'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
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2019年を総括!2年連続ダービーで2着 落馬負傷 そして、来年へ決意
2019/12/28(土)
※新年2020年、第1回目の更新は1月5日(日)の予定です!
年内最後の更新は2019年の総括について。残念ながら落馬負傷による戦線離脱がどうしても際立ってしまった一年だったが、惜しくも勝利とはならずともG1での善戦なども目立ったことは事実だ。聞けば、昨年から感じた変化、そして、怪我により客観的にレースを見て得るものもあったという。一年の締め括り、そして、来季へ向けての熱い思いをご覧いただきたい。
-:そして、今年1年を振り返っていただきたいと思います。まず…怪我という喜ばしくないトピックスが占めてしまうと思いますが、2019年はいかがでしたか。
圭太:今年はやっぱり怪我があったことが一番大きな出来事。今までにない大怪我になってしまったなと。今もそうですけど、色々思ったり、気付いたり、考えたりすることがありましたけど、逆にこれも良い機会だと思って、今は受け止めて過ごしていますけどね。この怪我がなければ…怪我をする前の春くらいから、自分の中で調子も上がってきたというか、随分と感覚的も良くなってきていたので、楽しみな週が続いていたんですけど、また一からだな、という今年1年でしたね。
-:今年1年を漢字で表すとどんな字ですか。
圭太:激しいという字の『激』だね。
-:「激」はすぐ思い浮かばれましたね。どういった「激」ですか。
圭太:自分の感覚も良くなってきたというところで、動きもありましたし、今度の大怪我ということで、経験をしたことがない感覚もありました。気持ち的にもそうだし、出来事もそうだし、色々あったなと思いますね。あまり普段、経験出来ないことを経験している1年だと感じますね。怪我があったからこそ、激しさになっちゃいましたけど、怪我がなくても、色々変化があって、動きがある年ではあったので。ずっとダメだった夏も(新潟)リーディングも獲れましたし、勢いづいていて、帰ってきたなというのがあったので、動きがある年でしたね。
-:何か遠い昔に感じますね。毎週、観させてもらっている身としては、その習慣が途切れていますからね。
圭太:もう2カ月になりますからね。乗っている時は時間が経つのが早かったですけど、2カ月というのはまだ2カ月とも言えるし、早いと言えば、早いか…。
-:休みの期間中、客観的に観られていて、何か気になったポイントとか、活かせそうなところはあったそうですね。たくさんあったのかもしれませんが、この機会に一つ挙げていただけると…。
圭太:色々ありますよ。これは重要なことなんですけど、怪我をする前はレースでの位置取りを意識し過ぎていた自分がいたなと。何か前々で競馬をしなきゃいけない、みたいな風にも思っていたりもして、客観的に2カ月間、ジックリ観させてもらっていると、前々で競馬をすることは基本的なことなんですけど、馬にもリズムがあったり、その時のペースだったり、あくまで前々だけが一番正しいポジションじゃないと思えた時に、やっぱり何か慌てて乗っていたなとは感じましたね。馬が走っているサインだったり、もっと感じなきゃいけなかったなというのは感じましたね。
だから、怪我があったレースにしても、もう少し乗りようがあったなとは改めて感じますよね。(ハナに)行かなきゃいけない馬だったかもしれないけど、でも、それだけじゃないかもしれない。下げても、もっと良い脚を使ったかもしれないし、その後に繋がって、その馬にとって勉強になったかもしれないですからね。行こうと思って、こういう怪我になってしまった訳ですから、結局、行けなかった訳じゃないですか。そう考えた時には下げて、リズム良く行けた方が良かったのかなと思いますし、それがやっぱり一番思うところかな。そういう風に見ると、しなくていい怪我でもあったのかなと思いますね。
-:ちなみに、あの時の先生の指示はあったのですか。
圭太:特にはなかったですね。
-:大きいレースだからということもあるかもしれないですけど、だいぶポジションを主張したなという感覚がありましたが。
圭太:やっぱり浦和でしたし、それまでに行く競馬しかしていないですからね。そればっかりに捉われていた自分がいたなと。新しい脚質、競馬を見られるチャンスだったかもしれないですからね。そういうチャンスを壊してしまったのかなと思いましたし、最初から行かないという乗り方はなかったと思いますけど、あの状況のことに関して言うと、行けない訳だから、切り替えて、という考えもあったかもしれない。ずっとレースを観ていても、本当に落ち着いて乗っている人は、落ち着いて乗っていますし、ポジションを取りに行って、やっぱり馬との一体感になるのが早いですよね。そこのちょっとしたサジ加減ですけど、観ていると、さすがだなという競馬はたくさんありますよね。
▲冷静に乗っている、流石だと戸崎騎手も評していた
11月23日、東京10Rのブルベアイリーデのルメール騎手
-:一番は感じたことはそこと。この1年の中で、良かった出来事というのを挙げるとすれば、何でしょうか。
圭太:う~ん…今、乗れていないですからね(笑)。
-:通算1000勝ですかね。
圭太:そうやって挙げればありますけど、やっぱり体が健康で、乗れていることは幸せだなというのはありますね。勝つことが一番なんですけど、勝っても負けても、乗れているということは本当に幸せなことなのだなと改めて感じますよね。
-:やっぱり乗り鞍自体が少ない人も、もちろんいる訳ですからね。
圭太:今、騎手として、少なからずやれることが出来ていないというのは、もどかしい部分はありますからね。乗っている時は負けた、勝ったもありましたけど、一番忘れちゃいけないことを忘れていたなというか、当たり前のように乗っていたなというのはあるので、それが今は一番思うかな。その中で出来たことでは、1000勝というのはとても大きかったことですし、1000勝の重みというのは改めて感じましたけどね。
その中で、2000勝なんていう、たやすく目標を挙げているけどね。でも、今でもずっと目標は変わっていないですけど、言う重みというのは、1000勝をした時に言った時と、今言う重みというのはやっぱり違いますよね。一つ大きな覚悟をしながら、2000勝を目標ということを言いたいですし、たやすく言えるもんじゃないけど、やっぱり目標としては変えたくないというか、目標としては変わらない部分があるので、そこは曲げずに達成したいなと思いますけどね。
▲史上4人目となるNAR&JRAダブル1000勝を達成
-:武豊さんも大きな怪我をしましたし、ルメールさんもJRAに入る前に、ラチにぶつかる怪我がありましたからね。少なからず、みなさんそういう経験はされてはいますからね。
圭太:この前、競輪選手と話をした時に「怪我をして帰ってきた時には、強い自分がいる」というような話が出たんですよ。競輪選手も大怪我が多いらしいんです。一つ言われたことは「今は苦しいけど、復帰して帰ってきたら、必ず強い自分がいる」ということは自分も感じたことだから、そうなるのかな、なりたいなと思いましたし、すごく励みになりましたね。あの時、現役選手の方もいて、僕も今年の競輪グランプリは観ようかなと思っていて、応援しようと思っています。
-:来週ですね。それこそ、東京大賞典の後日にやっているイメージがありますね。
圭太:僕もあまり観たことがなかったので、これを機会に。
-:今年のG1ではいかがでしたか。 圭太:春はあれだけ惜しい競馬が続いて、馬券には絡めたんですけど、勝てなかったのは心残りだったことはありますけどね。
-:しかし、常々、僕も遠回しにお伝えしていますけど、人気がなければ、ファンは、勝っていなくても圏内に来てくれることが嬉しいでしょうね。
圭太:ただ、乗っている方としてはね。やっぱり立場が違いますからね。馬券でやっているのと、こっちは乗って、勝負でやっている訳だから、やっぱり勝たないと、というのはありますしね。
-:人によって違うと思いますけど、馬主さん、生産者の人たちも、人気薄だったら上位に来てくれればOKという人もいると思うんですよね。そういう意味では、今年は半分圏内でした。複勝率は(0-3-3-6) で50%行っていましたからね。
圭太:自分では納得出来ないですけど、それも一つの励みとして、今後にも活かしたいなと思いますけどね。
天皇賞(春)のレース後の一枚、ルメール騎手と笑顔で握手している姿がとても素敵です。
レース後の姿やファンの方へのサービス観ていてほっこりします。
私が競馬を始めたのは2016年、動物が大好きで馬に会いに競馬場に行ったのがきっかけでした。いつから戸崎騎手の熱烈なファンになったのかは謎ですが、いつの間にか大好きになり地方競馬場にまで応援しに行くようになりました(笑)。今は応援できなくて毎週とても寂しいですが、リハビリ頑張ってください。戻って来るのを楽しみに待っています!
(「あんず」さん)
-:そして、今年は他のジョッキーの話題ではありますが、外国人騎手に乗り代わって勝つということもありましたね。
圭太:今はそういうのが当たり前になってきているので、一戦一戦が勝負になっているんですけど…。そこはオーナーさんが決めることというか、だからこそ、そういう結果な訳で、もっともっと頑張んなきゃいけないなというところですよね。誰にも反発というか、文句というか、グチというか、そんなことよりもやることがあるなとは感じますね。僕はハッキリ、外国人騎手に負けているという感覚でいますね。ただ、このままで終わるとは思わないし、自信もあるし。だから、やらなきゃいけないことがあるかなという感じですね。
-:今年のG1の中で、一番納得出来た内容はどのレースですか。
圭太: (しばらく考えて)難しいね。みんな惜しかったからね。何か「ここをどうにかすれば」というのがそれぞれありましたけどね。結果で言えば、天皇賞(春)が一番惜しいのかなぁ…。皐月賞は負けてしまったけど、枠も良かったと思うし、あれなりの内容だったと思うんです。色々な思いで言うと、ダービーかな。やっぱりダノンキングリーというのは、僕の中で一つ大きな存在でしたからね。ダービーまでですけど、クラシックも同じ馬で戦えて、色々なイメージをしながら、ダービーには一番深い思いで臨んで、結果以外はイメージ通りに上手くいったかなと。
-:それこそ、来年復帰したとしても、例え結果が良かろうとも、今年度とは違って、2歳から乗って来てという、今年と同じような感覚では乗れないですよね。
圭太:間違いなく違いますね。でも、今の状況を経て、またダービーに乗せてもらえるなら、今までとは違う思い、感覚で乗れるでしょうし、初めて味わえる感覚だと思います。納得というか、印象に一番残っているのはやっぱりダービーですかね。
-:怪我をした最中の中で、復帰出来ないかもしれない、という思い、危機はあったのですか。
圭太:やっぱりありましたよ。場合によったら、もっと悪くなるようななことも言われましたし、今までも他のところを怪我して、その時も言われたこともありましたけどね。デビューしたてで顔面をやった時は「眼どうなるか分からない」と言われたんですけど、若かったのか、一瞬は思いましたけど、そんなに深く…。
-:当時と今とでは、積み上げているものが全然違いますからね。
圭太:思いは違いますけどね。
-:感覚的なもので言えば、怪我をする前に修正出来たというか、良くなったことというのはどういうことですか。
圭太:今でも覚えていますけど、去年の●月の頭ですよ。今までやってきたものが噛み合ったという思いがありましたね。でも、その中でもこうやって慌てている自分いたりしたというのは、覚醒しきれていないんですけどね。感覚の問題だから、何とも説明できないですけどね。何か徐々に良い時に(近付いて)来ていたけど、試行錯誤の中、シックリきたんですよね。そこから良くなっていった自分がありましたね。それはここが良くなったとか言うよりは、全体的に馬との位置だったり、感覚だったり、というものがありましたかね。
-:その日は、いつも行動を共にされている熊野マネージャーにそういう話はされたり?
圭太:したっけかなあ…すぐに特に話していないんじゃないかな。やっぱりちょっと違ったり、良かったりというのはありましたけど、その頃に比べると、ブレが少なくなって、安定して乗れてはいましたかね。
-:「客観的に観ていて、気付くこともある」ということは、もちろんまだまだ上積みがあると。
圭太:まだまだですよ。そんな完成形でもないですし、納得出来るものではないですけど、当時は良くなったという感覚は掴めた週でしたね。
-:精神的な面もあったのですか。技術的な面ですか。
圭太:技術的なものかな。でも、慌てているということは、そこはやっぱり変わっていなかったんじゃない。そこから徐々に精神的な部分も良くなっていく方向だったのかもしれないですけど、そういった意味では、それをそう感じる面では良い休みなのかなと。だから、無駄にはしたくないですよね。
-:繰り返しになりますけど、現在の1週間はかなり忙しいんじゃないですか。
圭太:今はそうですね。手に関しては、色々やることがある感じですね。それ以外のことはやっていますけど、体は下半身だったり、腹筋は引き締まってきていますけどね。
-:お酒は飲まずに。
圭太:飲んでいないです。
-:あとは読書をしたり、家事ですか。
圭太:リハビリがてらにやったりだとか、していますかね。家でも運動していますし。
-:年間の成績に関してはいかがですか。
圭太:100勝出来たというのはやっぱり大きいかな。周りからもけっこう言われるので、100勝というのは、観ている方にとっても一つのポイントではあるのかな。と言うのは、こういう状況になってから言われて、改めて感じますけどね。
-:乗っていた馬がそのままの結果だとしたら、年間120勝くらいは行っていたのかもしれないですけどね。
圭太:その辺はちょっと分からないですけどね(笑)。1日でも早い復帰を目指してやっていますから、それで早く出来ればなと思いますし、早く乗ってあの馬の感覚を感じたいですよね。
-:今までで最長の休養ですね。
圭太:最長です。1日1日を無駄にしないように過ごしていますけどね。
-:家族旅行も行かずに。
圭太:行かないですね。周りは休みが取れたから、旅行とかなりますけど、気落ちしている訳ではないんですけど、あまり行く気にはならないかな。もともと面倒くさがり屋というのもあるから、旅行は国内だったりしたら、1泊じゃないですか。海外も騎乗以外では行かないですしね。
-:実は面倒くさがりですか?意外ですけど。
圭太:いやいや面倒くさがり屋ですよ。
-:そんな感じには見えないですけどね。だって、英会話やトレーナーを付けたり、歯を治したり、その他、もろもろ色々トライされるじゃないですか。
圭太:狭い範囲でね。でも、基本的には面倒くさがり屋ですよ。良いと思ったことはやりますけど、それは自分の成長のためにやっている訳じゃないですか。歯なんかもやっぱり歯並びはスポーツ的に良いと言いますからね。
-:そうでしたか。長くなってきたので、これが最後の質問に。今の状況で掲げる、来年の目標はありますか。
圭太:ダービーはやっぱり勝ちたいですよね。そこから2000勝に向けて、着実に一つ一つ勝ち星を増やしたいですし、あとは、復帰して違う自分を感じたいなという思いはありますね。
-:今、客観的に観られている部分とかも、もちろん投影させていければ良いでしょうし、休んだなりのものを。
圭太:無駄じゃなかったというのを自分で感じたいですし、強くなっている自分がいるなというのも自分で感じたいですしね。(ダービーを獲りたいというのも)ありますけど、まずは復帰に向けてですね。
-:観させてもらっている方も物足りなさを感じる日々ですが、復帰された際には、新たな姿が観られることを期待しています。今年一年、ありがとうございました!
圭太:ありがとうございました!
※次回は1月5日(日)に更新予定です!
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成し、NARとのダブル1000勝は史上4人目の快挙を挙げた。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。