日本競馬&ファンを愛するドイツのF.ミナリク騎手インタビュー(後編)
2018/3/28(水)
-:外国人ジョッキーの方は「日本の馬はとても優秀だ」とおっしゃいます。実際にドイツの馬と日本の馬を比べていかがでしょう。
ミ:日本のトップクラスのG1馬が世界水準でもトップであることは間違いないと思います。今までもヴィクトワールピサがドバイワールドCを勝ったり、凱旋門賞のオルフェーヴルやエルコンドルパサーも、本当に勝っていてもおかしくないというような強さがありました。オルフェーヴルに関しては、自分の癖が強くて負けてしまいましたが、これからも、日本馬は世界でドンドン結果を出していくと思います。日本は設備も含めて色々と良い流れになっています。間違いなく日本はこれから更に良くなると思いますので、日本馬は間違いなく世界一になれるでしょう。
-:フェブラリーSというジャパンC以外のG1に乗ってみていかがでしたか?
ミ:フェブラリーSは確かにジャパンCとはちょっと位置づけが違うかもしれないですが、国際的には十分にG1として通じるものがあります。ダートと言っても、スタートの速さはみんなF1に参加しているかのような感じでした。レベルが高いからこそ、ストロングペースになって一番強い馬が決まる。とてもG1らしい流れのレースだったと思います。
-:富里特別のベアインマインド(1着)は素晴らしいレースでしたね!
ミ:ありがとう!初めての特別勝ちでとても嬉しいです。賞金的に、本当にドイツのG1を勝っているみたいで何とも言えない気分になりました(笑)。
-:ベアインマインドは追い込んで勝ちましたが、あれが一番好きなレースの形でしょうか?
ミ:その通りです。ああいう勝ち方をするのが凄く好きです。日本に来た中ではベストレースでした。ベアインマインドは最高でした。レースの後、ベアインマインドがいる牧場を訪問したので、ニンジンをあげてきましたよ(笑)。
-:ベアインマインドにはその前のテレビ山梨杯(9着)も乗られていましたが、あのレースを振り返って反省をしてレースに臨まれたのですか?
ミ:テレビ山梨杯は馬というより、自分がもうちょっと上手く乗ることが出来たんじゃないかと思っていました。加藤調教師とレースリプレイを観ながらアドバイスをいただき、富里特別はそのアドバイスを参考にして考えながら乗りました。
-:日本は、チェコやドイツに比べて調教師からの指示は多いのでしょうか。
ミ:ドイツとチェコでもかなり多いです。指示が多過ぎると思う時もありますね。日本の方が指示をもらう時はありがたいですよ。まだまだ経験も少ないですし、どのようなアドバイスでも聞いて、自分で分析をした上で、もっとうまく乗れるように経験を積もうと思っています。
-:普段、競馬がない休みの日は何をされているのでしょうか?
ミ:競馬がない時は、朝は川沿いにジョギングをしに行って、その後は日本でちょっと冒険をしようと思って、色々なところに行っています。電車に乗れるようになってきたので、何回も渋谷に出て歩いたりしましたよ。さすがに渋谷は人が多過ぎてビックリしました(笑)
-:通訳の方は付いていかれないのですか?
ミ:1人で行きますね。Wi-Fiや地図を持ちながら、何かあったら電話で聞いてもらいますけど、基本は1人で行きます。
-:渋谷ではどこへ行かれたりするのでしょう?
ミ:服が好きなので、そういうお店が中心です。スポーツショップにも行きますよ。新宿も1回行きましたが、大変でした……。かなりビックリしましたよ。駅が大きくて、なかなか出口から外に出られなくて(笑)。
-:「日本食も好き」ということですが、自分で夜ご飯を作ったりはするのですか?
ミ:家ではやっていないです。外においしい店が一杯あるので。デパ地下で、サラダを何グラムずつ買って持って帰ったりだとか、あと今は家の近くのお弁当屋さんにハマっているので、おかずを買ったりして持って帰ることが多いですね。
-:ルミネのデパ地下でミナリクさんに会ったらビックリしますね。
ミ:いつもジャパンCで来る時は招待で来ているので、指定されたホテル暮らしになるのですが、外に何でもあるのに高くて……。ローカルの経験は出来なかったのですが、今住んでいるところは、コストパフォーマンスも良く、スーパーに行って色々買って、自分でおいしく出来るというのがとても嬉しいです。
-:先程から緑茶ばかり飲んでいらっしゃいますね(笑)。
ミ:お酒が苦手なんです(笑)。とにかく今は緑茶にハマっています。「グリーンティーを作る時は、100℃じゃなくて80℃」「1回お湯を入れて、出してから淹れる」など、淹れ方も勉強しました。
-:お茶の淹れ方にもこだわるんですね。
ミ:お茶のセットも買って、急須を使って家でもやっています(笑)。
スマホの写真におさめたお茶のセットを披露してくれた
-:逆に日本食で何か嫌いなものはないのですか。
ミ:日本食ではないですが、この前立ち飲み屋で食べた豚のコブクロは苦手でしたね……。でもこの前行った炉端焼きは大好きになりましたよ!
-:お箸の使い方が上手ですが、練習されてきたのですか?
ミ:この10年くらい、アジア料理のレストランに通って勉強しました(笑)。初めてアジアに来たのが、2004年にシンガポールに行った時です。その時はあまり上手ではなかったけど、14年掛けてレストランでアジア料理を食べながら練習しました。他の方を見ながら、自分で試したりしてね。
「お茶のセットも買って、淹れ方も勉強しました。急須を使って家でもやっています。どこかのお寺とか神社のティーセレモニーに行こうかと考えていますよ」
-:日常生活で何か困ることはないのですか?
ミ:日本の生活で困っていることはないです。逆に日本が好き過ぎて、ドイツに帰ったらどうなるのかなと心配しています(笑)。
-:日本は凄いと思うことはありますか?
ミ:JRAの中の流れもそうですが、何でもちゃんと正確で、スムーズに、キチンとしているところが素晴らしいです。川崎に行っても、調整ルームから控室から検量室から、全部スタッフが付いて、分からなかったらすぐに案内してくれて……。
-:逆に日本の、ここを直して欲しいというところはありますか?
ミ:書類の種類が多いです (笑)。銀行で口座を作ったりだとか、何かを申請する時とか、それがちょっと多いので、直してほしいかな……。
-:競馬以外の趣味はあるのでしょうか?
ミ:ないですね。私の人生が競馬なんです。女性は嫌いではないですけどね(笑)ただ奥さんが一番です。奥さんと競馬に夢中なんです!あとは最近熱くなっているのはグリーンティー。
-:先程から緑茶愛は伝わってきます(笑)外にお茶を飲みに行かれたりはしないのですか?
ミ:ドイツでは非常に移動が激しくて、調教して、その日の競馬に行って2頭に乗って、帰ってくる時は自分で5時間運転をしないといけない時もあるんです。日本では激しい移動がないので、今のところは落ち着いて過ごすことが好きなんです。どこかのお寺とか神社のティーセレモニーに行こうかと考えているのですが、今のところは久しぶりに移動のない生活を満喫しています。
-:どこかに観光に行かれたりすることは?
ミ:ないですね。どこかに行こうとは思うのですけど、今はマイペースでゆっくり出来ているので。色々見たいのですけど、今のところはちょっと競馬に集中していたいです。地方競馬にも行きたいし、水、木は美浦で調教をやって、金曜日は乗る馬をVTRで全部分析してから調整ルームに行っていたり、意外と暇もないので。
-:今回の来日で、より日本が好きになりましたか?
ミ:本当に、冗談抜きで、あまりにも日本が好きになってしまったので、ドイツに帰れるか心配です……。私がドイツリーディングになったことで、成績的にシュタルケ騎手が短期免許で来られなくなったんです。シュタルケ騎手は日本に来られなくなったことで、日本が大好きな彼はとてもブルーな生活を送っていて、彼の気持ちがよく分かるようになりましたね。来日できないのは本当に寂しいことです。