みせた本格化の兆し 盾へ賞金加算命題のサトノノブレス
2014/9/21(日)
春の鬱憤を晴らした小倉記念
－：新潟のオールカマーを使うサトノノブレス(牡4、栗東・池江寿厩舎)ですが、春は阪神大賞典、天皇賞(春)と期待を裏切る結果に終わってしまいました。中でも天皇賞(春)の8着は良いポジションでハナを切って、脚を使ってしまったというか。2、3着にウインバリアシオン、ホッコーブレーヴという差し馬の展開になりましたからね。
兼武弘調教助手：良く頑張ってはいましたけどね。展開もありましたね、この馬には厳しい流れでした。
－：その分、3カ月後の小倉記念で、後にサマーチャンピオンになったマーティンボロを負かしました。
兼：これは春に使って一息入れたのが良かったですね。
－：ポジション的には3200ｍから2000ｍと中距離に変わって、ポジションを取りに行かず、この馬なりのポジションから早めに仕掛ける競馬でした。
兼：そうですね。マクり気味にいきましたね。
－：短い直線を考慮して、ということだったのですが、むしろ2000ｍくらいの方が良い可能性もあるわけですか？
兼：競馬を見ていても切れていましたしね。馬場が悪かったものの、直線で良いところに出してしっかりと伸びていましたからね。一皮剥けたかなという印象ですよ。
－：もともとこの馬は良馬場の方が良いイメージがあって、むしろ好時計で勝つ印象があったから、馬場がちょっと悪かったのがどうかな、と思いました。
兼：以前はまだトモがパンとしてこなかったところがあったので、やっぱり芯が入りつつある結果でしょうね。
－：馬体重的には2キロしか増えていませんでしたが、やっぱり順調に調教を重ねて中身が違っていた感じですか？
兼：本当に本格化してきたということですね。
「夏の小倉で見た印象で言えば、本当にこの馬は大人になってきた感じがありますね」
－：馬体も見栄えがしますよね。威圧感があって大型で、まだまだこんなもんじゃないというところでしょうか？
兼：夏の小倉で見た印象で言えば、本当にこの馬は大人になってきた感じがありますね。
－：夏前に取材をさせていただいた時には「飛躍の夏にしないといけない」という話を聞いたのですが、その通りになりつつありますね。
兼：見事に結果を出してくれましたね。前回は和田ジョッキーも上手く乗ってくれましたし。
長く脚が使える新潟の直線は絶好
－：今回は久しぶりの左回りです。この馬にとって左回りは、東京スポーツ杯2歳Sに始まり、青葉賞や、新潟など、勝ってはいないものの、上位には来ていますよね。
兼：悪い印象はないですね。それに、当時と今の状態では全然違うと思いますしね。
－：新潟もずっと使っていて、馬場状態が心配なところはあるのですが、前回の小倉記念の競馬を見たら、ある程度、馬場が悪化して時計が掛かったとしても、この馬のパフォーマンスはそんなには落ちないですかね。
兼：そうですね。前回本当に馬場が悪くて心配していたのですが、それでいてあれだけ力強い最後の末脚だったので、これぐらい本当に芯がシッカリして、タフな馬場でもやれるようになってきたんやな、という印象ですからね。
－：もともと逃げて強い競馬もあったし、2番手から押し切る競馬もあったので、性格的にあまり包まれたポジションで競馬をするよりも、スンナリした形の方が良いと思いますが、小倉記念を見ると、レース慣れをしてきて、だいぶ成長したのですね。
兼：成長したのでしょうね。ジョッキーも上手かったですが、鮮やかでしたよ。あんな競馬ができるんだなと。一皮剥けたというのが印象ですよね。
－：あれくらいの脚が使えたら、新潟で差し馬が飛んできても、押し切れる可能性がありますね。
兼：もともと長く良い脚が使えるタイプですし、新潟の直線は持ってこいだと思いますよ。
－：オールカマーが中山から新潟に替わったことが、この馬に向く可能性もありますね。
兼：そう思います。
賞金的にも万全の態勢で天皇賞(秋)へ
－：小倉記念からちょっと間隔が空いているんですけども、中間の順調さはどうですか？
兼：一度短期放牧に出まして、9月9日に入厩しました。順調に2本追い切りを消化しています。
－：今の馬体重はどれくらいですか？
兼：先週の時点で530ですかね。ちょっと余裕がある感じですね。
－：と言うことは、小倉記念の時より20キロ多いことになりますが、小倉記念を使う前はどれぐらいだったか覚えていますか？
兼：516キロぐらいでしたか。輸送もそこまで減らないという感じの馬なので、来週もありますし、プラス輸送でちょいプラスぐらいで出る感覚でしょうか。510台後半ぐらいのイメージで。秋の緒戦としては余裕のある造りでも良いと思っていますしね。
－：追い切りの感じではそんなに重さはありませんか？
兼：普段通りよく動けていますしね。今日(9/18)は、相手のアラジンがよく動く馬なので、多少見劣りして見えるかもしれないですが、ノブレスはノブレスでシッカリと順調に来れていると思いますしね。
「長く良い脚を持続するスタミナ、そういうのも必要になってくるでしょう。その辺を考えた上でもノブレスには持ってこい、と思っています」
－：この後は、賞金次第では天皇賞(秋)に向かうことになりますか。凱旋門賞組がいるから、例年よりはボーダーラインは下がってくるのかなと思いますが、ここでもう1勝しておいたら間違いないですしね。ここも前回のようなレースの自在性を活かす形になりますか？
兼：先行しないといけないという訳ではないですよ。シッカリ溜めれば溜めた分だけの末脚があるということですしね。ちょっとタフな馬場でもこなせるパワーが付いてきた、芯が入ってきたと。
－：新潟の直線はペースも遅くなりがちですし、難しいですね。意外に切れがないと押し切れないところがありますよね。
兼：長く良い脚を持続するスタミナ、そういうのも必要になってくるでしょう。その辺を考えた上でもノブレスには持ってこい、と思っています。
－：新潟の馬場は内外でちょっとバラけることが多いじゃないですか。その辺はノブレスにとったらプラスになるかもしれないですね。
兼：最後は良いところを選んで走ってくるとは思いますけどね。
－：和田ジョッキーが乗られるのですか？
兼：そうです。前走は本当に上手かったですよ。素晴らしかったです。
－：新潟の長い直線のどこかで、和田ジョッキーのガッツが飛び出すと。
兼：はい、本当に期待していますよ。
－：秋の活躍を期待しています。また、G1の時の取材ではよろしくお願いします。
兼：上でも期待いただけるように頑張りますので、応援よろしくお願いします。
(取材・写真＝高橋章夫)
プロフィール
【兼武 弘】 Hiroshi Kanetake
滋賀県出身。1983年3月6日生まれ。初めて観戦した競馬はダンスインザダークが勝った菊花賞。中学生の時に競馬好きの知り合いが多かったため、影響を受けてこの世界に入る。高校の卒業を待たずして、北海道の千歳国際牧場で修行。その後は滋賀の湘南牧場、トレセン近郊のグリーンウッドに勤め競馬学校に入学。卒業後、池江厩舎に所属。持ち乗り(エアラフォンやバトードールを担当)を経て攻め専の調教助手に。モットーは「馬1頭ずつ個々の個性を大切にする」こと。目標は「厩舎全体のことを把握できるように頑張る」こと。業界一といっても過言ではないビッグステーブルのムードメーカー的な存在。
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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