関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

西園正都調教師

西園正都調教師


春のクラシック第一戦目の皐月賞では1番人気に推されながらオルフェーヴルの2着となったサダムパテック(牡3、栗東・西園厩舎)。続くダービーでも勝ち馬から2秒以上遅れた7着と惨敗。主役の座はオルフェーヴルに譲る事になってしまった。
三冠最終戦の菊花賞へ向けて、トライアルレースのセントライト記念で秋初戦を迎えたサダムパテック。春、一連のレース、休養明けのセントライト記念を終えた現在の状態について、幾度となくインタビューに応じて頂いている西園正都調教師が語ってくれた。


-:それでは菊花賞前のサダムパテックについて質問させてください。まずは春の皐月賞、ダービーはどうご覧になりましたか。

西:皐月賞は2着でしたが、1番人気に支持された中で王道の競馬はできたと思います。ダービーは馬も精神的にイライラしてきていましたし、馬場状態も悪かったですからね。クラシックで1番人気になると騎手も大変ですよ。想像以上のプレッシャーがかかるんでしょう。その点、菊花賞では、ほどよく人気も落ちますから騎手にとっては乗りやすくなるでしょうね(笑)。

-:ダービー後の休養期間について教えてください。

西:レース後にノーザンファーム空港で休養して、8月に栗東の近くにあるノーザンファーム信楽に移動しました。セントライト記念を使った後も、信楽に一旦戻して、10月5日に入厩しました。オーナーとも相談して、使った後は馬をリラックスさせるために短い期間でも放牧に出そうということになりました。トレセンという環境は馬にとってみれば戦場のようなもの。少しでも息抜きをさせてやりたいんです。

-:夏の休養で成長した点や変わってきたところはありますか。

西:背が高くなって帰ってきました。精神的にも余裕が出てきて春からの成長を感じます。それに、帰って来てからのほうが歩きが柔らかくなりましたよ。

-:菊花賞の距離、3000mはサダムパテックにとってマイナスにはなりませんか。

西:距離の不安はありません。セントライト記念のレース後、岩田騎手も「折り合いもついたし、菊花賞も大丈夫ですよ」と言ってくれましたから、距離の心配はしていません。97年の菊花賞で二分厩舎のマチカネフクキタルが勝ちましたが、あの馬の父・クリスタルグリッターズは短距離血統ですよ?あの時に血統も大事なんだろうけど、勢いと能力があれば距離の壁は力で乗り越えられるもんだなと思いましたよ。

-:血統的に父がフジキセキ、母がダート短距離で活躍したサマーナイトシティです。特にフジキセキ産駒はレース前に燃えすぎる気性の産駒が多いと思いますが。

西:フジキセキ産駒は何頭か管理させていただきましたが、僕のイメージは違いますね。中距離でも勝負になる血筋だと思います。現に1000万下で活躍しているタムロスカイは1800mで3勝しています。1400mや1600mも使いましたが1800m~2000mのほうが良い。だからフジキセキに距離の不安はないんですよ。

-:母のサマーナイトシティにはどんな印象を持っていますか。

西:松田博資先生の厩舎で走っていたんですよね。ダートの短距離馬だったと聞いています。サダムパテックが出走すると松田先生が応援してくれるんですよ。「勝てるんちゃうか?頑張れよ」って。ありがたいですよね(笑)。それにサマーナイトシティの父は(凱旋門賞馬)エリシオですから、長い所を走る下地はあると思っています。サマーナイトシティ自身も気性的にカッとした所があったから、短距離しか結果が出なかっただけで、能力的には短距離しか走れない馬ではないと聞いています。



-:先生はプラス思考ですよね。何事も前向きに考えるタイプなんですか。

西:そう!すべて良いほうに考えています。パテックは折り合いも付きますし、菊花賞の3000mという全馬初めての舞台でも、自在に対応できる精神面を持った賢い馬なんです。馬房でもジッとして無駄な動きをしない。そんなところもこの馬の良さなんじゃないでしょうか。

-:そういえばトレセンで見かける時も落ち着いている、というか少しダレて歩くように見えます。

西:そうでしょう?気になるモノを見たら立ち止まったりね。ゆっくりと首を下げて歩くからダレているように見えるんだけど、オープン馬にありがちな仕草の一つですよ。

-:先生からみたパテックとは、どんな馬ですか。

西:男馬なんだけど見ていると可愛いんです。それに心根の優しい所がある。この辺は調教師に似たんだろうね(笑)。

-:自分で言うんですか(笑)?

西:だってそうなんですから!ちゃんと記事に書いてくださいね。本当なんだから(笑)。

-:優しい馬・サダムパテックの菊花賞はどんなレースになるんでしょうか。

西:セントライト記念3着という微妙な結果でしたから人気はしないと思います。それに長距離戦では乗りやすさが大きな武器になります。程よく人気も落ちて騎手にとっても乗りやすくなるでしょうね。マークされる存在だった春とは違う結果を期待しています。

-:最後にサダムパテックを応援するファンに向けてメッセージをお願いします。

西:いろいろと話しましたが、馬は万全の状態で出走する事ができそうです。是非、競馬場に来ていただいて生観戦でサダムパテックを応援してください。馬券を買う方は自己責任でお願いしますよ(笑)。



【西園 正都】 Masato Nishizono

1955年鹿児島県出身。
1997年に調教師免許を取得。
1998年に厩舎開業。
JRA通算成績は308勝(11/10/17現在)
初出走
1998年3月7日1回阪神3日目7Rドクターブイ(13着)
初勝利
1998年4月26日1回新潟2日目4Rマイネルユートピア・延26頭目


最近の主な重賞勝利
・10年 マイルCS /・10年 阪急杯(共にエーシンフォワード号)
・11年 弥生賞 /・東京スポーツ杯2歳S (共にサダムパテック号)
・11年 マイラーズC/・10年 京都金杯 (共にシルポート号)


騎手時代に303勝を挙げた後に厩舎を開業。坂路を主体とした独自の調整方法で活躍馬を量産。自らも「ウチの古馬は短距離王国」と公言しているように、スプリント~マイル路線は大レースで常連中の常連。本年はサダムパテックでかねてからの目標であったクラシック制覇に挑戦中。 また、この秋もエーシンフォワード、シルポートらがマイルCSに出走予定。