昨年デビューの新人ジョッキーは近年稀に見るハイレベルで、激しいリーディング争いが繰り広げられた。そんな中でも、2位の小崎綾也騎手と9勝差でタイトルを獲得したのは名門・音無厩舎に所属する松若風馬騎手。すでに“逃げの松若”と言われるほどスタートセンスは抜群で、減量の恩恵を生かし切った一年だった。今回はそんな当人に、初年度の振り返りと2015年の抱負を存分に聞かせてもらった。

ゲートの速さは練習の賜物

-:明けましておめでとうございます。昨年は関西記者クラブの新人賞と、JRAの最多勝利新人騎手の2つを受賞されました。おめでとうございます。

松若風馬騎手:ありがとうございます。

-:しかも、JRAの最多勝利新人騎手は高倉騎手以来、4年ぶりです。勝ち星も47勝で、文句なしですね。

松:人気馬にも乗せて頂いて、ここまで勝つことができました。周りの方々には、感謝の気持ちで一杯です。

-:それだけトレセンの人たちから愛されている実感はありますか?

松:所属厩舎の音無秀孝先生にも、本当に良くして頂いていますし、スタッフの方々にも応援してもらっています。去年は支えて頂いたおかげで、47勝できたと思っています。

-:どの先生も、所属のジョッキーをバックアップするのですが、47勝は色々なことが噛み合わないとできない数字だと思います。30勝という1つのラインが有りますが、それを大幅に超えて47勝できた理由はどのあたりにあると思いますか?

松:逃げ・先行で、減量を生かしたレースでけっこう勝っていました。これから減量がなくなってきたら、逃げ・先行のレースだけじゃダメだなと思っています。

松若風馬騎手

-:音無先生にはデビュー当初から話を伺っていて、松若騎手の良さに天性のスタートセンスを挙げていました。本人としてはどうですか?

松:競馬学校生の時から、音無先生から「ゲートは上手くなるように」と言われていたので、絶対ゲートだけは上手くなろうと思って練習していました。2歳の時のゲート試験とかも、よく乗せて頂いていました。

-:それは練習して上手くなるものなのですか?

松:本当にたくさん乗せて頂いていたので、練習もできましたし、それが繋がってきたのかなと思います。

-:騎乗停止がなかったことも、評価できるところですよね。

松:危ない騎乗もありましたが、騎乗停止がなかったのは良かったと思っています。それでも制裁はけっこうありました。再教育も受けましたし、運もあるので、もっと攻めるところ攻めないといけませんが、上手く乗ることも大切だなと思います。

-:その上手さというのは、視野の広さなどですか?

松:まだしっかり周りも見えていないですし、もっと落ち着いて乗れるようにしないといけないなと思います。

松若風馬騎手

パワーアップして差しの競馬でも

-:デビューの時に、目標のジョッキーとして内田博幸騎手の名前を挙げていました。内田さんはけっこうパワフルなイメージがあります。今後は筋力面でのパワーアップを目指す気持ちはありますか?

松:僕は体が小さくて軽いので、筋肉もたくさんつけられますし、もっと筋肉をつけて、しっかりと行かせるようにしたいです。

-:まだ当初の47.5キロから変わってないですか?

松:いえ、そんなにないです。44キロくらいです。

-:全然パワーアップできますね。日々のトレーニングはどうですか?

松:トレーニングはしているのですが、もっと強度を上げていかないといけないですね。

-:どんなトレーニングをしているか教えて頂けますか?

松:マシンを使ったトレーニングから、木馬にも乗りますし、実戦に繋がるようなものを普段からやっています。上半身、下半身問いませんが、下半身が大切なので、下半身メインでトレーニングをやっています。

-:もうちょっと身長がほしいという思いはありますか?

松:もう少し伸びたいですね。

-:理想の体重としては、47、8くらいですか?

松:そうしたいですね。


「本当にまだまだ未熟なので、馬群を上手く捌く技術も必要ですし、だからといって、前に行ってばかりでは上手くもなれないです」


-:そうなってきた時の松若風馬というのを、また楽しみとしています。デビューしてから10ヶ月乗られて、ここが良くなったというアピールポイントはありますか?

松:最初よりは、ずいぶん落ち着いて乗れるようになってきています。まだ前や横の馬しか見れていないので、もっと視野を広く、前の前の馬も見られるようにしたいです。

-:先ほど、逃げ・先行の馬で結果が出ていると仰っていましたが、これから年間トータルで活躍しようと思ったら、差し脚質でも絡んでほしい、という思いがあります。減量の恩恵はというのは、逃げ・先行だけじゃなくて、ダートでの最後の伸びなどにも使えそうな気がします。減量以外のポイントはありますか?

松:まずは減量を生かすには、逃げ・先行が一番ですね。

-:差しとなると、乗り手のテクニックも必要になってきますか?

松:本当にまだまだ未熟なので、馬群を上手く捌く技術も必要ですし、だからといって、前に行ってばかりでは上手くもなれないです。しっかり馬の脚をタメて、差してこられる競馬をしないといけませんね。

-:そのためには、前半の折り合いも重要ですか?

松:そのために力をつけて、しっかり御せるようにならないとダメですし、課題はたくさんあります。

-:小さい体からすると合う馬、合わない馬というのはあるのですか?500キロクラスの大きい馬だったら、体を持て余すことはありますか?

松:大きい馬に力負けしてしまう時があるので、もっとパワーアップして、その馬に合った乗り方をしっかりできるようにしたいです。

松若風馬騎手

松若風馬、2015年の抱負

-:装蹄師さんなので、職種が違うとは思いますが、お父さんから何かアドバイスはありましたか?

松:父親から技術や乗る面でのアドバイスは貰ったことがないです。乗ったことがないと思うので、あんまり言わないんだと思います。

-:装蹄師の息子としては、乗る前の蹄を見て、これはどうだなとか思いますか(笑)?

松:それは思わないですね(笑)。

-:それでは、期待が集まる2年目を迎えます。2015年の抱負をお願いします。

松:今年の目標は、通算100勝して、自力で減量を取ることです。

-:凄く高い目標ですね。53勝以上ですね。プラス重賞とかもですか?

松:特別でも、もっと勝っていきたいです。

-:昨年の特別はホープタウン(牡4、栗東・西浦厩舎)で初勝利でした。

松:特別は1勝ですね。1000万下でも1勝しかしてないです。残りは全て未勝利・500万下なので、もっと上のクラスでも勝ちたいです。

松若風馬騎手

-:我々、馬券ファンにアピールするところといったら、今年はこういうところを見てくれというのはありますか?“差す”松若風馬でしょうか?

松:デビュー年は、前に行くという印象がつけられていると思うので、どこからでも競馬ができると思われるような騎手になりたいです。

-:中舘英二騎手みたいなパターンでもいい気もします。

松:自在性が欲しいですね。

-:今年はパワーアップを期待していますので、より一層の活躍をよろしくお願いします。いつまでもニコニコしていて欲しいです。愛されキャラで2015年も突っ走って下さい。ありがとうございました。

松:ありがとうございました。

(取材・写真=高橋章夫、写真=競馬ラボ特派員)

松若風馬騎手

松若風馬騎手

1/12(祝・月)、所属厩舎のプレシャスルージュでV!
新年から目標の一つである特別戦での勝ち星をマークした