関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

的場文男騎手

的場文男騎手


-:まずはWSJS出場おめでとうございます。

文:ありがとうございます。本当にこんな歳になって出られるなんて夢みたいです。

-:今の心境は?

文:とにかく「やったな」という気持ち。(第2ステージの)園田で2連勝と、あんなに上手くいくとは思っていませんでしたから、最終レースを勝った瞬間は「あぁ、やっと出られるんだなぁ」という気持ちでした。

-:2004年以前のWSJSはJRAの選定により残念ながら出場は叶いませんでした。その当時の心境はどうでしたか?

文:補欠ばっかりでしたからね。もちろん出場はしたかったんですけど、こればかりは仕方がないですね。

-:そうですね。そして、2005年以降はSJT(スーパージョッキーズトライアル)による選定方法に変わりました。それで自身にもチャンスが大きく広がった、出場への意識は強まったということはありますか?

文:「優勝すれば出場できるんだ」ということは考えるようになりましたが、そうは言っても全国から集まった14人で1つの枠を競うわけですから「そう簡単にはいかないだろうな」という気持ちは持っていました。

-:ついに今年、念願の出場となりました。優勝を決めた園田シリーズについてお聞かせください。

文:第1ステージの船橋シリーズを6位で通過できたので「上手くいけばチャンスあるかも…」という気持ちで、第2シリーズの園田は一戦目から気合が入っていました。

-:そして、第一戦を見事勝利されました。

文:勝った瞬間は「あれ?もしかしたら(総合優勝に)いけるんじゃないか…」と思いましたね。

-:続いて注目の2戦目。今までは控える競馬を主体としていた馬でしたが、的場騎手は逃げる作戦にでました。それには戦前の作戦、または意図などがあったのでしょうか。

文:1枠でしたから、レース前からスタートが決まれば行ってやろうとは思っていました。それが勝つため、少しでも上位を目指すには一番良い方法と考えていましたからね。

-:そのレースをインターネットで中継を見ていましたが、まさに好騎乗でした。

文:そうですね。スタート決めた後、マイペースに落としてからは思ったとおりの競馬ができました。本当に上手くいきましたよ。



-:それでは本番のWSJSについてお聞かせください。まず、WSJSが行われる阪神競馬場についてですが、調べたところ初めて騎乗されると思うのですが…

文:はい。初めてですね。

-:本番に向けてイメージされていること、研究などはされていますか?

文:中央競馬はよくテレビで見ていますからね。阪神競馬場もある程度は分かっています。

-:具体的にイメージされていることはありますか?

文:特にこれといったものはありませんが、やっぱりその日の馬場状態を見極めることが一番重要じゃないですかね。芝コースでも内の状態が悪かったら外目を回る意識はしますし、前が残る馬場なら積極的に行くということも考えます。それに枠順によっても乗り方が大きく変わってきますからね。その場その場で対応していきたいと思っています。

-:続いて騎乗する馬についてお伺いします。もちろんチャンスのある馬に乗れるのが一番良いのですが、的場騎手自身はどのようなタイプの馬が好き、乗りたいというのはありますか?

文:どちらかというと僕は先行タイプが好きですね。

-:あれ?意外ですね。追い込みタイプとお答えになるかと思っていました。

文:そういうこともないですよ。やっぱり気が良くて積極的に行ける馬の方が乗りやすいですよ。

-:そうなんですか。

文:でも、ファンの皆さんは僕の追い込みを楽しみに見て下さっていますから、そのイメージが強いんでしょう。やっぱり自分としては先行タイプの方が乗りやすいというのはありますね。

-:そして、的場騎手といえばあの独特な騎乗フォーム。あのような追い方になった経緯はありますか?

文:あの追い方に関しては僕の特徴なので、騎乗していくうちに自然とああなったんです。

-:色々と試行錯誤した結果、そこへたどり着いたと?

文:「馬を動かすためにはどうすればいいか」と考えていくうちにこうなりましたね。

-:あのフォームには長い歴史があるんですね。そして今現在ですが、技術的な部分で常に気をつけていることはありますか?

文:騎乗する際に気をつけているのは、やっぱり『馬の背中を締める』ということです。よく『当たりが柔らかい』っていいますけど、それは『馬の背中を締める』ということが重要なんです。例えば、運動会で子供をおんぶして走るような時、グラグラして走りにくくなることがあるじゃないですか。

-:はい。ありますね。

文:そこを改善するためには、上に乗ってる子供をギュッと自分に引きつけなきゃいけないんですよ。それは馬に騎乗するのも同じことで、乗っている騎手が上でビシッと締めてあげてないと馬が走りづらいんです。

-:なるほど。それでは『馬の背中を締める』ために、常日頃からされていることはあるんですか?

文:ウォーキングマシーンでのトレーニングは欠かしません。土日も暇なときはトレーニングをしています。締める力を上げるためにはこれが一番ですから。



-:話題をWSJSに戻します。今回は久々の中央競馬での騎乗になります。昨年の6月以来ですが、以前はよく中央遠征をされていましたが、今は少なくなりましたね。

文:そうですね。厩舎の方から声を掛けていただくこともあるんですが、やっぱりこの歳ですし断ることが多くなりましたね。

-:そういうお話は出ていたのですか。

文:ええ。こっちの馬でも500万、1000万ならチャンスある馬はたくさんいるんですけどね。とにかく僕自身も含め、南関東は月曜から金曜まで競馬をやっていますからね。そっちに集中してしまっているので、今は地方競馬が中心ですね。

-:1週間乗りっぱなしというのも大変ですからね。

文:決して行けないこともないんですよ。でも、土日に中央で騎乗したことで次の南関東の騎乗に影響が出ることはしたくないですからね。僕はやっぱり大井競馬が好きなんですよ。大井のために少しでも貢献したいという気持ちは常に持っています。

-:素晴らしいお言葉です。そして、久々に中央競馬ファンの前で騎乗されます。「これはアピールしたい」ということはありますか?

文:やっぱり大井競馬の代表、地方競馬の代表として行く訳ですから、少しでも地方競馬のためになるように頑張りたいと思っています。今は地方競馬の売り上げも下がってきている状況ですから。

-:そうですね。競馬ラボとしても、これを機に大井競馬や南関東競馬、そして地方競馬全体の活性化に繋がって欲しいと思っています。

文:僕が出て宣伝になるかどうかは分かりませんが、良い成績を収めることでよりアピールできると思っていますから、少しでも上位を狙っていきたいと思います。

-:出場するからには優勝を目指して頑張ってください。

文:はい。頑張ります。



-:少し話は反れますが、WSJSの他に日曜の『ジャパンカップダート』でボンネビルレコードにも騎乗されます。

文:そうですね。丁度タイミングが重なりました。

-:以前、管理されている美浦の堀井調教師が「的場文騎手が乗るのと、他の騎手が乗るのとではボンネビルレコードの走りが違う」ということを聞いたことがあるのですが、そのことに関して的場文騎手自身はどう思っていますか?

文:いやいや。たまたまですよ。

-:そんなことはないでしょう。

文:南関東に所属していた頃からですが、中央に行ってからも帝王賞・かしわ記念・日本テレビ盃と3つも大きいところを勝たせてもらったのも運が良かっただけ。良いときに乗せてもらっているだけです。

-:ジャパンカップダートでの手応えはいかがですか?

文:今回はかなりのメンバーが揃っていますからね。そう簡単にはいかないでしょう。僕は騎乗しませんでしたが、前走の南部杯もちょっと残念な結果でしたからね。

-:マイルが忙しかったんでしょうか?

文:それでもJRA以外の地方馬に負けてるくらいですからね。少し心配な部分はあります。それだけに「絶対に勝ち負けできる」とまでは言えませんが、乗せてもらうからには一つでも上位を狙って騎乗したいです。

-:ボンネビルレコードもこの中間は持ち直しているようなので、密かに期待しています。

文:一生懸命、頑張ります。

-:お疲れのところありがとうございました。これからも頑張ってください。

文:いえいえ。こちらこそありがとうございました。




的場 文男

1956年9月7日 福岡県出身。
1973年に大井・小暮嘉久厩舎からデビュー。
勝負服のデザインは「赤・胴白星散らし」
初騎乗:1973年10月16日 大井競馬 5R ホシミヤマ
初勝利:1973年11月6日 大井競馬 4R ホシミヤマ
地方競馬通算5895勝(09/12/01現在)
JRA通算成績は4勝(09/12/01現在)


■最近の主な重賞勝利
・08年かしわ記念
・08年日本テレビ盃
・07年帝王賞(全てボンネビルレコード号)


これまで大井リーディングを21回、地方競馬リーディングを2回獲得。騎手生活36年の大ベテランであり、50歳を超えた今でも南関東競馬の一線で活躍中。誰よりも大井競馬を愛し、『大井の帝王』『ミスター・大井競馬』の愛称で関係者、ファンの間から親しまれている。