ディープスカイ以上の手応えで送り出す!
2010/5/26(水)
昆貢調教師
■■■ ディープスカイを超える手応え ■■■
-:現時点で残された課題はありますか?
昆:う~ん、馬体的には申し分ないしなぁ。皐月賞の時はゲートもクリアしたと思ったのですが、ダービーとなると雰囲気もガラっと変わるから、ゲートだけですね。
-:スタンド前の発走というところも気になりますね。
昆:皐月賞の時だと(観客が)6万人とかですが、ダービーは10万人入りますからね。そこで馬が冷静にゲートをクリアしてくれるかというのは、やっぱりその舞台に立たないとわかりません。各馬同じ条件だけれど、今でも練習はしっかりやっていますし、大一番でスタートが悪くて負けたなんて事はないようにしようと思っています。
-:ヒルノダムールの普段の性格はどんなタイプですか?
昆:普段が大人し過ぎるから駄目なんです。それでレースに行くと燃えちゃうようなところがあるのが、良くないですね。だから、普段大人しくて、レースも大人しいのが一番なんでしょうけど、逆パターンですから。普通の馬より厄介かな?という感じはしますね。だけど、皐月賞でお客さんが多い中でもドシっと歩けていましたし、お客さんの数でどうこうなるタイプではない気もしますが。
-:ダービーで、理想の展開や枠順などはありますか?
昆:う~ん、こればっかりは何ともいえないですけれど、今の馬場を考えたら、外より内の方がいい気がしますけれどね。外伸びもするけれど内が悪くないですからね。真ん中あたりから、内目に入れればいいかな。
-:気になるライバルなどはいますか?
昆:みんながみんな勝てると思って使ってくるわけですから同じですよ。ただ、ヴィクトワールピサやペルーサは人気するでしょうから、こちらは立場的に気が楽ですよね。
-:昆先生というと、ディープスカイでのダービー制覇を思い浮かべるファンも多いと思います。例えづらいかもしれませんが、その当時と比べて、手応えはどうでしょうか?
昆:ディープスカイは、急激にあの時期によくなった馬ですからねぇ。こっちの予想を超えていたというか。NHKマイルの時は自信があったけれど、もうひとランク良くなりそうな手応えでのダービーでしたから。結果として、あの時点で(10点満点の)10だったのかもしれませんが。その点、ダムールは意識してここまで持ってきましたからね。
遅生まれというのも意識にあって、早くから馬に負担はかけたくなくて。重賞を使っていれば勝っていたと思うけれど、なるべく皐月賞まで負担をかけないように持っていって「勝つか2着くらいに来なければ、ダービーで用事はないな」と思っていましたからね。それだけにディープスカイとは育て方が違うんですね。だから、ダービーを獲った馬には失礼ですけれど、ディープスカイとヒルノダムールが同じ世代だったら、ヒルノダムールが上なのかなと思いますけれどね。
-:それは心強いコメントですね。
昆:キレる脚はディープスカイより上なんですよね。ただタイプが違うんです。ヒルノダムールは中山の2000mもこなせるけれど、ディープスカイはこなせませんから。ヒルノダムールは3000mまで行ける馬だと思うし、ディープスカイはマイルをこなせても2400mより上はこなせなかったと思いますので。
-:そうなると、秋は菊花賞を見据える感じですね。
昆:そうですね。ダービーで勝ってもらって、菊花賞に行きたいなと思っているんです。菊花賞くらいになってくると、使ってこない馬も多くなるでしょうから。なんせこの馬、昨日も獣医さんと馬体をチェックしながら話していたんですけれど、追い切り後に打つことも珍しくない疲労回復の注射を一回も打ってないんですよ。
体はもうホント「ディープスカイ状態」になってきています。ディープスカイもこの時期あたりから、本当に凄くなりましたからね。注射も必要ではないくらい、馬体が充実してきたというか。だから、本当にいいローテーションだと思いますよ。もうかなり攻めているんですが、全く疲労をみせないですね。年齢的に遅れている分を取り戻そうとしているのか、グングングングンよくなってきています。
-:先生の調教スタイルとしては、基本的には坂路が多いですよね。
昆:そうですね。ただ、この馬は最初の頃は使っていなかったんですよ。コース追いが中心で。皐月賞くらいからダービーを使うときには坂路を使おうと思っていましたが。関東の厩舎が出張してきて結果を出すじゃないですか?美浦の坂路は乗ってないのでわからないですけれど、栗東の坂路は時計以上に負荷がかかるんですよ。
見た目にはただ上がってきているだけにみえるでしょうが、ディープスカイも2400mを走ったことがなくても、坂路中心でダービーを獲っているでしょ?だから、ここまで来たら距離を乗る必要もないんですよ。坂路の負荷でパワーをつけるために、ヒルノダムールもコースから坂路に変えたというか。安全かつ厳しいですけれど、最終的に馬をつくる時期ですね。
-:最終追い切りも坂路の予定でしょうか。
昆:そうですね。
-:先生の厩舎ですと、ローレルゲレイロが坂路で一番時計をよく出しますね。
昆:あれはね、スピードの絶対値が違いますから。だから、両極端な馬を扱ってるんですよ。いま、ローレルゲレイロとヒルノダムールを一緒に併せ馬をしても、ヒルノダムールが勝つかもしれないですよ。ただ、同じ時計を出したとしても、タイプが違いますからね。50秒出しても、ヒルノダムールは相手を抜かすモノを持っているでしょうけれど、ローレルゲレイロは50秒をビューンと走ってしまうだけで、あんまり小細工はきかない。
-:調教ラップをみても、馬の脚質がわかるようなところはありますね。
昆:だから短かいところを走る馬は時計が出やすいですよね。ヒルノダムールはそうゆうタイプではないですから。時計は出るでしょうけれど、それほど目立たないというか。ただ、併せる相手がいれば抜かしてくるでしょうし。今回の併せ馬でも相手をチギってしまって…。もっとキツい相手とやりたいんですけれど、いまウチにはいないんですよ(笑)。
-:先生は昔、騎手をやられていたと思いますが、もし今回のダービーに乗るとしたら、どんなイメージで乗りますか?
昆:そんな想像つかないですよ(笑)。クラシックは乗ったことないし。だけれど、僕がもし乗れている時に、こうゆう馬が当たったら「何が来ても負けへん」って思うくらいの状態にはなっていると思いますね。「見とけ!」というか。
-:先生の騎手選びをみていると、男気のある騎手が好きなのかなという感じもします。
昆:どっちかというと、あんまりエリートは好きじゃないから(笑)、個性のある人の方が好きですね。基本的には馬が走らなかったら、なんぼジョッキーが良くても走らないと思うんです。コンマ1、コンマ2を上手な人が乗れば詰まると思うだけで、チギって勝てる馬は誰が乗っても勝てると思うんで。それをわざわざ一流を乗せる必要はないというか。
僕が地方の乗り役と外国人騎手をなぜ使わないのかというと、やっぱり、競馬学校という厳しいところに3年間いて、一生懸命勉強して、中央でデビューした人を育てていきたいんですよ。自分ではアンちゃんを育てる自信はないけれど、そうゆう過程を踏んできたジョッキーを大事にするというか。地方で成績を上げてきて、中央入りして乗れるから任せるというのはね。地方の人も苦労はしてきているのだけれど、僕らのところで苦労してきたジョッキーを大事にしたいですね。
-:最近ですと、柴原さんなどですか?
昆:柴原君はね、調教も上手だし、早くに100勝していたのに、一昨年も全然勝っていなくて「なんでかな?」と思って。本人もウチでやりたいというのなら、全部が全部は乗せてはあげられないけれども、もっと乗せてあげられるなと思って手伝ってもらう事になったんですけれどね。調教も下手そうにみえないし、コメントをみても、馬のことをわかっているなと思ったからね。人(ジョッキー)って、自信ですからね。自信がなくなってしまうと、結果が出せるものも出せなくなってしまいますからね。技術は変わらないと思うし、気持ちで負けないようにしないと。「駄目なのかな」と思ったら、馬にも伝わってしまいますから。
-:先生はここ何年かで年間20勝以上をコンスタントに挙げていますが、その秘訣というのはありますか?
昆:ただ、馬選びが変わってきただけです。ひと昔前、サンデーサイレンス産駒を買ってくれるオーナーもいたけれど、僕の厩舎は何頭も何頭も入れられる状況ではありませんでしたから。なので「勝負はサンデーがいなくなってから」と思っていたんですよ。実際、サンデーがいなくなってからGⅠを獲ることができて、ずっと日高の馬に拘ってやってきたけれど、日高の馬でもGⅠを獲れるというのはデータもあるわけで。
社台グループが強くなりすぎてしまったら、競馬自体が面白くない。僕に言わせたら、フルゲート18頭が全部社台グループの馬だったら、こんな面白くないことはないですよ。僕みたいなタイプの厩舎が雑草のような馬でもGⅠが獲れるんだよというところをみせたいというか。なんだかんだいっても、ウオッカだって日高の馬ですからね。日高にも宝の馬はいるんだから、そうゆう馬をコツコツ探して、成功したいなと思っています。
-:ヒルノダムールの橋本牧場というと、ファンにも馴染みは薄いですね。
昆:ないない。でも、ウインクリューガーが出たところですよ。蛭川さんもだいぶ前に障害重賞で獲ったことあるけれど、平場ではクラシックに向かう事も初めてですね。お付き合いさせていただいて3.4年ですよ。
-:ヒルノダムールは先生が選んだ馬ですか?
昆:そうです。クラシックに行ける様な馬を選びたいとは心掛けていますからね。だから、昨年の勝ち鞍なんかをみても、短いところで勝っている馬は少ないと思うんです。まして、芝の方が多いはず。馬選びが変わってきたんですね。数勝とうと思えば、短いところを走る馬ばかり勝っておけば、大体計算はできると思うんですけれどね。
-:そうではなく、王道と。
昆:やっぱり年間20頭入れた中から、一頭でもクラシックにいけるようにね。
-:ディープスカイのオーナーも、まだ馬主経験が浅い方でしたね。
昆:そうなんですよね。うちに預けてくれるオーナーは「まだ勝ったことがない」とか「特別を勝ったことがない」という方が多いんですよ。最初に入れた厩舎で懇意にしてもらえないで「もうやめようかな」とか言っていて「こうゆう人がいるんだよ」って、紹介されたオーナーが多いんです。またそこで上手くいって、のめりこんでくれているオーナーも多いですし。
-:では、改めて。ファンの皆様に向けて、今回のダービーへ向けての意気込みをお願いします。
昆:デビュー以来、最高の状態に持って行けています。体重はプラス10キロ以上にはなるような気がするんですよ。だけれど、全然太くないですから心配いりません。皐月賞の時も攻めすぎたような気はしたのですが、今は攻めても全然減らなくなっていますから。それだけ馬が充実してきた証拠だと思っています。人気馬に一泡吹かせるつもりでいますので、応援よろしくお願いします。
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■最近の主な重賞勝利
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11年にわたる騎手生活を経て、2000年に厩舎を開業。着実に成績を積み重ねると、08年にJRA重賞初勝利を挙げると、同年にディープスカイがNHKマイルCと東京優駿の変則2冠を達成。 また、09年にはローレルゲレイロで高松宮記念とスプリンターズSのスプリントGⅠを春秋制覇。新たな厩舎のエース・ヒルノダムールで、師自身、2度目の戴冠を狙う。 |