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デニムアンドルビーが屈腱炎を発症したのは5歳秋のこと。その後1年間の休養を挟み、厩舎に帰ってきた。順調に調整は進んでいたが、10月頭から2ヶ月近く、在厩しているにも関わらず坂路に入った記録がない。『空白の2ヶ月』。そこには病気と闘うデニムアンドルビーと、それを支える小滝助手を始めとする厩舎スタッフの姿があった。引退した今、人馬の長く苦しい2ヶ月が明かされる。

原因不明の病…痛み止めを投入する日々

-:屈腱炎になった箇所はどこだったのでしょうか。

小:右前脚ですね。屈腱炎の中ではまだ軽度のものでした。

-:調教から上がってきた時に脚元がモヤっとしたのでしょうか?

小:そうですね。元々幼い頃、初入厩の時から、右前脚に弱さがあって。何かあるとしたら右前脚かなという話にはなっていたんです。特に異変はなく来ていたのですが、復帰戦に向けて1本目か2本目の追い切りをした後だったと思います。腫れ方がおかしいと。すぐにエコー検査をしたところ発症が確認されました。

-:損傷率としては他の発症した馬と比べると少ないほうだったのでしょうか。

小:トレセンの他の発症馬に比べるとまだ小さいほうだと思います。10%あるかないかというくらいでした。

-:それから放牧に出て、2016年の秋に入る頃、また栗東に帰ってきましたね。

小:府中牝馬Sを目指していたので、9月の半ばに帰ってきました。屈腱炎明けということもあって、慎重に、慎重に進めました。

-:しかし府中牝馬Sに名前はありませんでした。

小:府中牝馬Sの直前の週末だったと思います。デニムが鶏跛(※)を発症したんです。追い切った翌日なので金曜ですね。あの日は運動中、違う人が乗っていたのですが、僕が後ろから見ていたらなんだかトモの動きがおかしいと感じました。その後ダートコースから厩舎に戻ったところ、次第に症状が悪化してきて……。

(※)けいは…異常歩様の一つ。後肢が地面を離れる時に急激に肢を上げる歩き方。鶏の歩き方に似ていることからそう言われる。

デニムアンドルビー

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デニムアンドルビー

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-:原因はなんだったのでしょう?

小:この時はすぐに分からなかったんです。筋肉か、飛節のあたりに何か違和感があるのか。次第にデニムも苦しがるようになってきて、それこそ脚を地面に着けないくらいになってしまいました。片方の脚で立っているので、次第にもう片方の脚に負担が掛かるようになってきます。原因が分からず、それこそ神経などまで、色々な検査をしたんです。その間にけいれんのような症状も出始めて……。

-:深刻な状態だったのですね。

小:これはまずいなと感じました。獣医さんも手を尽くしてくれたんです。しかしなかなか原因は分からず、痛み止めを投入する日々が続きました。1ヶ月ないくらい、ずっと馬房から出さずに舎飼でしたね。

-:苦しい1ヶ月が想像できます。

小:1ヶ月も片方の脚に負担が掛かっていたので、蹄葉炎の心配もあります。予防と治療を兼ねて蹄の裏に粘土のようなものを詰めて、蹄骨が落ちてきて蹄壁を突き破らないように処置も始めました。獣医さんと色々な可能性を探るうちに、もしかしたら爪が痛いのかもしれない、ザ石なのかもしれないという話になりました。そこで処置をしたところ、ようやく症状が快方に向かったのです。

-:見た目では分かりにくいものだったのですね。

小:爪が痛い馬は脈が張るとよく言うのですが、そこでザ石じゃないかと。原因が分かってからは早かったです。ただ馬も脚を地面に着くと痛いイメージが頭についているので、その記憶が原因なのか、歩き出してからはソロっと歩いていました。賢い子なので次第に慣れていってくれましたけどね。

-:その後の調整も、最初は乗っていて違和感があったのではないですか?

小:そうですね、乗っている間はやはりずっと後ろ脚が気になりました。

「毎日不安で仕方なかった。生き物は難しい」
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