競馬YouTuberとして一躍名を挙げ、各媒体に引っ張りだこの佐藤ワタルが、地方&海外レースを展望。若くして人並み外れた知識量、分析力を披露する。
藤田菜七子騎手が今年初勝利!行けなかった成人式より大切なこと
2018/1/8(月)
1月8日、中山7Rで2018年初勝利を挙げた藤田菜騎手
●大外一気で1着同着「よく頑張ってくれました」
あけましておめでとうございます。今年も「こちら検量室前派出所」では、より競馬が面白くなるような出来事などについて触れていこうと思います。昨年に引き続き、当コラムをよろしくお願いいたします。
さて、2018年最初の中央競馬開催が終わった。1月8日は成人の日。あいにくの曇天だったものの、中山競馬場に向かう朝の武蔵野線には晴れ着姿の女性も多く乗っており、その姿は実にまぶしいものだった。
中央競馬のジョッキーの中でも荻野極騎手、菊沢一樹騎手、坂井瑠星騎手、川又賢治騎手、武藤雅騎手、そして藤田菜七子騎手の計6人が、晴れて新成人を迎えた。
その6人の中で、成人の日に唯一勝利を挙げたのが藤田菜七子騎手だ。中山7Rでビックリシタナモー(牡4、栗東・音無厩舎)に騎乗し、4角12番手から鋭く伸びて先行馬たちを猛追。最後は内の石橋脩騎手が騎乗したタガノヴィッターと大接戦となり、ほぼ一緒にゴール。長い写真判定の末、検量室に「同着です!」という声が響き渡った瞬間、菜七子騎手は満面の笑みを見せ、関係者や先輩騎手に祝福されていた。
1着が同着になると表彰式は2度あるが、1着を分け合った石橋脩騎手は、菜七子騎手に笑顔で「お先に行ってください」とレディーファースト。さすが、イケメンでジェントルマンな石橋脩騎手である。
菜七子騎手は表彰式から戻ってくると「終いの脚があることは知っていましたし、よく頑張ってくれました。ゴールした瞬間勝ったと思いましたが、1着になれていて良かったです」とニッコリ。全レース終了後、隊員は改めて話を聞いた。
●追い込みは得意?その答えは……
鋭い末脚を持つビックリシタナモーについて「すごく乗りやすい馬なのですが、今日も本当に頑張ってくれました」と、届いたことに安堵の表情を浮かべた。彼女は過去にドリームリヴァールやラミアカーサなどを好走させて、追い込み馬との相性の良さを見せているが、それについても聞いてみた。すると「いつも頑張ってくれている馬のおかげです。今日のビックリシタナモーは、この短期間で2度関東に輸送されていますし、使い詰めの中でもしっかり走ってくれました。そして毎回しっかりと仕上げてくださっている音無厩舎のスタッフの皆さんにも本当に感謝しています」と答えた。彼女の口から出てくる言葉は、常に馬と人に対する感謝だった。成人式には出席できなかった。それについては「少し行きたかった気持ちはありますね……」と苦笑いを見せたが、すぐに言った。「でも、今は競馬が一番なんです。今はこれが一番大事なんです」。その口調は、自然と熱を帯びていた。
最後に、今年の抱負を聞いた。「すでに20歳にはなっていましたが、責任ある立場になったことを自覚して頑張ります。今年は後輩に負けないよう、そして先輩に負けないよう、より信頼される騎手を目指して、1つ1つ目の前のレースを頑張りたいです」。
今朝もニュースのワイドショーで『荒れる成人式』が取り上げられたばかりだが、常に謙虚で、まず感謝の気持ちを口にする菜七子騎手のような新成人は、競馬界の財産と言えるのではないか。常に技術を高めようする姿勢、そして挨拶と感謝を忘れないその姿勢は、来年以降に新成人を迎える若手騎手の手本になることだろう。
自分も菜七子騎手の姿勢を見習い、これからの取材に邁進していこうと心に決めた。
2018年初勝利を挙げ、取材に応じる藤田菜騎手
プロフィール
佐藤ワタル - Wataru Sato
1990年山形県生まれ。アグネスフライトの日本ダービーを偶然テレビで観戦して以降、中学生、高校生、大学生と勉学に勤しむ時期を全て競馬に費やした競馬ライター。『365日競馬する』を目標に中央、地方、海外競馬の研究を重ねている。ジャンルを問わない知識は、一部関係者に『コンビニ』とまで評されている。早稲田大学競馬サークル『お馬の会』会長時代に学生競馬団体『うまカレ』を立ち上げたり、北海道の牧場などに足繁く通うなど、若手らしい行動力を武器に、今日も競馬を様々な角度から楽しみ尽くしている。現在はサラブレ、一口クラブ会報などでも執筆中。血統派で大の阪神ファン。甘党でもある。