自在性を身につけたケイティブレイブが、JRAのG1タイトルを視界にとらえた。前走のJBCクラシックは中団で折り合い、直線で早めに先頭に立つ競馬で2着。逃げや追い込みといた極端な脚質で戦ってきた馬が、これまでにないレースぶりを見せた。中央のG1経験は少ないが、今年のフェブラリーSでは先行馬に厳しい流れを粘って0.5秒差の6着。担当の北谷洋調教助手に、馬の成長ぶりと本番への手応えを聞いた。

－：チャンピオンズカップ(G1)に向かう、今年の帝王賞の勝ち馬ケイティブレイブ(牡4、栗東・目野厩舎)です。前走、JBCクラシック2着を振り返っていただいて、どうでしたか？

北谷洋調教助手：収穫があったんじゃないですか。逃げるか、帝王賞みたいに追い込むかで、一辺倒の競馬しかしていなかったので。まあ、それまでは「行け、行け」という先生(調教師)の指示もあったとは思いますが。

－：福永さんも「少し控えて脚を溜める競馬が出来たことが収穫だった。競走馬として必要な要素がちゃんと完成されてきた」といったことをレース後に語られていました。もともと脚を溜め辛かったりするタイプでしたか？

北：若干、中途半端な位置にいると掛かったりしているところはありましたね。ただ、あそこの位置で折り合えたというのが良かったんじゃないですか。

▲トレセンで働き始め、間もなくケイティブレイブを担当している北谷助手

－：そこら辺は、調教に乗られていて折り合い面で、何か感じられる部分はありましたか？

北：競走馬だから、他の馬がいるとやっぱり気が入っちゃうのでね。調教を1頭で走っているとそんなに力んだりしないのでね。でも、そんなに癖のある馬じゃないですよ。

－：そういう印象があったので、福永さんのコメントを聞いているとそんな馬だったのかな、と思いました。

北：僕は競馬に乗ったことがないのではっきりしたことは言えませんが、そんなメチャクチャ変なところはないと思うんですけどね。

－：前回の状態面は、今までと比較していかがでしたか？

北：前回のJBCクラシックはだいぶ良かったと思うので、それくらいを維持していれば良いですけどね。この中間も良いですよ。正直、楽をさせたい気持ちもありますが、夏もずっと早くからやっているし、休みもないですしね。ただ、僕もここまで来たら、逆に出さないでいた方が安心と言うか、出して何かあった時に……とは思いますね。

－：逆にそうですね。今までそれで結果が残っている訳ですからね。暑さ対策はされたりしていたのですか？

北：いや、別に扇風機しかないですからね。扇風機1個だけです。デビューからずっとですね。

－：こうして馬房で馬の様子をみさせてもらうと、普段はけっこう大人しいのですか？

北：そうですね。ボーッとしているようで、突発的にプツッと行くので。普通にボーッとしているのに、いきなり人間に乗りかかってくるので、何回か僕も潰されていますけどね(笑)。

－：それは襲っているのではなくて、友好的な意味で、ですか？

北：じゃないと思いますよ。けっこう突発的に乗りかかってくるので。特に馬房の中では危ないです。急に乗りかかってきますからね。

－：食べる方は食欲旺盛というか。

北：食べている時は丸腰なんですよ(笑)。

－：ここ最近の体重の増減はあまりないですよね。

北：今はないですね。昔はけっこう増減が酷かったですね。＋10とか－20とか……。今でも輸送はやっぱり減りますよね。ただ、中京は近いから増える可能性がありますね。

－：でも、わかっているのなら、許容範囲内ですね。

北：多分、別にちょい増えても、そんなに問題ないと思っていますけどね。

－：しかし、飼い葉を食べるそしゃく音がスゴいですね。ちょっと独特じゃないですか？

北：そうですか。バリバリ。スゴく食いますから(笑)。

－：それが、やっぱり長くやっていける秘訣と。

北：多分、そういうことだと思います。食べきるのもメッチャ早いですしね。

－：帝王賞を振り返っていただくといかがでしたか？

北：ゲートに行っていたので、レース自体はほぼ観られていないですけど、(ゲートで)出遅れたのだけは見えたので。

－：大井の場合だと、4角のポケットで観ているから、もう1周回ってくるところだけが見えるという感じですか？

北：そうですね。もう1周回ってきた時もドロドロで全然どこにいるか分からなくて。でも、思っていたレースとは全く違いましたね。

－：まさかあんな位置になるとも思わなかったでしょうし、結果的に行っても、下げてもリズムさえ保っていればということですか？

北：多分、それが一番大事なんじゃないですかね。自分のリズムでレースをするのが一番なので。

－：レース前は勝つことを意識されていましたか？

北：いや、それは勝てれば良いですけど、やっぱり相手が強いですしね。そんな勝てるとは……。どこまで行けるかという思いでした。

－：その点、2走前(日本テレビ盃3着)はどういう競馬をしてくれるのかと、観る方も気になっていたと思ったのですが？

北：あれは実質4頭立てみたいな競馬。後ろからのプレッシャーがあって、やっぱりああいう形はしんどかったですかね。

－：枠も出ていないので未知数ですが、次回はどういう競馬になりそうですか？

北：それはどうなんですかねぇ。ジョッキーが考えてくれているでしょうが、やっぱりJBCクラシックみたいな感じで行くんじゃないですかね。

－：福永さんとは中間、話したりされていますか？

北：先週の水曜日の追い切りに乗ってもらいました。調教に乗ってくれる時に「こんな具合です」というような話はしましたね。ただ、状態面であまり(変化が)ないので「マズマズかな」という具合でしたね。

－：状態に関してはあまり波がない感じですかね。

北：そうなんですよね。さすがにレース後の疲れとかはあったりしますけど、それが取れれば割と、そんなに変わりはないですよね。

▲夏場も栗東トレセンでのりこまれていたケイティブレイブ

－：チャンピオンズCは差しも決まる時もありますけど、あんまり行き過ぎるときついレースじゃないですか。そういう意味では前回みたいなレースが活きるかもしれません。

北：そうですね。あんな感じが良いかなと思うんですけど。

－：若い頃と比べて良くなってきていると感じる部分はありますか？

北：輸送もたくさん経験しているので、慣れはあると思いますが、最初の頃は馬運車でも大人しくできなかったですね。もともと大人しいのに、そういうのにも慣れてきたという感じで、向こうの厩舎に入っても割と大人しくしていますね。

－：輸送先に着いてから、昔は食いが減ったりだとか、そういうのはなかったですか？

北：食いは若干減りますけど、それでも普通にちゃんと食べますよ。朝運動とかをしないといけないですが、その時はいまだに煩いです。その時だけは一番煩いですね。

－：競馬場ではそんなに煩くないですね。

北：煩くないです。装鞍所やパドックではメッチャ大人しいです。

－：早い段階から活躍は想像されましたか？

北：いやいや、本当に全然ですよ。乗っていて乗りやすい馬だと思っていたくらいで。

－：しかし、乗りやすさを感じていたとは言え、やっぱりこれだけ成績を積んできたということは、乗っている中でも徐々に変化があった訳ですよね。

北：それはもちろんありますね。段々と気合いの乗りもそれなりに良くなってきていますし、やっぱりそれだけで変わるのは変わりと思いますからね。

－：今まで見られてきて、こうなったら厳しいという、この馬のウィークポイントというのはありますか？

北：周りに影響されやすいので、やっぱり自分のペースでなくなった時ですかね。

－：中央のG1で多頭数というのはあまり経験していないですよね。

北：そうですね。中央のG1はフェブラリーS(6着)以来ですからね。でも、当時もそう悪い競馬ではなく、割と頑張っていたと思いますけどね。

－：とにかくずっと厩舎にいるのもスゴいことですが、ずっと崩れていないというのもありますよね。

北：それはスゴいですよね。

－：脚元の不安や体質面の心配はありませんか？

北：脚元は大丈夫なんですよ。ほとんど何ともないですよね。

－：それが常識破りというか。

北：なかなか頑張ってくれていますね。ただ、硬さはあるので、じっくりとほぐすようには意識しています。

－：走りの雰囲気としてはどういうタイプですか？

北：(その時によって)違うんですよね。ユッタリ走るなと思う時もあれば、やたら力んだり。やっぱり生き物なので毎日違うみたいですね。でも、歩きに柔らかさがある時の方が良いと思うんですけどね。今は動き出しの硬さはあるものの、じっくりやれば大丈夫です。

－：他の馬よりも運動に時間を掛けていたり？

北：そうですね。意識的には大きく歩かせるというか、そういう風に思いながらやっていますけどね。

－：この馬のベストパフォーマンスはどのレースだと思いますか？

北：綺麗な勝ち方的には浦和記念でしょうか。何か一番綺麗な勝ち方でしたね。

－：先生的にも、残り少ない調教師生活だと思います。最後、華を添えられるといいですね。

北：それはそうでしょうね。結果はわかりませんが、レースまで最善を尽くしていきます。

－：ライバルとして意識している馬もいるものですか？

北：どれも勝ったり、負けたりの馬ばっかりで、それは分からないし、みんなどう転がるとか、どの馬に展開が向くかで。

－：北谷さんは野球部出身で、今も野球好きとのこと。ケイティブレイブを野球選手に例えるとどういうタイプですか？

北：う～ん……ムッチャ難しいですね。鉄人的に金本監督でしょうか(笑)。

－：ありがとうございます(笑)。