“川島軍団”が隠し玉をフェブラリーSへ!
2012/2/16(木)
川島正行調教師
地方競馬からフェブラリーSへ唯一の出走となるナイキマドリード。管理するのは昨年のフェブラリーSでも2着に入ったフリオーソなどを管理する地方競馬のトップトレーナーである川島正行調教師だ。現時点での実績面では見劣りする感は否めないが、地方の名伯楽が送りだす隠し玉とは…?師が出走までの経緯を語ってくれた。
-:まず、中央初挑戦となるナイキマドリード(牡6、船橋・川島正厩舎)ですが、出走までの経緯を教えて下さい。
川:まず、暮れの23日に浦和のゴールドカップへ出走して、ああいう強い競馬をみせてくれたね。その後、当初、船橋記念は使わない予定だったのですが、“具合がいいのに使わない手もない”ということで、また、ウチの正太郎(川島正太郎騎手)でも大丈夫かと思い、船橋記念に出走させました。実際、競馬に行ったら、ああいう脚をつかって勝ってくれましたね。そして、12月、1月と続けて使ったので、休ませてあげようかと思ったが、いっぺんに長いこと休ませると、馬体も緩み過ぎてしまう。それに馬の状態も高い位置で維持していたので、どういうメンバーが出てくるかもわからないけれど、フェブラリーSを使うことで調整をしてきたら、相変わらず追い切りではイイ雰囲気。それに同じワイルドラッシュ産駒のトランセンドがあれだけの活躍をしていて、意識する部分はあったし、ウチのナイキマドリードもトランセンドと似たところがあったからね。
-:となると、ナイキマドリードはもともと調子の波があった方だったのでしょうか?
川:若いころはそういうところがあったんだよね。これだけ状態を維持しているのも珍しいよ。それを持続しているのは、ここ2戦で負担が掛かっていないんじゃないかな?それに今までは一度使われると、体調がガクっときたり、体重が減ったりしたのが、精神面が強くなってきたのか、馬が充実してきたのか、良くなってきたね。これだけのタイトルを獲ってきたら、どの道、今後は中央勢にぶつけなくちゃならないし、ここでどれくらいの力関係かも見てみたかったからね。
-:本質的には短距離馬ではないと思うのですが、距離に関してはいかがでしょう。
川:周りは短距離馬と思っているけれど、先行力があるし、中距離くらいが本来はいいんじゃないかな。砂を被ると、どうしても遊ぶところがあるからね。船橋なら向こう正面あたりで、隙があらば、上手く外に出すように前走もジョッキーには指示を出していたけれど、そういうイメージ通りの競馬が出来るようになってきたんだ。逃げや追い込みじゃなく、“先行型”の馬だと思っていたが、上手くいいポジションで運んで、終いの脚を活かせるような競馬が板についてきたね。
-:初めての中央遠征となります。
川:何せウチでGⅠを勝ってきたアジュディミツオーもフリオーソも、4コーナーまでは上手く競馬を出来ていても、坂を登ってからが止まってしまうんだ。そこからひと脚が使えるならいいけれど、やっぱり、普段の施設の差に違いが出てくるんじゃないか?かつては地方馬も中央で台頭出来た時代はあったけれど、その頃は関西に坂路(の調教コース)があっても、美浦にはなかったでしょう。「他の調教師が勝てるのに何で俺は勝てないのか?」と考えたら、まずは施設の差。そして、今は時代の流れで中央が第一で、南関東に来る馬は質の差があるからね。「(中央のGⅠなど)同じ土俵に立たせてやりたい」とは常々思うけれど、そういうことを考えると、中央に負けてしまうのは仕方がないのかという気はなきにしもあらずだな……(苦笑)。
-:先生のことですから、主催者に施設の差を埋めるよう、意見を持ちよるようなことはなかったのですか?
川:昔はあったね。ただ、やはり主催者も公務員だから、穏便に仕事を済ませればいいという発想が少なからずあるんだ。そういうことには動かないんだよ。競馬場の運営だって、こういう景気だから、大きな伸びはないかもしれないが、魅力あるものを提供するためにもっと努力しないと。いいレースをみせれば、ファンはついてくるわけだし、競馬は“興行”だからね。そういう努力が足りないと常々言っているんだ。
-:仰るとおりですね……。フェブラリーSといえば、昨年のフリオーソもロスを被ったように、芝スタートも課題ですね。
川:天気が良ければ気にならないけれど、今週は幾らか雨も降っているし、今の馬場では芝の切れ目が気になるな。地方からあのコースに騎乗してきたジョッキーに聞いても、「あそこでトモを滑らせる」と話を聞くからね。
-:枠順に関してはどの辺りがいいでしょうか?
川:私なりに思うのは5枠。真ん中あたりだね。そこからさっきも言ったように上手く砂を被せない競馬をして欲しい。
-:鞍上の戸崎騎手にはどんな指示をされますか?
川:まぁ、メンバーをみて、4~5番手くらいについていけばね。坂を登る時に押し出されるように行くんじゃなく、登ってから追い出せるくらいの手応えがあれば、チャンスはあるんじゃないかと思うよ。トランセンドという馬はマークをされると、残ってしまうようなタイプ。去年のドバイだって、ヴィクトワールピサと競ったから、あれだけ走ったんだろう。あの馬から離れて競馬ができたらいいんじゃないかな。船橋でトランセンドが負けた時(2010年の日本テレビ盃にてフリオーソで降した際)、圭太は巧く乗ったんだよな。
-:この馬のパドックでの様子を判断する際、どんな仕草だったら、好調を持続できるとみたらいいでしょうか?
川:本当に大人しい馬。ウチの厩舎はどの馬もカリカリするような馬はいないね。それは厩舎の周りに緑を植えているからじゃないかな?中央から移籍してきた馬も、当初は厩舎からレースに向かう際もイレ込んでいるような馬が、いつの間にか大人しくなるもの。パドックでファンがみても、その大人しさはわかると思うよ。それにファンは見る機会はないだろうが、前日や当日の厩で朝にゴロンと寝ている馬はだいたい勝つからね。一時、どういう馬が勝つのか、統計を取ったことがあったんだが、そういう結果はあったからな。中央の場合は出張で行くから、見られない部分はあるから、状況は違うけれどね。
-:そして、今回、ナイキマドリードは中央勢との力関係が気になるところです。
川:さっきも言ったようにこちらの土俵ならやれる馬でも、向こうに行くと厳しいからね……。フリオーソならば、トランセンドらとも戦えると思うが、ナイキマドリードは昨年もさきたま杯を勝ったとはいえ、一線級との対戦成績がまだまだないからな。ただ、今週の追い切りも軽く仕掛けただけで終いは12秒台。ここ3年か重賞を獲ってきたが、12秒台で上がってきた時は記憶が間違いじゃなければ、必ず勝っているんだ。調教と実戦の結果が結び付くからね。何せわかりやすいんだ、この馬は。状態は本当にいいから、それをどこまでぶつけられるか楽しみにしているよ。
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■最近の主な重賞勝利 |
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1947年千葉県出身。 騎手時代を経て、1990年に厩舎を開業。 |