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ミルコ・デムーロ騎手



プロフィール
【M・デムーロ】
1979年イタリア生まれ。
1994年に騎手デビュー。
JRA通算成績は191勝(12/13現在)
初騎乗:1999年12月 4日 3回 小倉3日 1R コウユーラヴ(2着/8頭)
初勝利:1999年12月 4日 3回 小倉3日 9R スタジアムブルー
■主な重賞勝利
・04年皐月賞(ダイワメジャー号)
・03年日本ダービー(ネオユニヴァース号)
・03年皐月賞(ネオユニヴァース号)

外国人ジョッキー初の日本ダービー勝利騎手。人気を集める馬で結果を残すため、ファンからの信頼も厚い。07年中日新聞杯ゴール前の飛行機ポーズはファンのみならず、競馬関係者の間でも話題となった。




記者‐デムーロ騎手、こんにちは。今日はよろしくお願いします。

デムーロ-「コンニチハ」

記者‐日本語は・・・

デムーロ-「ペラペラです(笑)」

記者‐(笑)確かにお上手ですね。日本語での会話に問題のないデムーロ騎手ですが、今回は念のため特別通訳といたしまして、デムーロ騎手と親交の深い、領家厩舎の松田全史(まさふみ)助手にもお越しいただきました。あと、デムーロ騎手のイタリアでのエージェントをされているマテオさんにも同席していただいています。松田さん、マテオさん、よろしくお願いします。

松田-「よろしくお願いします」

マテオ-「オネガイシマス」

記者‐松田さん、いつもブログの更新をしていただいて有難うございます。お二人はデムーロ騎手が初めて日本に来た頃からのお付き合いだとお聞きしましたが。

松田-「そう、俺が森厩舎にいた頃で。厩舎の中で多少英語を話せるのが俺くらいしかいなかったから、先生から『お前、面倒みろ』って言われて。エアトゥーレで重賞を勝ったり、ミルコがウチの家に来たり、公私に渡って深く付き合ってきましたね」

記者‐そうなんですか。その辺りのことも後ほどお聞かせいただきたいと思います。では、改めて伺いますが、デムーロ騎手が騎手になったキッカケから聞かせてもらえますか?



デムーロ-「ボクの父がジョッキーだったから、その影響だね。小さい時にはサッカー選手に憧れたこともあったけど、騎手以外の職業を考えた事はないよ」

松田-「ミルコ、弟もジョッキーになんねんな?」

デムーロ-「うん。今14歳で、もうすぐライセンスを取るよ。10歳くらいの頃から木馬に乗ってボクのマネをしてたんだ」

松田-「近い将来、抜かれたりしてな(笑)」

デムーロ-「ボクを抜く事は出来ないよ!抜かれた時は引退するよ(笑)」

記者‐その兄弟対決は楽しみですね。ぜひ日本で実現してもらいたいと思います。では話を戻しまして、デムーロ騎手ですが、騎手としてキャリアを積みながら、99年に初来日されます。日本に来たキッカケはどういったものだったんですか?

デムーロ-「18歳の時、JRAに『日本で乗りたい』っていう手紙を書いたんです。その時は『若すぎるからダメ』って理由で許可が下りなかったんだけど、次の年、19歳の時に許可が下りました。それで吉田照哉さんにスポンサーになってもらって」

記者‐なぜ『日本で乗りたい』と?

デムーロ-「イタリアの有名な馬が種牡馬として次々に日本へ行っていたからね。トニービン、ホワイトマズル、コジーン・・・こんなに一流馬が行く日本ってどんなところなんだ?って興味を持ったんだ。それで、現地に行って確かめようと思ってね」

記者‐そうですか。最初に日本へ来た頃はどうでしたか?

デムーロ-「最初の2年間くらいは辛いこともあったよ。周りと溶け込むのにちょっと時間がかかったね」

松田-「俺から見ても、最初の頃のミルコは辛そうやったな。友達も少なかっただろうし、まだ今みたいに実績を残していなかったから、乗りたい馬に乗られへんって事もあったと思うし」

記者‐それが今では。

松田-「ダービー勝つわ、乗る馬乗る馬1番人気になるわ」

記者‐辛い時期を経て、現在のような状況に至るまでに必要だったことは何でしょう?

デムーロ-「結果を残す事かな。やっぱり勝つことだね。勝っているから良い馬に恵まれるようになったんだと思う。モチロン、周りのサポートがあっての事だよ。ボクは周りの人に助けられながらここまで来たんだ」

松田-「ホンマ、ミルコの凄いところはココやね。これだけの成績を残しているのに謙虚。何ていうか、俺が思うに『日本人に一番近づいた外国人ジョッキー』ちゃうかな。日本人以上に日本人ぽいところがあんのよ」

記者‐松田さんはかなりデムーロ騎手の事を理解されてますね。

松田-「もう付き合い長いもん。共感出来る点も多いし。精神的にもホンマ、日本人みたいで・・・ミルコ?どこ見てんねん」

デムーロ-「あの娘、カワイイ」

松田-「おい!聞いてへんやん(笑)!今お前のこと褒めとったのに!ホンマ最悪やな(笑)」

記者‐ちょっと気が散ってたようですね(笑)。

デムーロ-「(笑)マサ、ゴメンね」

松田-「頼むで(笑)。これで分かったと思いますけど、ミルコは女好きのええ奴です(笑)。“女好きの”のとこは太字にしといて(笑)。まあ私生活ではこんな感じで笑わせてくれますけど、ジョッキーとしては凄いヤツですよ。イタリアでも絶対に破られないだろう、っていうくらいの年間最多勝利記録を作ってましたから。ミルコ、今年もイタリアでいっぱい勝ってるよな?」



デムーロ-「(笑)うん。こないだもグループ3の重賞を勝ったよ」

マテオ-「そのレース、パソコンで観れるよ。」

記者‐レース名と勝ち馬の名前を教えてもらえますか?

マテオ-「レース名はPREMIO CHIUSURA。馬の名前はICELANDIC」

記者‐検索してみましょう。・・・あ、YouTubeで出てきました。

松田-「ミルコどれ?え?一番後ろやん。うわ、前詰まりまくってるやん。勝てんやろ、これじゃ。これ本当にミルコ?」

デムーロ-「うん。ここから外に出したら伸びた」

松田-「お、おおっ!おーっスゲー!勝ったやん!これは結構難しいレースやったんちゃうの?」

デムーロ-「イージーだったよ(笑)」

マテオ-「ミルコは勝ったレースはみんな『イージーだった』だからね(笑)」

記者‐(笑)では、デムーロ騎手がレースの時に気をつけている点を教えてください。

デムーロ-「いろいろあるけど、返し馬のときは注意しているよ。たまに返し馬で、長手綱にしてワーッと行っている騎手もいるけど、考えられないよ。そんな事をしたら馬はレース前に体力を使いきっちゃう。返し馬はウォーミングアップで、体を温めるものだから、ゆっくりやった方がいいと思うよ。ユタカさん、アンドウさん、イワタさんはゆっくりやっていて上手だね。この3人はレースでも上手いよ。イワタさんは追う姿はキレイじゃないかもしれないけど、馬を動かす技術は優れているね。アンドウさんも凄くソフトに乗れる」

記者‐他にも「この騎手は上手いな」って感じるジョッキーはいますか?

デムーロ-「たくさんいるけど、やっぱりフランキー(L.デットーリ騎手)だね。彼はどこからでもレースが出来るスーパーなジョッキーだよ」

記者‐デットーリ騎手の優れたところをマネをすることも?

デムーロ-「どうだろうね(笑)。それよりボクは、ジェリーベイリーには影響を受けているね。ベイリーはボクの憧れのジョッキーなんだ。彼のレースを見て、騎乗スタイルもアメリカンスタイルになったし、ムチなどの道具もスタイルに合わせてアメリカ製を選んでいる」

記者‐なるほど。ベイリー騎手の影響を。

デムーロ-「うん。あとはボクが影響を受けたのはやっぱり父親だね。今、弟が父に教わっているように、ボクも父から多くの事を学んだ」

松田-「ミルコは前に『フランキーを抜く事は出来るかもしれないけど、父親を抜く事は出来ない』言うてたからね。ホンマ父親を尊敬してるみたい」

記者‐なるほど。ちょっと話題を変えて日本の競馬で「いいな」と感じる点があったら教えてください。

デムーロ-「競馬に関わるみんなが真剣に仕事をしているところが素晴らしいと思う。馬の血統も良いし、レース当日はお客さんもいっぱい来るし。全部あげていたら時間がいくらあっても足りないよ(笑)」

記者‐日本の中で、乗りやすい、相性が良いなどといった好きな競馬場はありますか?

デムーロ-「うーん。特にないけど、新しくなった阪神は乗りやすいね。相性はどうか分からないけど(笑)」

記者‐明日の阪神では障害レースを除く11鞍全てに騎乗されますね。・・・疲れませんか?

デムーロ-「レースに乗っている時は大丈夫!そりゃレースの後は疲れるけどね(笑)。乗っている時は疲れは感じないよ」

記者‐好きな戦法、得意な戦法はありますか?

デムーロ-「特に無いね。馬によってそれぞれ戦法は変わるから、いかにそれに合わせていけるかが騎手として重要な事だと思う。いるべきポジションは馬が教えてくれるものなんだ」

記者‐日本語が上手なデムーロ騎手ですが、読みはどうですか?

デムーロ-「競馬新聞は見るよ。でもあの印が邪魔だね!『ボクの馬、全然印がついていない』って思うとガッカリしちゃうから(笑)。先入観が入るとイヤなんだ」

記者‐先入観が入るのはあまり好きじゃないんですね。では、テン乗りでレースに向かうのと、事前に調教で乗っておくのとどちらが自分に合っていると思いますか?

デムーロ-「その問題はあまり考えた事はないかな。よっぽどクセのある馬だったら事前に乗っておいた方が良いと思うけど、普通の馬だったら、返し馬の後にいろいろ考えれば十分対応出来るからね」



松田-「あれだけの短時間で馬のクセとかを掴んでレースで勝てるのは、さすがとしか言いようないですよ。普段のミルコはおもろいヤツで本当にそんな凄いジョッキーなんか?って思うくらいですけど」

記者‐先ほどのお話しでも出たようにダービージョッキーですもんね。

デムーロ-「あのダービーを勝った5月はイタリアも競馬のシーズンだったけど、ネオユニヴァースに乗るために日本に来たんだ。馬場が悪かったのもあの馬には合っていたね。凄くハッピーだった」

記者‐日本での会心のレース、ですか?

デムーロ-「そうです。でも、同じネオユニヴァースの皐月賞もエキサイティングだったね。あのレースではボクの『勝ちたい』っていう思いがネオユニヴァースに伝わった気がして・・・素晴らしい体験だった」

記者‐皐月賞2回にダービー1回。日本のG1を3勝していますね。今後勝ちたい、目標のレースはありますか?

デムーロ-「ジャパンカップ!ジャパンカップを勝つのはボクの夢なんだ。ぜひ実現させたい」

松田-「有馬は?今回チャンスやん」

デムーロ-「当然有馬記念も勝ちたいよ!たくさんジョッキーがいるのに、その中からダイワのオーナーがボクを指名してくれたんだから、一生懸命に乗るよ」

松田-「昨日メジャーに乗ってきたんやろ?どやった?」

デムーロ-「良かったよ。メジャーは調教ではヤンチャなトコがあるけど、レースに行けば大丈夫だから心配ない。レースが分かっているんだ」

記者‐デムーロ騎手はダイワメジャーで皐月賞を勝ちましたね。

デムーロ-「あの時はラッキーだった。前走でメジャーの走りを見ていたから、皐月賞でどういうレースをすればいいかが分かっていたんだ。2番手で進んで行って、残り2ハロンで仕掛ければ勝てると思っていた」

松田-「今度の有馬もそういうプランを考えてんの?」

デムーロ-「いや、特に決め付けてはいないよ。その時のペースによって変わると思うから、ゲートを出たところで決めたい。ハイペースにならない事を祈るよ」

松田-「メジャーの良いとこって何?」

デムーロ-「パワーがあるところ。最後、確実に伸びるところも素晴らしいよ。クリスマス前にファンのみんなにサプライズを送りたいね!」



松田-「ミルコ、勝ったらあれやってや。飛行機(笑)」

デムーロ-「オーケー(笑)!怒られたらまた過怠金を払うよ(笑)」

★取材日=12/13
★取材場所=栗東トレセン前・焼肉ヂャングン