関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

飯田祐史騎手

飯田祐史騎手


夏場に連勝して勢いに乗ったキョウワジャンヌ(牝3、栗東・飯田明厩舎)は続くローズSでも3着と健闘して注目を集めている。キョウワジャンヌの母・アサカフジも飯田明弘厩舎で活躍した名牝。その仔の中には11番人気で北九州記念GⅢを勝ったキョウワロアリングや京阪杯で16番人気ながら3着に入ったヘイローフジなど競馬ファンの記憶に残る馬達がいる。そんなキョウワジャンヌの手綱をとる飯田祐史騎手に同馬の素顔を伺った。

-:お忙しい中、取材のために時間をとって頂いてありがとうございます。早速ですがキョウワジャンヌの兄妹について教えて頂きたいのですが、キョウワロアリングもヘイローフジも主に1200~1400mで結果を出しています。キョウワジャンヌが1800mのローズSで3着と頑張りました。兄妹と比べて距離への融通はききそうでしょうか?

飯:たしかにキョウワジャンヌは兄妹の中でも短距離オンリーではない感じがします。だからと言って1800~2000mがベストとも言えない。微妙な所ですね(笑)。

-:兄弟の中でも距離がもちそうな辺りはジャンヌの父ハーツクライの影響もあると思いますか?

飯:それも大きいかも知れませんね。ハーツクライ産駒は気性的にそれほど大人しくないですが、結果が出ていますし、ジャンヌもマイルくらいまでなら重賞に出ても勝負になると思いますよ。ただ兄のキョウワロアリング(父サンデーサイレンス)も2歳の新馬戦から、きさらぎ賞までの7戦は中距離のクラシック路線で走っていたんですよ。

-:キョウワジャンヌの体を見ると脚が長く短距離馬には見えませんね。

飯:すらっとして脚長で、兄妹も同じような体型ですが、一番似ているのはキョウワロアリングです。これは乗った人にしかわからない感覚なんですが「この兄妹以外に似ている馬がいない」んですよ。僕も騎手として10年以上多くの馬と接してきましたが、この兄妹に似た馬はいない。それほど体の使い方が独特なんですよ。上手く説明できなくてすいません(笑)。

-:そんなキョウワジャンヌがローズSで3着と健闘しました。しかもクビ差の4着馬ビッグスマイルとの叩き合いを制しての3着でした。

飯:あの追い比べを凌ぎ切ったのですから、馬を褒めてください!びっしり2F以上競り合って頑張り切れたあたりは春よりも馬がしっかりした証拠でしょうね。ビッグスマイルと接触する場面もありましたが、あれはお互い様という感じです。前で下がってくるエリンコートも外に動いていましたし、その影響で僕も外から押し込められないように動いた。あの場面で、どちらかが前にいたら斜行になります。しかし、お互いの馬体が並んでいたので問題ないんですよ。



-:しかし連闘だった6月の阪神あずさ賞(500万下)を見ると、伸びそうでもうひと伸びできない歯がゆい内容だったので阪神よりは、もっと軽い馬場が良いのかと思っていました。

飯:確かに、おっしゃる通り軽い馬場の方が合いますね。新潟や直線平坦の方がこの馬の切れ味が生きると思います。それに、あずさ賞の頃はまっすぐ伸び切れなかった。鞍の後ろ辺りがグラつく感じというか、腰がしっかりしていない感じがしていたんです。それで、あずさ賞の後に腰の治療をしました。だから次のレースまでちょうど1ヶ月間隔が開いているでしょう?この治療で「ここまで良くなるのか?」と思うほど良くなった。新潟のエクセル浜松開設記念で勝った時に2着のレッドストラーダに乗っていた吉田豊君が「なんですか!その馬!僕の馬も伸びていたんですよ」とびっくりしていました。

-:なるほど、連勝の陰にはちゃんと秘密があったんですね。

飯:それに使う毎に馬が競馬を理解してくれたのも大きいです。ここは重要なとこなのでちゃんと書いて下さいね(笑)。僕が、馬に教えたのではなく、馬が競馬を覚えてくれて乗りやすくなってきたんです。

-:秋華賞は京都の内回り2000mですが坂のある阪神から京都に変わるのはキョウワジャンヌにとってプラスと考えて良いですね。

飯:馬場に関しては軽くなるし、直線も平坦になりますからプラスです。しかし距離や、初めて経験するコーナー4つの競馬、おまけにお客さんの多いスタンド前からの発走、と課題も多いです。6月からほぼ月に1回のペースで使ってきていますから疲れが出ないかも心配です。ファンが思う以上に厳しい秋華賞になるんじゃないでしょうか?

-:やはり京都の内回り2000mという条件は3歳牝馬にとって難しい舞台なのでしょうか。

飯:よく言われているのは内枠が有利だということ。しかし、最初の1コーナーにすんなり入れたら内枠は有利になるでしょうが、ゴチャつくとそこでリズムが崩れてしまう。内枠が有利とはいえない場合もあるわけです。僕はいつも、どの枠が良いか?あえて考えないようにしています。選べるなら考えますけど自分では決められませんから。だから枠が決まった時に、良い方に考えるようにしているんです。



-:それでは今回の秋華賞に向けてまとめていただけますか。

飯:将来的にはマイルまでの距離でなら重賞でも勝負になる馬だと思っています。それも左回りの方が良いと思います。秋華賞は距離的にも未知数ですし、先ほどあげた課題も多いです。冷静にローズSを振り返ってみると、かなり良い内容の競馬が出来たのに前の馬は捕まえられず後ろの馬には差されてしまいました。あそこからさらに上積みがあるかと言うと正直、逆転は厳しいかもしれません。しかし硬い馬場で連戦しているわりに脚元は、すっきりしていて体調も良さそうなのでジャンヌの力だけはいつも通り出してくれると思います。

-:ローズSの走りを見て、注目しているファンも多いと思います。後、1週間ありますが最終追い切りはどの程度やる予定か、わかる範囲で教えてください。

飯:将来のある3歳牝馬ですから極限まで仕上げるつもりはありません。オーバーワークにならないように気をつけて乗るつもりでいます。3歳の牝馬をびっしり仕上げたらテンションが高くなりすぎて掛ったりイレ込んだりで良いとも限りませんからね。春に活躍した馬達との力差は気になりますが、自分なりに考えてレースに挑みたいと思いますので応援してください!

-:飯田騎手の理論的なお話、大変参考になりました。今日はありがとうございました。




【飯田 祐史】Yuuji Iida

1974年 滋賀県出身。
JRA初騎乗
93年3月6日 1回阪神3日2R メイショウアルマダ(14着/15頭)
JRA初勝利
93年3月6日 1回阪神3日6R マイネルアルファ
JRA通算成績は370勝 (11/10/10現在)


■重賞勝利
・2002年 きさらぎ賞(メジロマイヤー号)
・2002年 小倉記念(アラタマインディ号)
・2001年 鳴尾記念 /・2000年 産経大阪杯(共にメイショウオウドウ号)


父は飯田明弘調教師。デビューイヤーに19勝を挙げると、関西新人騎手賞を受賞。これまでに種牡馬としても渋い活躍をみせているメイショウオウドウとのコンビで大阪杯、 鳴尾記念などJRA重賞は4勝をマーク。インタビューの中でも触れた通り、キョウワジャンヌの兄や姉の主戦を務めていた。理論派としても知られている。