで下さい(笑)。ヒッソリと気付けば、春、ああ、いたなみたいな感じで。デビュー戦終わってからも、ちょっと騒がれ過ぎなところがあって、まだ何とも言えないですし……。

鈴木裕幸調教助手インタビュー(後半)
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【鈴木 裕幸】 Hiroyuki Suzuki

1977年6月生まれ、京都府出身。
競馬とは縁のない家庭に生まれるが、中学生の頃、ふとした時に目にしたダイユウサクが勝った有馬記念をテレビで観て、初めて競馬という職業を意識する。 ジョッキーとしては、身長・体重・視力などが適さなかったため、厩務員を目指すことを決意。高校時代に京都競馬場の乗馬苑で乗馬を始め、高校卒業後、北海道の幾つかの牧場を渡り歩き、2004年に競馬学校厩務員過程に入学。
そこから、角居厩舎に入ると、シーザリオ(オークス&アメリカンオークス勝ち)、フレンドシップ(ジャパンダートダービー)、ロールオブザダイス(平安S)、ステラロッサなどを担当した。日々の仕事に対してのモットーは「ルーティーンにしないこと、繊細に務めることを心掛けたい」と語る。