'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
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勝利数
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ジェンティルドンナと雌雄を決する秋の盾へ
2014/10/30(木)
着実な変わり身、伸びしろを感じとった2週間
-:天皇賞(秋)(G1)ではジェンティルドンナ(牝5、栗東・石坂厩舎)に騎乗されることになりましたが、2週連続で栗東へ向かい、追い切りに騎乗されました。まず、乗りに行く前の印象と、乗ってからのイメージの違い、感触をお伝えいただけますか?
戸崎圭太騎手:乗る前のイメージは凄く元気が良くて、ヤンチャまでとはいかないですけど、少し元気があるようなイメージがあったんですが、攻め馬で跨って、凄くドッシリとしていて賢さを感じましたね。
-:レースでは速いペース、例えるなら去年の天皇賞(秋)みたいに良いペースで行っても、掛かるような雰囲気のある馬ですよね。
圭太:そうですね。でも、全然そういう雰囲気はなくて。
-:調教では凄く乗りやすいという話ですね。
圭太:ええ、凄く乗りやすい。
-:それはイメージ通りでしたか?
圭太:いや、そこもまた違いましたね。あのレース振りを見ていると、道中はいくらか元気良く走っていくのかな、なんて思ったのですが、凄く折り合いも付くし、乗りやすいです。操縦がしやすい馬でしたね。
-:2回続けて乗ったことでの変化、進歩はありましたか?
圭太:違いましたね。気持ちが入ったというか、馬にスイッチが入ったような。2週目の方が随分と動きが良かったです。
-:となれば、現状でも割と体調面は出来てきている、ということですか?
圭太:そうですね。至極順調に来ているというのは感じますね。
「1週目の感じですと、多分レースとは違うだろうな、という走りをしていたので。それが2週目でスイッチが入ってからは、少しこういうところがあるのだな、というハミの感覚があったんで、そこに関しては追い切りに乗って、良かったかなと思いますね」
-:普段は「調教で乗らずにレースに向かう方が好きだ」と公言されていたと思います。今回は流石の実績馬ということもあり、追い切りでの騎乗も依頼されたと思います。あえて、事前に跨った上でのイメージは膨らんできましたか?
圭太:1週目の感じですと、多分レースとは違うだろうな、という走りをしていたので。それが2週目でスイッチが入ってからは、少しこういうところがあるのだな、というハミの感覚があったんで、そこに関しては良かったかなと思いますね。説明するのは難しいですが、ハミの取り方と言えば良いのかな。読んでくれた人がそれで分かりやすいのかは分からないですが……、ハミの噛み方というか、取り方、走り方ですね。でも、レースに行ってからも、恐らくもう1段階か、2段階スイッチが入ると思うので、そういう想定ではありますね。
-:今までと同じような感覚ではなく、レースではまた違う仕様というか、違うものになってくるだろうと。ここ一連、休み明けがもう一つの印象もあります。
圭太:ピリッとしない成績みたいですけどね。ただ、乗せてもらう立場、これから挑戦する立場で、そんなネガティブなことを言ってもしょうがないですからね。休み明けでしょうが、別に気にはしていないです。
-:先にもお話いただいたように、休み明けをこなせそうな雰囲気を感じたわけですからね。先ほどの話では。
圭太:凄く順調ですし、良い雰囲気はありますのでね。レースに行ってどうなのか分からないですが、特に気にはしていないです。
-:追い切りの映像を見る限りでも、大きな癖があるとか、動きが重いようには見えなかったですし、順当だったら良い勝負が出来るのかと思っています。
圭太:そうですね。間違いないと思います。
-:先生(石坂正調教師)とはお話はされましたか?
圭太:いや、今の段階では特には。先生もジェンティルに対しては、「順調に来ている」とは言っていましたしね。レース展開については直前に相談しようと思います。
好相性を感じさせるレースぶり
-:勘ぐると、最大目標は正直もう一つ先なのかもしれないですが、ここまで見てきた中でのイメージとしては、ジェンティルドンナをどういう馬として捉えていますか?
圭太:いや~、もう自信を持って乗れますね。「速い」というよりは「強い」というイメージが強いですね。なおかつどんな競馬でも出来るという強みも。
-:確かに、終いに懸けて、凄く切れるような競馬をしている訳でもないですし、ある程度位置を取りに行っていますからね。
圭太:どんな競馬でも出来ると思うんですよ。だから、そんなに着差が出るような勝ち方はしていないと思うのですが、そのレース、レースで強さを出し切ると思うので、僕としては自信を持って乗せていただける馬だと思っていますね。
-:ドバイでもああいう不利がありながら、そこから切り返す根性があり、パフォーマンスが出来ますからね。
圭太:そうですね。あれはビックリしました。
-:ああいう競馬というのは、やっぱり牝馬だと難しいものなのですか?僕は「牝馬なのにああいう競馬をするのは凄い」という声をよく聞いたのですが、逆に牝馬の方が出来そうなのかな、という印象を受けました。
圭太:ああいうのは、牝馬の方が強かったりするんですよね。あくまで僕のイメージですけどね。それでいて、けっこう男馬の方が、精神的な部分で弱いところ、一面がある馬が多いですね。僕もずっと騎手をやってきていますが、女馬の方がああいう局面には強いイメージがあります。
-:もちろんそれなりの能力というか、ロスを跳ね返せるだけの能力があることは前提でしょうが、牝馬ならではなのかと思いました。
圭太:ええ。だから、大きい男馬というのは、基本的にけっこう怖がりな馬が多いですよ。大きい馬ほど、少し怖がりな馬が多いですね。
「ジェンティルドンナは好きなタイプの牝馬です」
-:かねてから「ヤンチャな牝馬は好きだ」とおっしゃっていたので、ジェンティルドンナはタイプの牝馬ということで良いですか?
圭太:そうですね。タイプです(ニヤリ)。
-:そもそもあのレースは、シリュスデゼーグルのスミヨン騎手がおそらくジェンティルの力量を分かっていたからこそ、締めに行ったレースでしたよね。
圭太:分かっていたから、ああいう感じですよね。海外の競馬ならではというか、あからさまだな、と思ったほどでしたね。
-:それでも、ああいう中で勝てるジョッキーも凄いですね。
圭太:そうですね。まあ、そこで我慢を出来るというか、冷静な判断というのは、騎手の腕だと思いますので、そこは僕も痺れましたね。馬にも騎手にも痺れました。
-:ジェンティルドンナと言えば、フランスの競馬場に行った際、現地の競馬ファンの人が「何で凱旋門賞に来ないんだ」みたいな話ていたんですよね。海外のファンも注目している一戦かと思います。
圭太:そうですね。幸せなことですよね。そういう馬に騎乗出来るということは。
-:ダートならフリオーソなどもいましたが、芝でG1をこれだけ勝っている馬に騎乗するというのは、もしかして初めてじゃないですか?
圭太:う~ん、恐らくそうですね……。
-:調教に乗るだけで、その違いは、感じる部分はありましたか?
圭太:正直なところ、恐らくジェンティルドンナはレースに行ってからの方が、凄みを感じさせてくれるのだと思いますね。というのも、やっぱり馬に賢さがあるんですよね。それでいて、ドッシリとした部分があるので、その辺はやっぱりG1を何勝もしている強さを感じますし、オン・オフがあるのでしょうね。
-:「安心感」といえば、良い馬の条件でもありますが、圭太さんの中での上級な評価の表現という気がします。
圭太:そういうイメージはありますね。
-:いよいよ「騎手・戸崎圭太」にも、より注目の集まる一戦です。レースに向けての展望をよろしくお願い致します。
圭太:これだけ良い馬に乗せていただけるので、思う存分楽しみたいですし、ジェンティルドンナの力を最大限に出したいと思いますね。
-:プレッシャーはありませんか?
圭太:ゲート裏に行ったらプレッシャーを感じるかもしれないですけど、今は楽しんでいます。ハハハ。
-:枠も確定していないので、どうなるか分からないですけど、良い結果を期待しています。
圭太:ハイ、ありがとうございます。頑張ります。
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。