柴山雄一騎手に訊く 函館のツボ Part.1
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-:今回は夏競馬にあまり興味が向いていないファンのために、ポイントをわかりやすく伝えたいというテーマもあるので、調教の時計の目安を教えていただけますか?例えば、2歳馬だったらこれくらい出ていれば合格点なんて目安を。

柴:函館はほとんどウッドチップでやるので、チップで5ハロン70秒を切って68くらいだったら、ソコソコじゃないかと思いますね。函館だと2コーナーを回って、すぐ辺りが5Fのハロン棒なので、あんまり加速していけないんですよね。そこで抑えないとダメだし、コーナーもキツいから控えめに、という感じで、基本は70-40くらいを目安に、最後を伸ばすという調教が多いと思います。

-:基本、テンはゆっくり目ということですね。札幌と違ってウッドがあるということは効果が大きいですか?

柴:使い分けられるので、それは楽ですよ。馬も分散されるし、調教に関しては函館が良いですね。それに、2歳や新馬だったら本馬場に入れたりするからトレセンとは違う調教になるので、そこも大きいですね。こっちでは自分で乗って出来るから楽しい部分はありますよ。自分が競馬で乗る馬に調教でも乗るという感じで。

柴山雄一

▲ウッドコースでの調教風景

-:普段のトレセンでの調教よりも、ある程度手応えというか、そこは確かめられますか?

柴:分かりやすいんじゃないですか。トレセンでは追い切りの時に乗って、どうしても毎日その馬に乗るという感じではないからね。本当に正しいジャッジかどうか分からないですけどね。でも、時計だけで判断するのは難しいですね。なぜなら、厩舎の色もありますから。一杯にやっての68と馬なりでの68ではやっぱり全然走りが違うからね。だって生き物ですからね。その後にやり過ぎて状態が悪くなったこともある訳ですからね。その馬に合わせた時計というのがあるんじゃないかなと思います。

-:北海道の気候はやはり違いますか?

柴:いやあ、涼しくなるから元気ですよ。函館開幕当初なんて、朝の調教は長袖を着ないと肌寒い。夜も長袖でいますし、20℃は切りますよ。昼間でも曇っていたりしたら切りますし、そこまでジメジメしないのが良いですね。これは余談ですが、モヤがすごい時があって、時計が取れなかったりすることもありますね。

「洋芝の方が力がいるからね。そういう部分でパワーを必要とされる馬や時計が足りない馬で力を持っている馬、速い脚がなくて、という馬などは合いますよね」


-:輸送がないというのも大きいですか?

柴:輸送が合う、合わない馬は極端に出てきますよね。合う馬は本当に良いですから。

-:逆に北海道に持っていって、馬がボケてしまうということはないですか?

柴:気が入っていない馬で、絞れない馬はいますよね。どうやって調教すればいいのかな……と。長く乗っても脚元を痛めちゃうし、難しい馬は稀にいますね。ただ、馬がいる厩舎は基本そういう馬は連れてこないですけどね。小回りのコース形態的にも前に行ってナンボの舞台ですから。

-:洋芝の感触はどうですか?

柴:北海道の芝は最高ッ!本当にクッションも良いし、弾むような感じで乗っていて気持ちが良いです。関東だとちょっとでも馬場が硬くなったりしたら、直にその硬さが伝わってくるから。そういうのがなくて、乗っていて本当に気持ちが良いなという。また、年にそれだけしか使っていないからね。それに合わせて芝も完璧に整備されているから、余計にコンディションは最高ですよ。函館は毎年思うけど良いですよ。

柴山雄一

-:乗っていて、感触はそんなに違いますか?

柴:違います。特に新潟や福島は硬いから全然違いますよ。硬くしないと馬場が悪くなっちゃうからね。もちろん硬いからすべてが悪というわけではないでしょうが。僕は北海道が好きです。ただ、洋芝の方が力がいるからね。そういう部分でパワーを必要とされる馬や時計が足りない馬で力を持っている馬、速い脚がなくて、という馬などは合いますよね。逆に、本当に軽くて瞬発力の馬だと、それが殺されちゃって思ったより走らないこともあるかもしれません。

-:馬場の変化はどうでしょうか?古い頃は開催前半と後半で傾向もだいぶ変わっていましたが、最近はそうでもなくなってきましたよね。

柴:酷く雨が降っても、そんなに傷まないかと思います。1回、札幌の改修で函館(連続)開催があってから、本当に良くなりましたね。また、あの時が酷過ぎたからね。やっぱり直線が(距離が)ないから、それならコースロスなく乗っても全然大丈夫かなと。空けても本当に2~3頭分ですよね。それ以上に外々に行く必要もないかなという感じはしますよ。

柴山雄一騎手に訊く 函館のツボ Part.3
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