高田さんは、松井さんがワールドカップで活躍して騒がれているのを見て、どういう気持ちになるんですか?

高:素直にメッチャ嬉しいですよね。でも、ちょっと差を広げられたな、みたいなところもありますね。20歳くらいの頃、松井がサンガでJ2の頃…。

松:「頑張れよ」て言われてましたからね、潤君から。「もっと頑張れよ」って。

高:まあ、僕も当時そこそこ重賞を勝たせてもらったりしていたんで。松井とは境遇が似ていたというか、むしろ僕の方が稼いでいたかな、という感じはあったんですけど。まあ稼ぎが一緒くらいで、年も近かったんで仲良くなれたっていうのもあったと思いますけどね。

なるほど。

高:やっぱりどこかに差があり過ぎると、何をするにしてもお互いに気を使うと思うんですよ。飯を食うにしても、稼いでいる方が気を使って出すわけじゃないですか。僕は松井の一つ上なんで基本的に出すことが多いんですけど、例えば松井がもの凄く稼いでいて僕が全然稼いでいないのに、年上やからってことで僕が払っていたら、払われる側も気まずいじゃないですか。

松:いや、僕は別にどんどん払ってもらっていいんですけど。

松井さんは永遠におごってもらう気マンマンですね。

松:もう「どうぞどうぞ」ですよ(笑)。

高:でも松井はこうして凄く注目されているけど、結構、苦労もしてんねんな。代表を外されたりしている時期もあったし、腰も怪我したり、フランスでも試合に出れへんかったりとか。あんまり辛さを表に出さんタイプで、いつ話しても「うん、全然大丈夫」みたいな感じなんですけど、一回「何かいつもとちょっと違うな」って、これはマジでヤバそうやな、と思ったときがあって。それで、凄く長いメールを送ったんですよ。

松:………覚えてないっすねー。

高:覚えてないんかい!でもそのときに多分嬉しかったはずなんですよ。泣くまであったんちゃうかな?

松:えー、いつ?腰痛めたとき?サンテティエンヌのとき?

高:ルマンのときかな。「良いときもあれば悪いときもあるからそんなに気にするな」的な感じのことを、長いメールの最後に書いたんですよ。そうしたら松井がそれを凄いネタにして(笑)。

松:あ~、そういやあったね~(笑)。長いメールの一番最後に、名言的な感じで“ドン”と「良いときもあれば悪いときもある」って。「励ましてくれてありがとう」と思いながらも、それをネタにしたんですよ。

ネタに(笑)。

松:僕が全然あかんときにその言葉をもらって。それから僕が段々良くなってきて、潤君が「しんどいわー」とか言っていたから、あ、これ今なら言えるやん、ということで「まあ、良いときもあれば悪いときもあるから」って使ったのを覚えています(笑)。

高:多分、ちょっと恥ずかしいからネタにして返してきたんやと、俺はそう思ってる。

メールを読んでジーンと来たんだろ?と。

高:そうそうそう!メール読んで泣いたんだろ?と(笑)。まあ、そこから事あるごとに「良いときもあれば悪いときもあるから」を使うようになって、最初は交互だったけど、そのうち松井の方からばっかり言われるようになってきて。

松:いつも電話で「どう、潤君。元気?勝ってんの?」って聞くと「全然あかんわー」みたいな感じだから「良いときもあれば悪いときもあるから」って(笑)。

高:もう最近は、その言葉を言われるたびにイラッと来るようになって。

励ましの言葉じゃなくなってますね。

高:そう!俺が凄く心配して送ったメールを。

松:いや、僕もこれで切磋琢磨じゃないですけど、お互い高めあっていきたい、と。

高:確かにそれで頑張れた時期もあったんですよ。「俺、勝ったし。G1勝ったし」みたいな。今もそこそこ頑張ってるけど。

松:潤君、自分が勝ったときは「ちゃんと見とけよ、オマエ!」とか言うけど、フランスで見れるわけがない。テレビつけてもフランス語しかやってへんのに。で、わざわざインターネットでレースを見ても馬がいっぱいおるから「潤君、どこにおるのか分からへんぞ」と。どれが勝ったのかも分かれへんし。

高:そこがまた松井のオモロいとこやけどね。競馬に興味がないからね。

松:最初は名前なんか知らんかったけど、今はメッチャ興味あるからね。アドマイヤドン、やろ?

高:何年前の馬やねん!

松井さん、どや顔してる(笑)。

松:あとあれやろ?パスポート。

高:ドリームパスポートか。ほんま全然興味ないやろ?

松:あるよ(笑)!クララや、クララ。今日(7/11・日)出とったで、クララ。………違う?

高:何言うとるか分かれへん(笑)。そんな馬いいひんし。まあ、松井はトレセンには来たこともあるけど、そのときもな。

松:ヒドイよ。

高:嘘ついて無理矢理来させたんです。「バス釣り行こうや」って。その日は休みやったんですけど、アドマイヤドンが地方交流に使うんで調教があったから「バス釣り行く前にちょっと栗東に来て」って朝5時くらいに呼び出して。

松:「え?朝5時?早いな…。でも釣りやからそんなもんか」と思ったけど「釣りは好きやから行ける、大丈夫」って。

高:何も知らんとトレセンに来た松井を厩舎に連れていって「俺、今からウッドで乗らなあかんからちょっと待っといて」って。

松:一応、調教の見方を説明してくれはったんですけど、全くもって…「俺、釣りしに来てんのに何で馬を見てんねやろなー」って。

高:競馬ファンからすれば、アドマイヤドンの調教といったらメッチャ食いつくぞ。あんまり覚えてへんやろ、トレセンの中。

松:全く。

高:その時点で興味ないからや。

松:でも馬を見て「凄いな」と思った。「メッチャでっかー」と思って。怖くて触れなかったです。

高:そうそうそう!そうや!「この馬、大人しいし大丈夫やから」って言っても「俺、もうええわ」って。そんなにビビるのは初めて。そこまでビビる人ってそうそういいひん。近づきもせんかったから「どんだけ怖がりやねん」と思って。そんなゴッツい体して。脚も凄いやんか、丸太ん棒みたいやんか。ちょっと見せて。

松:何がやねん。潤君の方が凄いやん。

高:何でやねん。ちょっと一回松井の脚を触ってください。

いいんですか?では失礼します。

高:もうスネとかヤバいでしょう?カッチカチで。

おー。凄いですね。

松:いや、あっち(海外)の人の体なんか見たらビックリすんで。前に写真送ったやろ?

高:ああ!見た見た(笑)。フランスリーグのロッカールームで撮った写メを送ってきて。もうムッキムキで…フルチンやったっけ、パンツは穿いてたっけ?

松:パンツは穿いてた。もうほんまムッキムキやで。

高:松井はそれを写メで撮って。他にも何人か写ってましたけど、みんなムッキムキなんですよ。外国人のタックルを見てても強烈やし、メッチャ痛そうなときもあるやん。

松:あるね。

高:でも、サッカー選手は凄いよね。僕らジョッキーは毎週毎週レースがあるから、土日に乗って、月曜休みで、体がシンドいからゆっくりして、みたいな。で、また水木に追い切りに乗って、週末に体調を合わせるみたいな感じやけど、サッカー選手は何ヶ月も前から目標の試合に合わせるわけやん。

サイクルが違いますよね。

高:特にワールドカップは4年に一回やし、日本でいうと天皇杯なんかあるやんか。そういう限られたチャンスの大会を棒に振るのは選手生命的に…。例えばワールドカップに出るのと出えへんのでは、その先がどんどん変わってくるわけやんか。それでも、もうあと一週間後に試合が迫ってんのに思いっきり削ったりするやん。そういうのって試合前に怖ないの?

松:いや、軽々しく行くと逆に変な怪我をするねん。真剣に行かへんかったら、逆に危ない。

高:そうなんや。見ていると、ジョッキーの落馬にちかい衝撃があるわけやんか。

松:まあ俺は落馬の方が怖いけどな。潤君が障害に乗る、という情報が流れてくるといつもビクビクするからね。だから潤君が一回落馬したときに、誰かから電話で教えてもらって「大丈夫かな?」と思って。メッチャ心配しましたよ。

高:そうそう。入院してたときに松井から電話がかかってきて。「大丈夫?」とか言って。しかも怪我して二日後に。まだシンドくて体が動かれへんから、誰にも連絡をしてないし「お前、何で知ってんの?」って。でもサッカーも骨折とか普通にするやん。

松:でも命にかかわることは滅多にないからね。騎手は凄いよ。

お互いに華やかな世界の反面、怪我もあるし危険と隣り合わせですよね。本当に大変な世界だと思います。そろそろお時間になりますので、最後に今後のお話を伺いたいと思いますが、松井選手はワールドカップ出場というひとつの夢を実現されて、新しい夢、目標はどんなものになりますか?

松:チャンピオンズリーグなどのヨーロッパの大会に出たいな、とは思いますけど、こればっかりは自分の人生なんで、自分のやりたいように、自分の好きなチームに行ってサッカーを心底から楽しみたいな、というのが本音です。

高:どこ行くん?

松:分からんよ(笑)。ほんまに分からんよ。

まだ4年後のワールドカップのことは考えられないですか?

松:まあ、また4年後も出たいですけどね。そう思うようになりました。

高:チャンピオンズリーグ出てくれ!応援したいやん!!

松:頑張ります(笑)。

楽しみにしています。今日はお二人とも長い時間ありがとうございました。

ありがとうございました。