元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
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2024/1/4(木)
皆様、新年もよろしくお願い致します。まずは能登半島地震で被害にあわれた方へ、心からお見舞い申し上げます。その他にも羽田空港での事故や北九州での火事など、心苦しいお正月となってしまいました。心がそわそわとする新年の始まりに不安を感じつつもここから良くなる2024年に期待していきたいと思います。そして、今年も皆様は競馬というスポーツを楽しんでください。
それではまず、2023年の有馬記念から振り返りましょう。ハッキリと一言、大変感動したレースでした。最強馬イクイノックスの引退から有馬記念ではタイトルホルダーの引退が予定されていた中、大変豪華なメンバーが揃いました。その中で、勝利を挙げたのがレジェンド豊ちゃんとドウデュースのコンビでした。まさに千両役者!というコメントと共に涙が溢れそうになりました。
レースはスタート直後、外枠に入ったスターズオンアースとルメールが2番手につける競馬を選択しました。有馬記念はコースの形状からすぐ1コーナーを迎えます。そのため、外枠からのロスを抑えるためにはスタートと1コーナーの入りが非常に大事になります。そこにルメールの技術が集約していたと思います。ここで、これはスターズオンアースが勝つのかと思いながら見ていました。この時、豊ちゃんは急かさずリズムだけを重視していました。本来、体はマイラー体形だけに、2500mとはいえ向正面まで馬のリズムで進めれば、残りは反応してくれると信じていたのだと思います。
その時、あのオグリキャップのレースがフラッシュバックしました。思わず、これは豊ちゃんくるぞ!と叫んでいました。すると息子から京都記念のイメージじゃないか?と言われ、どちらも似たレースだということに気づきました。みるみると外からポジションを上げて行くと、最後は2番手にいたスターズオンアースとの叩き合いを制しました。レジェンド豊ちゃんのガッツポーズは脳裏に焼き付くほどの感動を生みました。
2着のルメールは素晴らしいレースをするも、3コーナーで内ラチにぶつかってしまったのは計算外。あそこがなければ、更に際どくなったとはずですが、それでも外枠からできる最高の競馬をしたように思います。残念だったのはジャスティンパレス。まともにレースができたのなら勝利まであったような最後の脚色でした。スタートから少し展開が向かなかったですね。その馬にカットされたタスティエーラも不運だったと思います。2023年を締めくくる最高のレースだっただけに、不利もなくそれぞれの100パーセントを見たかったですが、こればかりは仕方ありません。
2024年も早速、中山・京都の3日間開催から始まります。初日には金杯が予定されています。1年を占う意味でも大事なレースになってきますし、騎手にとってもここから今年はやるぞ!と気持ちが入っているので見応えある競馬になります。その中から京都金杯はダノンティンパニー(回避になりました)が注目を集めるでしょう。別格な勝ち方をする可能性が十分あると思います。ただ、開幕週の馬場がどうなるかというところが懸念点でしょうね。
そこに対抗してくるのはメイショウシンタケになるのではないでしょうか。お正月といえば門松、そして新竹となる気がしています。忘れた頃に注意したいセルバーグなどもいますし、お年玉はこの辺りを絡めると面白いかもしれません。心苦しい1年の始まりとなりましたが、ホースマンにとっては無事に競馬を開催し、少しでも皆様に楽しんで頂くことが仕事です。是非、その意気込みに乗って頂き、馬券を当てた後には寄付なども考えてみてください!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。