いよいよ今年も9月27日(火)に迫ってきたJRA騎手免許一次試験。この移籍制度をパスし、地方競馬から後のスタージョッキーへとのし上がったケースは枚挙に暇がない。そして、今年、決意新たにJRA入りに挑戦するのが現在、笠松リーディングの佐藤友則騎手だ。2015年は77鞍、今年は(9/18時点で)126鞍の騎乗とJRAの舞台で、その姿を目にすることも多くなってきた新鋭だが、翻意に至るまでの経緯とは?「名馬・名手の里」笠松競馬の新エースに、その胸中を語ってもらった。

10年ぶりのJRA受験!その決意や如何に!?

-:今年は目標とされている地元のリーディング争いでも、87勝(9/18時点)で現在トップ。そんな最中、JRA試験を受験するとのことですが、以前にも試験は一度受けられたそうですね。

佐藤友則騎手:そうですね。その時は、柴山(雄一)騎手がJRAに合格したのをキッカケに、翌年、自分も受けてみようかと思ってトライしてみました。しかし、自分の努力が全く足らなかったので、すぐに挫折してしまったというか……。ただ、当時は本格的に取り込めなかったこともあり、頓挫していましたが、そんな中でも、そういう気持ちはどこかにあったのかもしれません。

佐藤友則

▲今年のフィリーズレビューではソーディヴァインに騎乗し惜しくも5着
ここ一年、JRAでの騎乗も増えている佐藤友則騎手

-:前回に試験を受けたのは10年前のことで、改めて受験しようと思った経緯も教えてもらえますか?

友:自分の中ではそういう意識は、絶対にどこかにあったと思うのですが、去年くらいからJRAで少しずつ騎乗数も増えてきて、周りの方から「試験を受けるのか?」ということを言われるようになってから、「やっぱりそうだな」と。当時はまだ本気も出していないのに、挫折してしまった自分がいたので……。それだけじゃなく、周りから「頑張れ」と言葉を掛けてもらったり、応援してくれる人がたくさんいて、“受験しよう”という気持ちになったのです。

-:決意したのはいつ頃でしたか?

友:今年の2~3月くらいですかね。

「福山からJRA入りした岡田さんが9年かけて受かった姿を見ると、諦めなければ努力は報われるという希望も見えますし、僕が引退するまで何年かかっても良いので、ずっと受け続けようと思っています」

-:決意したからには受かるつもりで、色々と準備はされていると思います。どんな対策を立てられていますか?

友:そうですね。過去問を取り寄せて、そこから勉強しているのですが、正直、今まで全然勉強していなかったのもあって、まだまだなところは否めません。福山からJRA入りした岡田さん(岡田祥嗣騎手)が9年かけて受かった姿を見ると、諦めなければ努力は報われるという希望も見えますし、僕が引退するまで何年かかっても良いので、ずっと受け続けようと思っています。

-:翻意されてからの1日の過ごし方も変わりましたか?

友:そうですね。どうしても競馬の日が多くて、競馬に乗る日はサラッと過去問に目を通すくらいしか出来ません。競馬のない日は普段ならダラダラと過ごしていましたが、朝の仕事が終わってから、昼の12時半くらいに起きて、1時から夕方まで時間がある時は勉強している感じで生活をしていたら、自然と夜も早く寝るようになりましたね。生活リズムもだいぶ出来てきて、外に出掛けることが少なくなりました。

-:過去に受験も経験し、笠松からJRAへ移籍した大先輩である安藤勝己さんに、アドバイスを受けたりとかは?

友:これと言った具体的なアドバイスはありませんが「受け続けろ」という言葉はいただいています。

佐藤友則

▲JRAでは栗東の西村真幸厩舎に初勝利をもたらした
伏兵での激走も目立っている(写真左が西村調教師)

“競馬をしている感覚”騎手冥利に尽きる舞台を求めて

-: JRAで数を乗るようになって1年ほど経ちますが、自分の中での変化はありますか?

友:他地区に遠征すると思うことは一緒なのですが、どうしても地元にいると、いつも同じ顔触れで少頭数という競馬になります。やっぱり勝ったら嬉しいのですが、正直な話、刺激が足りない部分が少しあるのは事実です。JRAに行くと、まず16~18頭という競馬が多くて、常に考えながら乗らないと、一つのミスでも大きく着順が変わってしまうような競馬ばかりです。その中で、悩んだり、嬉しい思いもさせてもらったりと刺激が沢山あって、“競馬をしているな”という感覚がすごく蘇ってきますね。どうしても、地元に帰ってしまうとJRAで乗るのが恋しくなるというか、そういう思いが出てきたので、常にそこ(JRA)で乗れたら良いな、と思います。

-:ちなみに、今年はJRAで100鞍以上乗っています。乗鞍を増やすためにしたことはありますか?

友:積極的にJRAに行っていることが一番大きいのかと思いますが、地元でも去年から安定して勝ち星が増えて、JRA交流で頼まれることが増えるようになって、そういう経緯もあると思います。あとは牧場へ乗りに行ったりしましたし、関係者や友人などバックアップしてくれる方が多くなったというのも大きいですね。

「僕がここにいる限りは、リーディングは渡したくないと思っています。今年に限らず、今の気持ちを絶対に忘れずに頑張っていけば、ケガさえなければずっと獲り続けられると思っているので」

-:もし、JRAに受かった場合、自分はどういうジョッキーだとアピールしたいですか?

友:今もそうですが、どちらかと言うと、人気馬に乗ることが少ない上に、自分が乗ったらちょっと人気が落ちる点はあると思います。今後は僕が乗っているから買いたくなるような、穴を持ってくる騎手を目指したいですね。そして、ファンサービスもシッカリして、僕目当てで競馬場に来てくれるようになればと。

-:もし、受かった場合の所属希望はありますか?

友:西の方が良いなと。まあ、入ることが出来るのならば、どちらでも良いです!

-:9月27日に試験ということで、この試験日以外は休むことなく?

友:そうですね。ちょっと騎乗数が多いので。どちらもロスさせたくないというのが一番です。試験を受けるからと言って、こっちをダメにせず、両立したいと思っています。

佐藤友則

▲燻っていた自らを再起させるキッカケとなったトウホクビジンの引退式にて

-:体を空けることが出来ない理由の一つでもあると思いますが、今年はリーディングを突っ走っています。何か変化があって活躍されているのでしょうか?

友:色々な要因が重なったと思います。一番は名古屋の角田調教師から「もっと頑張れよ」と尻を叩かれて、それが始まりですね。しかし、さっき言ったように、試験を落ちた時もそうなのですが、僕自身、まだ何か一度も目一杯の努力したことがないような気がして……。“この1年良かったな”と終われた年がなくて、頑張り通したことがないなと。“今年は本気で頑張り通そう”と決意しました。

-:残り4カ月、初のリーディングに向けて、この座は渡せないという思いですか?

友:そうですね。僕がここにいる限りは、リーディングは渡したくないと思っています。今年に限らず、今の気持ちを絶対に忘れずに頑張っていけば、ケガさえなければずっと獲り続けられると思っているので。

-:他の方の合格例を見ても、JRA試験も簡単ではないことは事実でしょうし、どんな騎手人生を送っていくかは佐藤友則騎手次第だと思います。今の気持ちで試験にも、地元での騎乗にもトライして、納得いく結果を残してほしいです!最後にまとめの一言をファンの皆さんへ向かってよろしくお願いします。

友:諦めずに努力すれば、必ず夢は叶うと思っているので、頑張ります。

佐藤友則