ノンコノユメ 計算し尽くされたチャンピオンズC挑戦への過程
2015/12/2(水)
東京マイルに拘ってきた理由
-:大井の2000mであの馬場で差し切ったのはビックリしましたね。
加:あれはすごかったね。一杯一杯じゃなかったしね。最後も余力があったんだよね。
-:あの日の馬場傾向から言ったら、クロスクリーガーがほぼ逃げ切るかと思って。すごいなと思うのは、どういう条件でも最後は必ず来て、必ず差しています。
加:そうそう。前哨戦で東京のマイルを選んだのは、やっぱり次走に向けて追走が楽になるからね。この間のラップが34秒4でしょ。そこから正味8~12馬身遅れくらいじゃない。かなりユックリ見積もったって、自身は36秒4でしょ。もうちょっと速くて36秒フラットぐらいかな。36秒フラットと言うと、中京の1800mの大体最初の3ハロンは36秒をそんなに切っていかないので、ほぼ逃げ馬のペースが36秒だからね。そうすると、この間の東京の追走と36秒フラットくらいだから、かなり楽に追走できるか、もしくは追走できなかったとしても流れに乗れる。それを想定して、あえて東京の1600を使っている訳で、58キロでも。勝ち負けは関わらずね。
-:しかし、JBCクラシックには一応登録していたのですね。
加:あれは、大井競馬場に敬意を表しました。これは本当に理由があるのですが、僕が出馬投票に行った時に登録馬が少なかったの。それで、15着、16着のような馬が入りそうだったんです。中央の馬としてそれは申し訳ないよ。やっぱり向こうに失礼だから。最終的に出られても、本線で出られるような馬じゃないだろうと、大井競馬場に失礼だと思ったから、あえて。登録すると使いたくなるから、本当は登録したくなかったんだけどね。
「馬は(斤量を)背負えば背負うほど走らないから。斤量が重いから壊れるんじゃないから。そういう意味では最高の叩き台なんだって。追走のペースが、次は楽になるというのが一番のポイントだよね。でも、みんなそういう風に見ないでしょ」
-:今回や次のフェブラリーSを考えても、やっぱり武蔵野Sということですか?
加:馬が一番楽だよ。勝つかどうか分からないですが、馬は追走も一番楽だし、ワンターンでしょう。
-:58も全然気にせずという感じですか?
加:気にせずというか、そういう趣旨でそのレースを使うのは、58キロを背負っていると、あの馬はそのままスピードが出てしまったけど、普通の馬はスピードが鈍るわけ。スピードが鈍るということは馬が壊れないから。スピードが出るから壊れるんだからね。
-:むしろ前哨戦の位置付けとしたら、ダメージが残らない競馬だったと。
加:本当にその通りです。馬は背負えば背負うほど走らないから。斤量が重いから壊れるんじゃないから。そういう意味では最高の叩き台なんだって。追走のペースが、次は楽になるというのが一番のポイントだよね。でも、みんなそういう風に見ないでしょ。
-:中京は追い込みが利き辛いですが、その辺りはいかがですか?
加:やっぱり直線が長いと言っても、東京よりはね。それで、コーナーの角度も全然違うからね。あんまり中京で噴かすと外に振られるでしょう。かと言って、直線に向いてからだとエンジンが掛かるまでに時間も掛かるし、すでにもう坂が始まっていたりするんだよね。上って、坂が始まる手前ぐらいの100mぐらいで噴かした方が一気に坂を上るんだよね。だから、中山の坂の下まで持ったきりで、追い出した時に外の馬に差される時が多いじゃない。あれは持ち過ぎちゃうんだよ。
-:後ろの馬が加速して来るということですね。手前から加速していかないと。
加:そういうこと。中京のコースは、そういう意味で追い込みが利き辛いんですよ。かと言って、東京コースみたいに坂を上ってからゴール前まで東京の方が長いけど、中京の方が短いじゃないですか。だから、追い付きそうな所でゴールになっちゃうから。東京だったら届いちゃうから。
-:その辺りの攻略と言うのは。
加:それは攻略できないよ。途中で噴かしたらコーナーで振られるだけだし、あとは前後半のペースが合うか、合わないか。
-:位置取りは、ある程度取れるだろうという読みですね。
加:取れたら幸い。取れなくてもかなり追走は楽だと思う。
-:後ろでも楽と言うことですね。今回は、やっぱり前の先行馬のホッコータルマエにしろ、コパノリッキーにしろ、先行力があって、強いですもんね。
加:強い。この前よりももう一枚上だからね。斤量が下がった分だけ3馬身か4馬身良いポジションから、おそらく脚が使えるけど、そこだけだね。相手が相手だもんね。今回すぐに(楽に勝てる)とか、そんなに甘くないと思うよ。
-:もちろん、まだ成長の余地のある段階での今回と言うことで。
加:そうだね。強い相手に揉まれることも必要だしね。
-:ただ、この馬は人知を超えたところがありますよね。
加:それは、青竜Sの上がり34秒7で証明したね。あのダートではちょっと証明したね。
-:いつも1番人気になったことがないじゃないですか。我々が思っているより強い走りをみせてくれますね。先生も「驚かされる」とおっしゃっていましたが?
加:間違いなく走破時計はシッカリと詰めているからね。
初めての長距離輸送は問題なし
-:調整の時に、何か気を付けなければならないことはありますか?
加:春はJDDが最終目標だったので、ずっと当日輸送していたんですよ。大井は1泊できないでしょ。東京は1泊2日できるんだけど、あえてずっと当日輸送で、青竜Sもそう、ユニコーンSもそうです。中山はもちろん当日輸送しかできないので。今回の中京は、確実に当日輸送は不可能なので、必ず1泊2日なんでね。今まで当日輸送だとちょっと不安があったんだけど、前回からは1泊2日に変えて。
-:結果が出ていますから良いと思いますけど、いかがでしたか?
加:こっちが思ったほど、馬のテンションも上がらずに過ごせたので。ただ、今まで当日輸送の時は、前の日とかも曳き運動とか、坂路で1本とか乗っていたんだけど、そういうところで運動量が少し足りなくなったりするので。いつもの当日輸送の時はそんなに乗り運動とかはしないんだけど、ノンコノユメに関しては、着いてから普通に乗り運動もして。細かくやるのよ。
-:馬体重の変動が全然ないんですが?
加:その辺はやっぱり担当者が。ウチの厩舎は基本的に体重の増減は少ないんですよ。トーセンブライトとかもいつもプラスマイナス0だったでしょ。高知に行こうが兵庫に行こうが、中山使おうが東京使おうが。
-:それは、馬の個体がどうこうのじゃなくて、厩舎として?
加:スタッフがつくってくれる話です。輸送の距離、時間、その馬の個体と特徴に合わせて何キロ減るのか、だったら何日前のそれだけカイバをつくっていかないといけないのか、それはスタッフレベルの話ですよね。感謝しています。
「中央をまだ勝っていないから、言うのは何だけど、おそらく中央のG1を勝つより海外のG1を勝つ方が可能性はあると思いますよ。だって、持っていって使うだけ。あとは勝てる能力があるかどうかだけですから」
-:輸送自体は問題ないですか?
加:ええ、輸送に関しては全く問題ないです。関西圏も初めてですが、心配していません。
-:そういうのが全然問題ないのなら、海外とかも行ってみたいですね。いずれはそういう話も出てきますよね。
加:ある意味、小倉に行くよりは近いから。
-:他に考えることは、相手関係だけですか。
加:自身のことはちゃんとやることはやっているので、展開もありますし、あとはしょうがないよ。
-:先生は、中央のG1はまだ勝たれていないですよね。
加:中央をまだ勝っていないから、言うのは何だけど、おそらく中央のG1を勝つより海外のG1を勝つ方が可能性はあると思いますよ。だって、持っていって使うだけ。あとは勝てる能力があるかどうかだけですから。
-:現状での来週の予定というのはありますか?
加:来週は木曜日だね。だって競馬が日曜日でしょ。この間の前走もそうだもん。全く一緒。やってもう乗らないで、向こうで乗り運動。土曜日の朝に輸送して昼頃に着いて、夕方ちょっと乗り運動をして。そんな感じで、前回と全く同じ感じで行く予定です。それ以降の話は、結果が出たら照哉社長にドバイへ連れていって欲しいですね(笑)。
(取材=競馬ラボ)
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プロフィール
【加藤 征弘】Yukihiro Katoh
1991年に加賀武見厩舎の厩務員としてキャリアをスタート。その後、二本柳俊一、相川勝敏、内藤一男厩舎の調教助手を経て、2001年に調教師免許を取得。翌年厩舎を開業すると初年度から2ケタの12勝を挙げる活躍を見せ、2年目26勝、3年目32勝と瞬く間に関東リーディング上位の常連となった。その後も順調に勝ち星を伸ばし、11月15日にはJRA通算400勝を達成した。G1タイトルは2007年にシャドウゲイトで制したシンガポール航空インターナショナルCとノンコノユメで制した今年のジャパンダートダービーの2勝。意外にも中央でのG1勝ちはなく、ノンコノユメには悲願でもあるJRAG1初制覇の大きな期待も込められている。
1965年 東京都出身。
2001年に調教師免許を取得。
2002年に厩舎開業。
初出走:
2002年3月3日 1回中山4日目 8Rエビスイーグル(3着)
初勝利:
2002年6月2日 4回東京6日目 3Rソプランマンボ